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BACK NUMBER #572 2017.5.27 O.A.

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日大三高 監督・小倉全由と選手たちの熱き戦い
2017年4月27日。神宮球場に2万人を超す観客が詰めかけた。プロ野球ではない。この日行われたのは高校野球、東京都春季大会の決勝戦。清宮擁する早稲田実業と、ここ3年間その早実に負け続けている日大三高が激突。共に西東京地区に属し、夏の甲子園の切符を争う最大のライバル。全国屈指の注目地区の前哨戦として、日本中の野球ファンがこの一戦に注目していた。試合は初回、日大三高自慢の強力打線が爆発。一挙4点を先制し、優位に立った。しかし早実もひるまない。逆転に次ぐ逆転の末、9回表に日大三高が大量7点を奪い、さすがに勝負あったかに見えた。だがここで清宮が立ちはだかる。なんと、清宮の2本目のホームランなどで早実が同点に追いつくと、日大三高は勝利を目前にしながらサヨナラ負け。これで清宮が早実に入った2015年から早実に3戦全敗となった。そう語るのは監督・小倉全由。夏の甲子園で日大三高を2度の全国制覇に導いた高校野球界の名将だ。その小倉率いる日大三高のチームカラーは圧倒的な打撃力。しかしそのお株を、今は早稲田実業に奪われている。清宮がまだ1年生だった夏の予選で敗れて以来、日大三高は早実に1度も勝っていない。4年ぶりの夏の甲子園出場を目指す日大三高の合言葉は「打倒・清宮」「打倒・早実」。そのためには早実を上回る打撃力を発揮しなければならない。バッティング練習でも、常に意識は打倒早実。ボール球に手を出す雑なバッティングが目につくと、小倉はすかさず選手を集める。日大三高のバッティングテーマでもある「好球必打」。これを徹底すべく、全国の強豪校の中でも5本の指に入ると言われるバッティングの練習量を、小倉は選手たちに課している。
打倒早実、そのためのキーマンだと監督が考える2人の選手がいる。1人はチームのエースでキャプテンも務める、櫻井周斗。消える魔球と呼ばれる必殺のスライダーで、2016年の秋、清宮から5つの三振を奪ったが、2017年の春季大会・早実戦では夏の対戦をにらみ温存した。もう1人は、不動の4番・金成麗生。アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、193cmの長身。清宮に負けないパワーを誇る。エースと4番。プロも注目するこの2人の活躍なしに打倒早実はない。Tシャツに刻まれた選手たちの思い。そこには日大三高野球部ならではの監督と選手の関わりがある。
社会科の教員でもある小倉は、還暦を迎えた。監督歴30年を超え甲子園出場は19回。そして通算勝利数は、東京では帝京・前田監督に次ぐ32勝。そんな名将が監督就任以来、全く変えていない指導法がある。それは選手と寝食を共にすること。野球部専用の寮で寝泊まりし、常に朝ご飯からコミュニケーションをはかる。選手たちから「監督さん」と呼ばれ、野球のことに限らず、なんでも気さくに話せる関係作りを心掛けているという。地味できつい基礎トレーニングでは、選手だけにさせず、なんと60歳の体に鞭を打ち、自ら参加することもある。喜怒哀楽を表に出し、涙もろいことでも有名だ。ハードな練習が終わると選手たちとお風呂を共にする。野球部は家族。それは監督に就任してから30年以上変わらぬ信念だという。
2016年12月、日大三高野球部伝統の地獄の冬合宿。冬休みの15日間、朝5時から厳しい寒さの中、ひたすら体力トレーニング。小倉考案の16種類のメニューを部員全員でこなす。この中で選手たちの体は、見違える程たくましくなるという。午後、ようやくボールを使った練習。ノックの嵐で守備力を鍛える。これが2時間以上続く。そして、いよいよバッティング練習。1日最低でも1人1000スイングさせるという。バッティング練習は夕食後も続き、深夜まで素振りを欠かさない。朝から晩まで野球漬けの日々を続けると、合宿終盤はご飯も喉を通らないほどの地獄になる。しかし、やりとげた選手たちは、体力だけでなく、心も一回り大きく成長するという。そのおかげもあり、春のセンバツは、ライバル早実と共に甲子園に出場した。しかし、夏は同じ西東京。切符は1枚だけ。甲子園に出るには早実を倒すしかない。ここ3年、煮え湯を飲まされてきた清宮をどう抑えるか?実は小倉、冬の段階からそのための或る秘策を練っていた。それはチームの4番・金成をピッチャーでも起用すること。ここまでバッティングに専念させてきたが、金成は中学時代、ピッチャーの経験もあり、秘密兵器として使えないか模索していたのだ。実際投げさせてみると、身長193cmから投げ下ろすストレートは迫力十分。エース・櫻井を助ける新たな戦力になると確信した。
2017年5月20日、全国レベルの強豪が集う関東大会が開幕。ライバル早実とは決勝戦まで当たらないが、日大三高は、横浜、浦和学院など強敵揃いのゾーンに入った。初戦の相手は、千葉県1位の専大松戸。2点をリードされたが、3回、日大三高打線が爆発する。3本のタイムリーヒットで、一挙8点を奪い逆転すると、8回にはエース・櫻井がバッティングでバックスクリーンに打ち込むホームラン。この乱打戦を制しベスト8へ。そして準々決勝では、小倉の秘策、金成をマウンドに上げた。すると、最速150キロのストレートで圧倒。3点を奪われたものの力投を見せる。4番バッターとしても先制のタイムリー2塁打など、3安打1打点と大活躍。投打に渡り金成がチームを引っ張り、準決勝進出を決めた。準決勝の相手は強敵・浦和学院。エース・櫻井が先発したが、相手打線につかまり、4回を投げ5失点。4番・金成もノーヒットに抑えられ、投打の柱が活躍出来ず、日大三高はベスト4で敗退した。ライバル早実は、準々決勝で敗れ対戦することは出来なかった。
日大三高と早稲田実業。宿命のライバルは夏の西東京予選では決勝まで当たらない。全国屈指の激戦区には、果してどんなドラマが待っているのか。目が離せない。
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