特集

辰年スペシャル 北京と瀋陽の故宮

石渡ディレクターインタビュー

―1万点以上とは、多すぎて想像つかないですね。なぜ故宮にはここまで龍があるのでしょうか?

辰年スペシャル 北京と瀋陽の故宮

石渡:龍の装飾をふんだんに使うことで、龍の化身である皇帝の権威を示していたと考えられます。例えば、先ほどの太和殿にある玉座の上には、龍の彫刻が鉄球をくわえる形で吊るされていて、皇帝以外のものが玉座に座ると、龍が口から鉄球を落として殺してしまうという伝承があるのです。この言い伝えからも皇帝と龍の深い関係をうかがうことができます。

―龍は力の象徴でもあるのですね。太和殿のほかではどんな龍を見ることはできるのですか?

辰年スペシャル 北京と瀋陽の故宮

石渡:太和殿だけでなく、故宮の中の至る所に存在します。実は、故宮は北京のものが有名なのですが、北京の北東に位置する都市、瀋陽にも故宮があり、北京のものと併せて世界遺産に登録されています。今回の番組では、瀋陽もしっかりと取材し、その映像でも龍が多数登場します。

―故宮が2つあるとは意外でした。瀋陽の故宮はどういったところなのでしょうか?

辰年スペシャル 北京と瀋陽の故宮

石渡:瀋陽の故宮は、清朝の初代、2代皇帝の宮廷です。北京の故宮と同じく、黄瑠璃瓦という光沢のある黄色い瓦で葺かれた屋根が見られます。この黄色は皇帝のシンボルとされる色なのですが、瀋陽の故宮が特徴的なのは一部に緑色の瑠璃瓦も使われていることです。これはかつて騎馬民族だった清の人々が、草原の緑を象徴した緑の瓦を重ねて使用したという話を聞きました。さらに、清が支配していた漢民族の文化を象徴する龍の装飾を取り入れることで、漢民族の反発を抑えたと考えられています。