2017年2月28日(火)〜5月28日[国立西洋美術館]

作品紹介

東方の光

アフリカから小アジアにかけての、いわゆる東方 (オリエント) の国々の人々や風物、風景は多くの芸術家たちを魅了し、旅へと誘いました。1846年にアルジェリア方面を旅したシャセリオーも旅先で数々のスケッチを手がけ、帰国後はこれらを着想源とした作品の数々を生み出します。異国的で勇壮な騎馬像やアラブ馬の一方で、洋の東西を問わぬ家族の日常的情景を好んで描いたシャセリオー独特の作品世界を、ドラクロワからルノワールまで19世紀のオリエンタリスム絵画の系譜のなかで見ていきます。

《コンスタンティーヌのユダヤ人街の情景》 油彩・カンヴァス 56.8×47cm 1851年 メトロポリタン美術館 天井から吊り下げられた揺り籠の赤ん坊をあやす2人のユダヤ女性。おそらく家族だろう3人の姿は、聖母子と聖アンナも思わせます。優しく親密な一体感を示す母子像は、主題を問わず、シャセリオー作品に繰り返し登場するモティーフでした。シャセリオーの東方主題の作品の魅力は、異質な他者に対する視線が作り出したエキゾチズムにではなく、画家独特の深い共感とある種のノスタルジーの表現にあることを教えてくれる一枚です。

《雌馬を見せるアラブの商人》 油彩・板 40.5×54.5cm 1853年 ルーヴル美術館(リール美術館に寄託) Photo©RMN-Grand Palais / Jacques Quecq d'Henripret / distributed by AMF 遠景に北アフリカ独特の白い街並みを望む青空の下、艶やかな黒毛のアラブ馬の取引をする商人たちが描かれています。多くのロマン主義の画家たちと同様、シャセリオーは生命力にあふれた馬に魅了され、多数描きました。男たちの交渉のかたわらでは、いつも通り、体を寄せ合う母子像が描きこまれています。

《コンスタンティーヌのユダヤの娘》 油彩・カンヴァス 52.5×40.3cm 1846-1856年 エティエンヌ・ブレトン・コレクション
Photo©Guillaume Benoit.Paris
アルジェリアへの旅の途上、あるいはその後の回想のなかで描かれたユダヤ人女性の胸像です。娘の強い視線が印象的であるとともに、柔らかな布を描き出すための素早く生き生きとした筆遣いが目を引きます。

《室内履きの6つの習作》 ペン、茶色のインク・紙 20×31cm ルーヴル美術館素描版画部門/1935年アルチュール・シャセリオー男爵より遺贈
Photo©RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Madeleine Coursaget / distributed by AMF

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