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BACK NUMBER #598 2017.12.9 O.A.

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高校スポーツ界最強 東福岡高校ラグビー部に密着
今、高校スポーツ界で最強とも呼ばれるチームがある。それは、福岡県、東福岡高校ラグビー部。全国大会で139-0という最多得点記録を打ち立てるなど、ここ10年で6度の全国制覇を成し遂げた。強さの秘密は、若き監督のユニークな指導法。あらゆる練習を時間で徹底管理し、短い時にはわずか1時間で練習は終わる。日本一連覇へ向け始まった福岡県予選。そこで見せた、高校ラグビー史に残るあるドラマとは?
ラグビーの試合前によく見られるこの光景。円陣を組み、大声を出し気持ちを高めてグランドに飛び出してゆく。しかしこの高校は、目を閉じ、集中力を高め、静かにキックオフの時間を待つ。そして、いざ試合になると美しいパスワークからの見事な攻撃。相手の攻撃をつぶす激しいタックル、これが、現在高校ラグビー界最強と呼ばれる福岡県・東福岡高校だ。そして、着実に点を重ね、相手にこの上ない敗北感を刻みつける。東福岡高校は、スポーツ強豪校としても有名。校内には、その栄誉の証がずらりと並べられ、20mにも及ぶ廊下は、通称ヴィクトリーロードと呼ばれている。この栄光の場所で最も多くスペースを占めているのがラグビー部だ。現在、部員数は高校ラグビー全国最多の124名。この最強チームを指導するのが藤田雄一郎監督(45)。どんな猛練習なのかと思いきや、我々は驚きの事実を目の当たりにする。あらゆるメニューをタイマーで管理し、決めた時間内で終わらせるのだ。練習中にミスが起きても、やり直しは絶対させず時間がくれば終わり。練習は藤田監督が決める綿密なスケジュールのもと行われ、スポーツ強豪校には珍しく、早い時には1時間で終わることも。このユニークな指導法に藤田監督が至ったのには、或る理由があった。
藤田監督も東福岡ラグビー部のOB。高校時代はチームの中心選手として活躍した。そして福岡大学に進学。保健体育の教員となり、19年前、母校のコーチに就任。当時、東福岡は谷崎監督という高校ラグビー界きっての名将の下、全国レベルの強豪に成長。2009年から全国大会3連覇という大偉業をなし遂げた。その谷崎監督に後継者として指名されたのが3連覇直後の5年前。そんなプレッシャーの中、監督となった藤田は、就任当時なかなか結果が出せなかった。3連覇の翌年、全国大会は準々決勝で敗退。春の選抜では予選リーグすら突破出来なかった。そして迎えた監督3年目、藤田はある事に気づいた。それまで、生徒に当たり前のように課していた猛練習は本当に効果があるのか?こうして始まったのがタイム管理。練習のための練習はしない。試合に勝つために練習するという意識改革だ。さらに、よりチーム力を高めるヒントを求め、様々なジャンルの本を読み漁った。特に読み込んだのは、組織を率いる様々なリーダー論が書かれたもの。中でも感銘を受けたのは、日産を経営危機から立ち直らせたカルロス・ゴーンの経営論。大胆なリストラ策など、一見、非情な合理主義の向こうにある組織を強くする信念に感銘を受けたという。こうして心に響いた言葉を本から抜粋し、自分なりの言葉にしてノートに書き溜めた。気づけばそんなノートが20冊以上にもなっていた。そして2014年、東福岡高校の快進撃が始まった。主要な全国大会、全てに優勝し3冠を達成。さらに前回の全国大会でも優勝。今年も花園での連覇を狙う。
2017年8月。長野県菅平での合宿。藤田監督はこの合宿でのテーマをディフェンス力の強化においていた。東福岡の強みは圧倒的な攻撃力。しかし藤田は、ディフェンス力の強化こそが連覇の鍵だと考えていた。いかに失点を少なくするか?その試金石となる練習試合を組んだ。相手は連覇を阻むライバルの1つと見られる大阪の強豪・常翔学園。この試合の目標は無失点でしのぐこと。しかし、ディフェンダーのタックルが決まらず、開始早々、次々とトライを決められてしまう。無失点どころか6つもトライを奪われ42-42の引き分けに終わった。この結果を受け、藤田流の指導。どうすればいいか、まず生徒自身に考えさせる。監督の顔色をうかがっていては、チームは絶対に強くならない。それが藤田の信念だ。その夜、東福岡の選手たちは、監督・コーチを交えず、映像を見ながら問題点と探っていた。導き出したのはタックルした後の動き。次への動きが遅く、相手にどんどん突破されていた。これを防ぐには次のポジションに素早く移らなければならない。福岡に戻り、見つけた課題を解消すべく、ディフェンスの徹底強化に取り組んだ。タックルしては素早く立ち上がり、次のポジションで再びタックル。これを繰り返し練習し、その感覚を体に覚えこませていった。
福岡県予選が始まった。東福岡は圧倒的な力で順当に勝ち進み、18年連続の花園出場へあと1勝に迫った。決勝戦前日。部員124名全員の前で決勝戦のベンチ入りメンバー25名を藤田が発表する。1人1人名前を呼び、ジャージを手渡す。それは監督にとって1年で最も辛い時間でもあるという。迎えた決勝戦。試合前、ロッカールームで監督が編集したビデオに見入る生徒たち。自分たちの1年間の努力を噛みしめる。そして、決勝の相手は小倉高校。東福岡は、いつもと同じ様に静かに目を閉じ決戦に挑む。すぐに東福岡の猛攻が始まった。力の差は明らか。次々に得点を重ねていく。しかし、藤田が課していたのは無失点で勝つこと。その最大のピンチが前半21分に訪れた。一矢報いたい、小倉高校が一丸となってトライまであと数mに迫る。しかしその時、奪ったボールをつなぎ、そのまま相手陣内へ。相手のボールを奪ったところから約100m、魂でボールをつなぎ高校ラグビー史に残るスーパートライを決めた。結果は94-0の圧勝。相手に得点を許さず、18年連続の花園出場を決めた。目指すは全国大会2連覇。たくましく成長した今年のチームに藤田監督は期待する。
名将の後を継ぐというプレッシャーを跳ね除け、自分ならではの指導法で、チームを作り上げた藤田監督。東福岡の黄金時代が再び始まるのか?正月の花園での戦いが楽しみだ。
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