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BACK NUMBER #560 2017.3.4 O.A.

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WBC日本代表投手・菅野智之
2大会連続で世界を制した日本には、絶対的な先発投手がいた。第1回大会は松坂大輔、上原浩治、渡辺俊介。連覇した第2回大会は、松坂、岩隈久志、ダルビッシュ有。球数制限があるWBCでは、先発投手のピッチングこそ、勝敗を分ける大きなカギとなる。エースの1人、大谷翔平がケガで出場を辞退。そして今大会の先発投手陣の絶対的リーダーとして重責を一手に担うのが菅野智之(27)。世界一奪還へ。菅野は驚くべき秘策に挑んでいた。エースとして侍ジャパンの命運を握る男の戦いを追った。
菅野が初めて世界大会で投げたのは大学3年生だった。7年前の2010年、150キロを超すストレートで、大学野球日本代表に選ばれた時だ。当時、世界最強と呼ばれたキューバ戦に7回からリリーフ登板。しかし菅野は、この国際試合初登板で忘れられない屈辱を味わうこととなる。下位打線のバッターに2本のホームランを浴びた。この悔しさを胸に1年の浪人生活を経て、菅野は念願だった巨人にドラフト1位で入団。1年目から先発ローテーションの一角を担い13勝をあげた。そして2年目には開幕投手を任されるなど、順調に勝ち星を重ね、巨人のエースの座を掴んだ。最大の武器は力強いストレート。さらにキレの良い変化球。どちらも抜群のコントロールでバッターに付け入る隙を見せない。2016年は、セ・リーグ防御率2.01。奪三振王を獲得。しかし不思議なことになぜか国際試合になると菅野が普段見せる圧巻のピッチングが影を潜めてしまう。プロ入り後、菅野は日本代表として4試合に登板しているが、防御率は3点台。しかも4試合のうち2試合で手痛いホームランを浴びている。打たれたのは、いずれも自慢のストレート。いったいなぜなのか?第1回、第2回のWBC優勝メンバーの渡辺俊介の分析によると、海外のトップでプレーしているバッターは、下位打線であっても強いスイングをすることができる。そのため、たとえ9番バッターであっても、長打を警戒しなければならない。それは菅野自身も感じていることだった。そこで今回、WBCに向け菅野が対策として考えたのが、新しい球種をピッチングに取り入れることだった。チェンジアップ。それはストレートと同じ腕の振りで投げ、打者の手元で落ちる変化球。これまで菅野が使ってきた変化球は5つ。スライダー、シュート、カーブ、カットボール。そしてフォークもあるが、実戦ではほとんど使わない。そこに縦の変化球、チェンジアップを加えるという。WBCの公式球は滑りやすく、フォークは抜けやすい。そのためチェンジアップをピッチングのカギにしようと考えたのだ。
2017年1月、菅野はチェンジアップ習得を課題にハワイで自主トレを行っていた。まずは投げてみる。さらに映像でも軌道を確認。そして帰国後もブルペンでチェンジアップを含め変化球の精度をひたすら磨いていた。
WBC開幕を5日後に控え、菅野は台湾プロ選抜との試合で先発のマウンドに上がった。そんな菅野のピッチングを2006年の世界一メンバーの1人、渡辺俊介が見守った。注目すべきポイントは3つ。
①インサイドへの投球術
低めに丁寧にコントロールしていたのは、いつも通りだが、高めのボール気味の球も効果的に使っていた。
②苦しい場面での投球術
初回、菅野は先頭打者にヒットを打たれ、ノーアウト1塁となった場面。続くバッターにはファールで粘られ、3ボール、2ストライクと厳しい状況。しかし、空振り三振を勝ちとった。さらに4回、ランナーを1塁で迎えた4番バッターには、なかなかストライクが取れず、3ボール。その場面でも、着実にストライクを取り、続く5球目。スライダーを決め、3ボール・2ストライク。そして菅野が投げた6球目、見事4番バッターをセンターフライに打ち取った。
③多彩な変化球を使った投球術
この試合、菅野は1人の打者に対し、同じコースへと3球続けて変化球を投げたシーンがあった。初球はチェンジアップ、2球目はカーブ、3球目はシュート。そして決め球は渾身のストレート。この日菅野は、4種類の変化球を投げ分け、バッターが的を絞りにくい状況を作り出した。

この日菅野は4回無失点。球数58球と侍エースに相応しい安定感を見せ、見事チームに勝利をもたらした。
2017年3月7日、強敵キューバとの試合で、ついにWBCが開幕する。菅野の登板は翌日のオーストラリア戦が濃厚。日本のエースとして進化を遂げた男の活躍が楽しみでならない。
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