バックナンバー:バース・デイ

BACK NUMBER #583 2017.8.26 O.A.

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騎手・三浦皇成 落馬から1年…妻と歩んだ壮絶な日々
かつて、天才・武豊の記録を塗り替えた競馬騎手・三浦皇成(27)。2016年、大事故に見舞われた。命をも落としかねない大けがを負った三浦は絶望の淵に立たされていた。夫の姿に妻も…。選手生命の窮地に追い込まれた男が妻と歩んだ壮絶な日々を追った。
2008年、競馬界に彗星の如く現れた天才騎手・三浦皇成。19歳でデビューしたこの年、あの武豊が持つ新人記録を塗り替え一躍その名を日本中に轟かせた。そして21歳でタレント・ほしのあきさんと結婚。公私共に比類のない輝きを放っていた。しかしその後の競馬人生は、決して順風満帆なものではなかった。新人時代の年間勝ち星を越えられず、一流ジョッキーの証、G1にも勝っていない。そしてデビュー9年目を迎えた2016年8月。三浦は、札幌競馬場の第7レースに出場。待っていたのは予想だにしない悲劇だった。レース終盤のコーナーで仕掛け、一気にトップに立つ。誰もが勝利を確信したその時だった。乗っていた馬の足が突然骨折。一気にバランスを崩し、三浦は前に放り出された。すぐ後ろには、後続の馬が連なっていた。そして最悪の事態が。体重460kgの馬が三浦に激突。のしかかったのだ。あまりの衝撃に立ち上がることすら出来ない三浦。タンカーで運ばれ、そのまま病院へ緊急搬送された。診断結果は恐るべきものだった。上半身を守る肋骨が9本も折れ、そのうち3本が肺に刺さっていた。病院に駆けつけた妻・亜希さんは、変わりはてた夫の姿に言葉を失ったという。そしてこの時、騎手として致命的とも言える場所にも大怪我を負っていた。上半身を支え、下半身とつなぐ骨盤が真っ二つに折れていたのだ。交通事故や高所からの転落などで折れるケースはあるが、落馬事故での骨盤骨折は、極めて稀だと担当医師は言う。事故直後、下半身には力が伝わらず歩くことも出来なかった。15本ものボルトで骨盤を固定する大手術が3回も行われたが、3か月もの間、腰を曲げることが出来ず、絶対安静の日々が続いた。
2016年11月、札幌から自宅のある茨城の病院に転院。三浦はまだベッドでの生活を余儀なくされていた。事故の生々しさを語る証拠が体に残る。事故から3か月が過ぎても日常生活すらまともに送れない。再び馬に乗ることは出来るのか?心をよぎるのは不安ばかり。しかし三浦は、そんな絶望の淵にあっても復帰した自分の姿を必死に思い浮かべていた。このままでは終われない。復帰を誓った三浦に待っていたのは、想像を絶する過酷な戦いだった。
落馬から4か月が過ぎた2016年12月、ようやくリハビリが始まった。三浦は、下半身の神経が集中する骨盤を骨折したため、思うように足を動かせない恐れもあった。ベッドの上だけの生活が続いた結果、足はやせ細り、特に左足は筋肉がそげ落ちていた。4か月ぶりに足の裏に自分の体重を感じた。歩けたことで車椅子は卒業し、松葉杖で歩く力を取り戻すリハビリが1か月続いた。日常生活も少しずつ取り戻していった。そんな夫を側で支え続けた妻・亜希さんも努めて明るく振る舞っていた。騎手の宿命とも言える落馬事故。危険な仕事だと頭では分かっていたが、初めて直面する厳しい現実に、亜希さんも必死に向き合っていた。
落馬から9か月が過ぎた2017年5月。この日、骨盤を強化するボルトを組み直す手術が行われる。しかし実際にボルトが組み直せるかどうかは、回復度合いで決まり、医師からはメスを入れ、骨盤の状態を見てみないと分からないと告げられていた。2時間後、手術は予定通り終了。治療は一歩進んだ。骨盤にまだ負担はかけられないため、松葉杖生活が続いた。ようやく負荷をかけるトレーニングが始まったのは1か月後。松葉杖無しで歩けるようになり、腰を落とし、乗馬する時のポーズが痛みなく出来るようになっていた。そして落馬から11か月、三浦は茨城県にあるトレーニングセンターに向かった。落馬してから初めて馬に乗る。馬の温もりを感じながら走った。怖さなど微塵も感じなかった。そして最後の検診日。骨盤にまだボルトは入ったままだが、復帰に向け医師からゴーサインが出た。復帰戦は札幌競馬場。1年前、地獄を味わった場所だ。レース3日前から入り、いつもと変わりなくコースの状況を自分の目で確かめた。そしてついにその日がやってきた。1年ぶりの復帰レースに妻も駆け付けた。こみ上げる思いを胸に勝負に挑む。落馬した時と同じ距離のダート戦。三浦は積極的に前に出た。4番目をキープし、1年前落馬した最後の直線にかかる。そして懸命に追い込みをかける。三浦は5着で無事走りきった。そしてこの日、別のレースで復帰初勝利を挙げた。
競馬騎手として止まっていた時間を取り戻した三浦皇成。悪夢を乗り越えた27歳のがスタージョッキーとしてその名を轟かせる日が待ち遠しい。
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