特集

カムチャツカ火山群I, II

火山が育む命のサイクルTHE世界遺産ディレクター取材記

―富士山のような山が密集しているというのは、すごい光景ですね。

火山が育む命のサイクルTHE世界遺産ディレクター取材記

小澤:火山地帯を空撮したのですが、上空から見ると火山がたくさんあるのがよく分かります。現地ガイドの方のはからいで、当初の予定にはなかった「ムトノフスキー山」の上を飛ぶことになったのですが、火口から白い煙がもうもうと立ち上り、隣には氷河が横たわっているのが見えました。初めて目にする、すごい光景でした。これは間近で撮影したいと思い、急遽「ムトノフスキー山」へ登ることになりました。

―登山では、上空からは分からなかった発見などありましたか?

小澤:「ムトノフスキー山」もやはり周りが全部火山灰に覆われています。そのため砂場を歩いているようで、足をとられてずるずると滑ってしまい大変でした。火口付近では地面に空いたいくつもの穴から蒸気が吹き出ており、硫黄の匂いが漂っています。穴には硫黄がこびり付き真っ黄色でした。反対側を見ると氷河があるのですが、間に5mくらいの川があるので渡れません。斜面にへばりついて先へ進んで行くと、遠くの大きなくぼみに、青く美しい湖が見えました。一瞬で霧に隠れてしまったのですが、なんとかカメラに収めることができました。川を挟み火山の熱と氷河が同居している不思議な光景です。

―熱と氷が同じ場所にあるというのは、珍しい光景ですね。ここまで「火山」について伺ってきましたが、2週目の「動物」では、どんな生き物が登場するのですか?

火山が育む命のサイクルTHE世界遺産ディレクター取材記

小澤:メインは「クマ」と「サケ」です。半島の南端に位置する「南カムチャツカ保護区」のなかに、「クリル湖」という大きな湖があります。毎年200万匹以上のベニザケが遡上してくる一大産卵地として有名です。ほかにもギンザケやカラフトマスなどが遡上し、合計すると600万匹ともいわれています。そしてこの魚たちを狙ってヒグマが現れます。クリル湖周辺には150〜200頭のヒグマがいるそうで、湖に出てきてずっとサケを食べているのですぐに見つかりました。私たちが近づいてもサケをとるのに夢中だったので、20mくらいまでぐっと接近して撮影することができました。