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BACK NUMBER #569 2017.5.6 O.A.

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元賞金女王・森田理香子 どん底からの挑戦
今から4年前の2013年。2010年代、日本人でただ1人、賞金女王に輝いた女子プロゴルファーがいる。森田理香子(23)。過去7年間で6人の韓国人選手が賞金女王を獲得している中、彼女はただ1人の日本人賞金女王。当時、4年ぶりの日本人女王として女子ゴルフ界の頂点に上り詰めた。女子ゴルフ界に久しぶりに誕生した日本人女王への大きな期待が寄せられた。しかし森田は、賞金女王からわずか3年で一気に突き落とされてしまった。2013年、賞金ランキング1位に輝きながら、2016年は69位にまで転落。シード権をたった3年で手放してしまったのだ。シード権を失った選手には過酷な現実が待っている。今までシード権を失った賞金女王が、再びシード権を取り戻した例はない。彼女はその前例なき戦いに挑もうとしていた。
京都市で生まれ育った森田にとって、ゴルフは幼い頃から身近な存在だった。自宅のすぐ側で、祖父がゴルフ場を経営し、8歳の頃からゴルフクラブを握るとすぐにのめり込んだ。学校が終われば、毎日のように練習場へ通い、腕を磨いてきた。高校進学後は、2歳年下の石川遼などと共に日本代表入り。世界ジュニア選手権を2位で終えるなど、当時から注目を集めていた。そして、高校卒業後の2008年、プロテストに見事合格。そんな森田が一躍脚光を浴びたのが、当時23歳で迎えたプロ6年目の2013年。開幕戦で優勝を決めると勢いに乗った。平均270ヤードと女子ゴルフ界でも群を抜く飛距離。豪快なスイングから絞り出すTショットは、ゴルフファンを魅了した。そして、森田最大の武器、アプローチ。どんな場所からでも見せる強気なショット。抜群の距離感で勝利を積み重ねた。この年、年間4勝。一気にトッププロの階段を駆け上がった。そして、獲得賞金1億2600万円で、見事賞金女王に輝いた。この時まだ23歳。久しぶりに登場した日本人賞金女王として、森田はゴルファンの大きな期待を背負うことになる。しかしこの後、賞金女王という肩書きが森田のゴルフを狂わしてしまう。2014年以降、得意としていたはずのアプローチに大きく苦しんでいた。寄せられるはずが寄せられない。それまで彼女を支えていたはずの武器が影を潜めていた。いったい何が彼女のゴルフを変えてしまったのか?きっかけは2013年、賞金女王を決めた直後のエキシビジョンマッチだった。それは、シーズンオフに開催される男子、女子、シニアから賞金上位の選手だけが出場できるエキシビジョンマッチの場。そこでトッププロの華麗なショットを見せていく。しかし、賞金女王の森田はミス。ギャラリーから笑い声が起こった。気にしていたつもりはなかった。しかしこの後も森田は信じられないプレーを続けてしまう。賞金女王として恥ずかしいプレーは出来ない。そんなプレッシャーが知らぬ間にのしかかっていたのか。しかしその不調は2014年のシーズンが始まっても続いていた。あの絶妙なアプローチが出来なくなった。賞金女王に相応しいプレーを見せようとするあまり、本来の自分を見失っていた。そして成績は急激に下がる一方になった。2016年は33試合中18度もの予選落ちを重ね、ついにシード権を喪失。森田がここまで落ちてしまった原因。それはアスリートにとって致命的とも言えるイップスだった。森田の場合、それが得意のアプローチに出てしまったのだ。最大の武器は最大の弱点に変わってしまった。その現実を受け入れることが出来ず、攻めのゴルフを果敢に続けた。しかし結果は常にミス。ただ恐怖心だけが膨らんでいく、最悪の負のスパイラルに陥っていた。それは紛れもなくイップスの症状だった。しかし賞金女王としてのプライドが心の奥の本当の思いを打ち明けることを邪魔し、誰にも相談できないまま、森田は1人戦い続けていたという。しかしまだ20代、諦めることなど出来なかった。復活するために何より大事なのがイップスを克服することだった。2017年2月、森田は宮崎県で合宿を行った。例年この時期は海外練習していたが、環境を変えようと、初めて国内で合宿生活をすることにした。2016年から新たなスタッフとも契約。プロ野球選手やJリーガーなどをフィジカルだけでなく、メンタル面からも支える宮崎裕樹トレーナーだ。宮崎が行った最初のケアは、森田にイップスであることを認めさせること。ギャラリーに笑われたプレーはミスではなく、それが今の自分の力なのだと認識させ、試合ごとの目標設定もむやみに高くしないようにした。そして1日最低でも3時間、話し合いを続けた。ありのままの自分を受け入れさせ、プレッシャーから解放する。技術面では基本を反復練習。頭で余計なことを考える余地がないほど、体に覚えこませる。恐怖心が完全に無くなったわけではない。それでも森田は前を向いていた。2017年3月、森田は今シーズン初戦を迎えた。シード権はないもののスポンサーの推薦で試合に出場。今シーズン出場できる8試合のうちの1試合だ。無駄にできるショットは1つもない。森田の前例のない戦いが始まる。2日目をイーブンパーで終え、24位タイで迎えた最終日。森田の回復を見る絶好のチャンスがやってきた。13番、少し距離のある第2打で、ピンそばまでピタリとつける全盛期を思わせるショット。そして迎えた最終18番パーパット。これをきっちり沈めて108人がしのぎを削った大会で、27位タイでフィニッシュした。今シーズンの初戦をまずまずの結果で締めくくった。その後2試合に出場し、彼女に残された試合はあと5試合。その中で賞金ランキング50位以上を勝ち取ればシード権復帰となる。茨の道をくぐり抜け彼女が再び輝く日を楽しみに待っている。
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