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BACK NUMBER #595 2017.11.18 O.A.

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代表選手として崖っぷち ロシアW杯へ…槙野智章の苦悩
2017年11月10日に行われたブラジル戦。世界ランク2位の強豪に日本がどう挑むのか?W杯を7か月後に控えた大事な一戦だった。そんな中、我々が注目していたのは、ある1人の選手。槙野智章。2017年の最終予選では、全試合控えに甘んじた男。所属する浦和レッズでは不動のレギュラーだが、日本代表では試合に出られない。本大会への切符をかけたあの激闘の中で、誰よりも悔しさを噛みしめていた。今年30歳。ロシア大会を逃せば、W杯に出ることは更に難しくなる。そんな男に訪れたチャンス。ブラジル戦の裏にあった壮絶な戦いとは?
我々が槙野の密着取材を始めたのは2017年1月のことだった。シーズンが始まる前の自主トレ。その1つ1つのメニューと真剣に向き合う。所属する浦和レッズの不動のセンターバックとして、2016年、チームを年間1位に導いた槙野。しかしそこに満足感はなかった。日本代表として試合に出られない。そんなもどかしさを代理人にぶつけることもあった。槙野はこれまで2度W杯直前に代表から落選している。1度目は2010年23歳の時。同年代の長友、岡崎、本田、内田が選ばれ、槙野は落選。2度目は2014年27歳の時。槙野より若い吉田、酒井が海外で活躍するなどディフェンダーの層が一気に厚くなり、槙野は弾き出された。決して忘れることの出来ない2度の屈辱。今度こそレギュラーとしてW杯に出場したい。そんな強い思いを胸に、槙野の2017年の戦いは始まった。Jリーグでは不動のレギュラーとしてチームを牽引。しかし、日本代表では控え選手という立場は変わらなかった。そして2017年8月、日本代表はロシアへの切符を掴んだ。この時、槙野を襲ったのは、このままではまた落選するかもしれないという不安と焦りだった。そんな槙野がW杯に向けての競争で、スタメン出場のチャンスを摑んだ。一体なぜ槙野が選ばれたのか。その舞台裏の一部始終をカメラは捉えていた。そこには2度の屈辱を味わった30歳の男の驚きの変化があった。
2017年8月、W杯出場を決めた日本代表。しかし、控え選手で試合に出られなかった槙野は素直に喜んでいられなかった。レギュラーを勝ち取るには、克服しなければならないことがある。槙野は、そのためのトレーニングを7月から始めていた。それは、トレーニングルームに秘密がある。そこは標高2800mと同じ環境に設定されており、高地トレーニングが出来る最新施設。凄まじい運動量が求められるディフェンダーの槙野は、無尽蔵のスタミナを手に入れるべく、この新しいトレーニングに積極的に取り組んでいた。ライバルは自分より若い選手ばかり。レギュラー争いに勝つために、体を土台から変えようとしていた。その成果を感じているのか、代理人と話す槙野の言葉は力強かった。しかし代表合宿の話になるとハリルホジッチ監督からの強烈なダメ出し。槙野は、それをノートにメモしていた。
「感情を出しすぎている。相手フォワードやレフリーに対して、もう少し落ちついてプレーすること。」
「無駄なファールや、カードはもらわない。」
槙野のプレースタイルはアグレッシブそのもの。幼い頃から目立つことを好んだその性格は、プレーにも現れ、相手フォワードを積極的に抑え込む。それが槙野の最大の特徴だ。しかしそれは諸刃の剣。エキサイトする余り、激し過ぎるプレーでイエローカードをもらうことも少なくない。そしてそれは、チームの敗戦につながる痛いファールになってしまう。長所は無くさず、常に冷静さを失わない。槙野はそう心掛け、Jリーグの試合に臨んだ。そんな槙野の意識が、はっきりと感じられる試合があった。それは2017年10月に行われたアジア・チャンピオンシリーズ準決勝。日本のクラブは2008年以来、決勝進出はなく、是が非でも勝ちたい試合。そんな大一番で槙野に託されたのは、相手チームのキーマン、フッキを抑えること。フッキはかつてJリーグでプレー、その後、ブラジル代表にも選ばれ、現在、年俸23億円とも言われる超大物選手。そのフッキを自分が抑えきると槙野は心に決めていた。そして、マッチアップする場面でも疲れが出始める試合終盤。ファールが命取りになる場面でも、槙野の冷静な対応が続いた。そして槙野は、最後までフッキに仕事をさせなかった。この試合を観戦していたハリルホジッチ監督は、槙野の変化を感じとっていた。その3週間後。ブラジル戦のスターティングメンバーに槙野の名前があがった。前半、日本代表は世界ランク2位のハイレベルな攻撃力に翻弄される。それでも諦めず積極的な守備を見せる槙野。劣勢でも決して下を向かず、懸命にプレーし続けた。そんな中、あのゴールが生まれた。ブラジル戦では、実に11年ぶりの日本のゴールを控えに甘んじてきた槙野が見事に決めた。更に2017年11月15日に行われたベルギー戦でも槙野は先発出場。槙野のW杯に向けた生き残りをかけた戦いは続く。
2度落選という屈辱を胸にW杯イヤーを31歳で迎える槙野智章。サッカー人生の全てをかけ、挑み続ける男の戦いをこれからも追いかける。
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