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BACK NUMBER #597 2017.12.2 O.A.

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最年少幕内力士・阿武咲 新小結で挑む十一月場所に密着
今、相撲界は世代交代の大きなうねりが起きている。25歳の北勝富士、24歳の御嶽海、21歳の貴景勝などが、大関・横綱の地位を虎視眈々と狙う。そんな若手力士の中で、横綱・稀勢の里にも実力を認められているのが、21歳の若さで小結となった阿武咲。現役幕内最年少力士の阿武咲は、決して天才肌ではない。ではなぜ、これほどまでにスピード出世を果たしたのか?そこには驚きの事実があった。小結として初めて挑んだ本場所、十一月場所。次世代を担う阿武咲は、どんな思いで戦っていたのか?相撲に人生を捧げる21歳、阿武咲の熱き日々に密着した。
3か月前の九月場所・千秋楽で幕内最年少の力士が相撲界の歴史を変えた。新入幕を果たした五月場所から3場所連続2桁勝利。これは、大相撲が15日制になってから史上初の快挙。これで三役小結にスピード出世を果たした阿武咲。なぜ21歳の若さで、これほど強くなれたのか?その秘密を探るべく稽古場を訪ねた。阿武咲は、相撲の基礎、四股やテッポウを他の力士の倍近いおよそ2時間ひらすら行う。そして、続いて行う実戦形式の取り組みでも、本番さながらの気迫で、155kgの体をぶつける。猛烈にぶつかり合うこの稽古は、一瞬でも気を抜けばケガを招く。親方から厳しい声が。指導するのは、厳しい稽古で知られる元関脇・益荒雄の阿武松親方。この日、阿武咲が行った稽古は36番。なんと1時間ぶっ続けだった。「相撲界で最も稽古する男」そんなキャッチフレーズが付くのも頷ける姿だ。しかしこれで終わりではない。圧巻はその後。最後に行うぶつかり稽古。気力も体力も限界の状態で行われる厳しい特訓。通常5分でも長いと言われるこのぶつかり稽古を、阿武咲は倍以上行う。阿武咲は、こんな凄まじい稽古を1日も欠かさず続けているという。さらに研究も欠かさない。朝稽古の後、仮眠を取る力士が多い中、対戦力士の映像を見て立会いの動きを考える。身長176cm。小柄な阿武咲の武器は電光石火の立会い。低い姿勢から、相手の体を起こし、一気に押し切る。この押し相撲を極めるために、立会いの研究は欠かせないという。そして夜、研究成果を実践。部屋の稽古は朝だけだが、阿武咲は付け人相手に気づいた点を細かく確認する。例えば九月場所、横綱・日馬富士との取組では、自分と同じ小柄で、低い姿勢の立会いをしてくる相手に、阿武咲は右手で相手のスピードを抑えこむ。その結果、日馬富士の勢いを殺し勝利。この金星こそ、弛まぬ研究の成果だった。
相撲界で最も稽古する男の原点は故郷の道場にあった。阿武咲が生まれ育ったのは、青森県中泊町。江戸時代から相撲が盛んで、阿武咲は5歳で町の相撲道場に入門、中学を卒業するまで10年間、熱心に通い続けた。この道場を運営する小山内監督は、数多くの子どもたちを指導してきたが、阿武咲ほど練習熱心な子はいなかったという。小学校6年、さらに中学でも2度日本一になり、地元の強豪・三本木農業高校に進学すると、なんと1年生にして国体で全国優勝。そして、この優勝を期に高校を中退、角界入りを決断する。複数の部屋からスカウトされたが、当時から猛稽古で知られていた阿武松部屋を自らの意志で選んだ。16歳で初土俵を踏み、18歳の時、十両に昇進。そして5年目を迎えた2017年5月場所で新入幕を果たすと、そこから3場所連続で2桁勝利。一躍、若手のホープとして脚光を浴び、21歳の若さで小結に昇進した。
十一月場所を4日後に控えたこの日、初めて小結として本場所に挑む阿武咲に、願ってもない機会が訪れた。それは横綱・白鵬の出稽古。実は阿武咲と白鵬には、こんな因縁がある。14歳の時、阿武咲は白鵬が主催する小中学生の相撲大会「白鵬杯」に出場、見事優勝を飾っていた。阿武咲は、期待の力士の1人として、白鵬の脳裏にインプットされていた。そして、いよいよ横綱が土俵へ。本場所では、まだ一度も対戦はない。果たして、阿武咲はどんな相撲を見せるのか?最初の一番は、得意の立会いからの押し相撲で横綱を一気に押し切った。しかしその後は全く歯が立たない。それでも15番とった最後の取組では、阿武咲が意地を見せ横綱を押し切った。迎えた十一月場所。新小結・阿武咲にとっては、初日から横綱や大関ら格上との戦いが続く。しかも、負け越しが決まった瞬間、番付は前頭に陥落することが決まっている。初日の相手は横綱・日馬富士。どんな取り組みを見せるのか?九月場所同様、低い立ち合いでぶつかり、最後は引き落とし。新小結として最高のスタートを切ったかに見えたが、自分の相撲に納得出来なかった阿武咲。さらに2日目以降、上位相手になんと5連敗を喫してしまう。そんな状況で迎えた7日目。阿武咲の相手は白鵬。子どもの頃から憧れ、何としても乗り越えたいと目標にしてきた横綱との初対戦だ。立ち合いで右の張手をくらい、出鼻を挫かれての完敗。きつい洗礼を浴びる結果となった。その言葉通り、阿武咲は必死に踏ん張り、8日目以降、勝ち星を重ねた。迎えた14日目。ここまで6勝7敗。この日負ければ前頭に陥落する。相手は、優勝争いを演じていた前頭・北勝富士。立ち合いこそ、うまくいったが、その後は押し込まれる苦しい展開。それでも土俵際で粘りを見せ、これで星を5分に戻した。そして千秋楽。14日目同様、負ければ前頭へ陥落という厳しい状況の中、相手は同郷の先輩力士、前頭の宝富士。ここ一番でこれぞ阿武咲という電光石火の押し相撲で宝富士に何もさせず見事勝ち越し。
新小結で迎えた試練の十一月場所を不屈の精神で勝ち越した阿武咲(21)。相撲界新時代の主役の一人となるか?稽古は嘘をつかない。その言葉を胸に相撲道を歩んでほしい。
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