バックナンバー:バース・デイ

BACK NUMBER #565 2017.4.8 O.A.

バックナンバー
女子バレーボール界のエース・木村沙織 引退の真実
詰めかけた多くの報道陣の前で、女子バレー界のスーパースターが引退を報告した。木村沙織(30)。彼女は、実に13年に渡り、全日本の顔としてコートに立ち続けた。日本中が歓喜に沸いたロンドン五輪、28年ぶりのメダル。この快挙は、木村がいなければ成しえなかったと言っても過言ではない。現在30歳。質問は、バレーのことから去年発表した一般男性との結婚のことにも及んだ。そしてこの会見の終了直後、木村が現役最後の単独インタビューに応じてくれた。そして引退を決意した本当の理由を語った。木村沙織引退の真実。その涙のわけとは?
木村の全日本デビューは鮮烈だった。当時17歳、まだ高校生だった彼女は、史上初めて五輪最終予選に出場。まだあどけなさの残る木村のスーパープレーに、日本中が舌を巻いた。相手ブロックのわずかな隙を瞬時に見極めスパイクを打ち込む。更に物怖じすることなく、次々とスパイクを決める。まさにスーパー女子高生だった。10年に1人の天才。バレー界の誰もがそう認めた。しかし、ひとたびコートを離れると、笑顔が絶えないごく普通の女の子。類まれな才能と天真爛漫なキャラクター。そして何より明るい笑顔が日本中の心を掴んだ。木村が現れただけで歓声が上がる。創刊70年を越えるバレー専門誌は、なんと14か月連続で木村を表紙に起用。その人気は過去類を見ないものだった。木村が登場する前の日本女子バレー界は、2000年に史上初めての五輪出場を逃すなど、不遇の時代が続いていた。そんな重苦しい空気を一変させたのが木村だった。2010年の世界バレー、24歳の木村が怒濤の活躍を見せる。そして、世界バレーで32年振りのメダル獲得。当時の監督、眞鍋政義が、木村の知られざる一面を明かしてくれた。
「努力の人」
全体練習が終わっても、いつも決まって居残り練習を行う。見つけた課題がクリア出来るまで終わらない。しかしそれは、木村にとっては努力ではなく、当たり前のことだと言う。いつ辞めても悔いはない。木村はそんな思いでバレーと向き合ってきた。そんな彼女が、生涯忘れられない試合がある。それは2012年ロンドン五輪準々決勝、中国戦。この試合に全日本は、並々ならぬ決意で挑んでいた。なぜなら、中国とは五輪で過去5度対戦し、勝つどころかワンセットも奪えていなかったのだ。中国の高さに跳ね返され続けた屈辱の歴史を、誰もが記憶に刻んでいた。その悔しさをぶつけた対中国戦は、日本バレー屈指の激闘となった。第1セット、相手ブロックを巧みにかわし、スパイクを打ち込む木村。その後、両者一歩も譲らず、セットカウントは2-2。勝負は、最終第5セットにもつれ込んだ。しかし、先に中国がマッチポイント。この絶体絶命の危機を救ったのがエース木村だった。木村が渾身のスパイクを決め同点。これで全日本が勢いに乗り、初めて中国を下し、続く準決勝では韓国も撃破。28年ぶりの五輪メダルを掴み取った。歓喜のロンドンから1か月後、木村は世界最高峰のトルコリーグに移籍した。この時26歳。しかしこの移籍が初めて引退を意識するきっかけになってしまう。木村が挑戦したトルコリーグは、豊富な資金力を背景に、世界のスーパースターが名を連ねるバレーボールの最高峰。日本ではエースに君臨した木村が、スタメンはおろか試合に出場できないことも珍しくなかった。こんな経験は初めてだった。何のためにここに来たのか?働き場所を失った木村は、次第に引退を考えるようになっていた。全身全霊バレーに打ち込んできたのに自分は必要とされていない。そんな木村を奮い立たせたのが全日本監督の眞鍋だった。トルコに視察に訪れた眞鍋は、木村の胸の内を聞き、励まし続けた。眞鍋にとって木村は、次のリオ五輪を目指すのに必要不可欠の存在だった。「全日本のキャプテンになって欲しい」眞鍋は木村を説得し続けた。自分がチームリーダーになるなど思いもしなかった木村の心が動いた。次の五輪をバレー人生の集大成にする。キャプテンを引き受けた木村は、これまでと違う覚悟で挑んでいた。そして2016年5月のリオ五輪最終予選。そこには、見たことのない木村沙織がいた。これまで、常に笑顔でエースとして全日本を引っ張ってきた木村。しかしこの最終予選では笑顔は消え、鬼気迫る表情でチームを鼓舞し続けた。そして木村の覚悟が、分厚い壁を突き破った。キャプテンとして全日本をリオ五輪へ。そして迎えた集大成の五輪に木村は燃えていた。しかし、全日本は5位に終わった。そして木村は、仲間の一人一人に感謝の言葉をかけ続けていた。その2か月後、現役引退を決めた。
低迷していた日本の女子バレーを救い、改めてバレーというスポーツの素晴らしさを教えてくれた木村沙織。その弾ける笑顔を我々は永遠に忘れない。
[BACKNUMBER]
banner_AD
Loading…

SNS

TBSトップページサイトマップ Copyright© 1995-2017, Tokyo Broadcasting System Television, Inc. All Rights Reserved.