バックナンバー:バース・デイ

BACK NUMBER #582 2017.8.19 O.A.

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女子ゴルフ・勝みなみ 親子二人三脚で歩んだ壮絶な戦い
2014年、日本ゴルフ界の歴史を変えた少女がいた。勝みなみ、当時15歳。鹿児島の高校1年生のアマチュアが、女子プロツアー史上最年少優勝という快挙を成し遂げた。しかしそれ以来、天才少女・勝みなみの名は、マスコミで大きく取り上げられることはなかった。いったい何があったのか?その3年間をカメラがとらえていた。彼女は悩み、苦しみ、もがいていた。その娘のかたわらには母がいた。親子二人三脚で歩んだ壮絶な戦いの日々。知られざる3年間を追った。
2014年、歴史的大偉業を果たした彼女と家族の人生は大きく変化していた。全国各地のプロツアーに招待されたため、アマチュア選手のまま鹿児島の高校に通いながら参加。移動は主に母が運転する車。あの優勝の後、宮里藍や石川遼のようにプロに転向することも出来たが、勝はその道を選ばなかった。そこには彼女のある思いがあった。これまでプロツアーを制したアマチュア選手は、勝以外で7人いるが、まだ2勝した者はいない。彼女は、その誰もなし遂げていないことに挑戦しようとしていた。プロでも難しいツアーでの2勝目を、環境が整わないアマチュアの高校生が狙うのは無謀な挑戦といえる。しかしそんな娘の決心を母はサポートし続ける覚悟を決めた。
両親は共に教師。父・秀樹さんは勝が高校に進学する際、離島の与論島に単身赴任していた。母・久美さんは、1人娘の高校とゴルフの両立をサポートするため、教師の仕事を辞めていた。しかしそれは、生半可なものではなかった。試合がない週は高校に通い、夕方からゴルフの練習に取り組む。一方試合がある週は、移動日の月曜から決勝ラウンドがある日曜日まで、隙間無くスケジュールが埋まる。それが4週続くことも珍しくなかった。さらに個人で活動する勝は、移動手段や宿泊の手配、遠征先での練習場の確保など、やらなければならない事が山のようにあったが、それをすべて母がやっていた。さらに大きくのしかかったのはお金の問題。アマチュアはプロゴルファーの主な収入源、賞金を受け取ることが出来ない。スポンサーもつかないため、クラブやウェア、ボールなど、その製品を使うことで得られる収入もない。もちろん遠征費は全て自己負担。キャディーのギャラ、交通費、レンタカー代、宿泊費など1試合にかかる費用は30万円を越える。そのやりくりを母が一手に担う。プロの道を蹴ってまで覚悟を決めて臨んだプロツアー。しかし優勝後、連勝が期待された大会では59位タイでまさかの予選落ち。その後も振るわず、プロの厳しさを思い知らされた。結局2014年、高校1年生の年は、本来の攻めのゴルフが全く出来ないままシーズンを終えた。この1年での出費は遠征費だけでおよそ500万円。このままでは試合に出ることすら難しくなる。そこで母はあることを決断した。本来であれば、娘には経験豊富なキャディーをつけたい。しかし、1試合5万円前後はかかる経費を節約するために、自らキャディーを務めることにした。しかし、全くの素人がすぐに出来るほど甘いものではなく、娘の足を引っ張ることも少なくなかった。迎えた2015年、高校2年生のシーズンは再び苦しい戦いを強いられた。短いパットで考えられないミスを連発。勝は自分のゴルフを完全に見失っていた。そんな娘を間近で見ていた母は、娘の苦しみを誰よりも感じていた。そして試合は4週続くことも珍しくなく、母の体も疲れ切っていた。遠征費はついに2年間で1000万円を突破。貯金は底をつき、母は自分の父にお金を借りざるを得なかった。家計は逼迫し、身も心も追い詰められた母は、思わず娘に本音をぶつけたこともあったという。長い期間これだけゴルフに悩み、苦しんだのは勝にとっても初めての経験だった。このまま自分のゴルフを見失い、沈んでしまうのか?取り戻すためには、ひたむきに練習するしかなかった。勝が理想とするのは、自らも楽しみ、見る人も楽しませるゴルフ。自分が楽しいと思えなければ不振から脱出できるはずもない。そう言い聞かせ、納得できるまでボールを打ち続けた。なんとしても高校生の間にアマチュア2勝目を勝ち取りたい。家族のためにもその日が来ると信じ戦っていた。そんな勝に願ってもないチャンスが訪れた。2016年のニチレイレディース。高校3年生のシーズン、10試合目のツアー。勝はこれまでの悔しさをぶつけるかの様に素晴らしいゴルフを見せた。2日目を終え、2位に1打差、トータル10アンダーで単独首位。迎えた最終日。出だしパー5の1番ホール3打目をピンの根元につけバーディ発進。4番ホール終了時点で2位に3打差。2勝目を手繰り寄せる成績。勝負は、この日3位スタートの2009年賞金女王、韓国のシン・ジエとの一騎討ちとなった。しかし、最後は貫祿を見せつけられ逆転を許し、惜しくも2位。元賞金女王に一歩も譲らない健闘だったが、その目には悔し涙がこみあげていた。
2017年3月、勝は高校を卒業。ゴルフ人生で大切な年を迎えた。18歳以上で受験可能になるプロテスト。アマチュア2勝目の達成は出来なかったが、テストに受かればプロゴルファーになれる。あの快挙から3年、苦しんだからこそ得たものもある。そしていよいよプロテストの日がやってきた。試合のあった茨城県からプロテストの会場のある富山県に車で移動。今年の受験者は338名。そのうちプロになれるのは、テストの上位20位までの狭き門。そんな中、安定したプレーを見せた勝は9位タイでフィニッシュ。見事合格し、プロゴルファー、勝みなみの誕生を親子で祝った。娘の口から溢れたのは母への感謝だった。そして2017年8月11日。プロゴルファー勝みなみがデビュー戦を迎えた。3日間を通し安定したプレーを見せ、結果は6アンダーで17位タイ。ゴルフで初めて手にした賞金は92万8000円だった。
15歳でブレークした才能をブレることなく支え続けた家族。プロゴルファーになった勝みなみがどんな未来を築くのか?見続けたい。
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