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BACK NUMBER #547 2016.11.19 O.A.

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聖地・花園へ 東海大付属仰星高校ラグビー部の戦い
2015年、高校ラグビー史上2校目の3冠を達成し、公式戦無敗という無敵の強さを誇った東海大仰星。全国大会の常連であり過去4度の日本一を誇る強豪校だ。無敵を誇る仰星ラグビーは、熱く激しい練習で出来上がる。みなぎる闘志。それは時に仲間内でも激しくぶつかり合う。そんな熾烈な練習で培った技は、美しいほど洗練されている。一糸乱れずトライまでパスをつなぐムービングラグビー。これは仰星の最大の持ち味だ。
2016年9月。冬の全国高校ラグビー大会で、2年連続の日本一を目指す東海大仰星の密着取材が始まった。新チームのキャプテンは、昨年、2年生ながらレギュラーメンバーとして3冠達成を経験した山田生真。ポジションは攻守の要となるフランカー。ラグビーの知識も豊富で、監督からも一目置かれている存在だ。愛媛県出身の山田は、小学生でラグビーを始め、中学校の頃から全国的に活躍。高校進学時には複数の強豪校からの誘いを受けたが、日本一に最も近いと自ら判断し、仰星を選んだ。寮生活を送りながら、朝から深夜までラグビーと向き合っている。しかし今年(2016年)、山田がキャプテンになってから、チームは大きな壁にぶつかっていた。4月の全国選抜大会で1年3か月続いていた公式戦連勝記録がストップ。その後主要な大会で優勝を逃し続けた。最大の目標、正月の花園での日本一連覇に暗雲が立ち込めていた。ここ3年で、仰星を2度、日本一に導いた湯浅監督は、ここまでの躓きの原因をチームの真骨頂である、全員ラグビーがまだできていないからだ、と分析していた。しかし、もう9月。時間に余裕はない。全員ラグビー。それこそ全国一の激戦区・大阪で東海大仰星を強豪校に押し上げたものだ。それは練習にも現れている。なんと、仰星ラグビー部は選手を1軍・2軍など、グレード分けせず、部員102人、全員で練習する。102人が1つ1つのプレーを練習すれば、当然、効率は悪くなり、また選手のレベルにも差があるため、指導時間は長くなる。だが湯浅監督は、この効率の悪さにこそ、大切なものがあると考えている。それは、レベルが違うからこそ互いを思いやる精神。部員全員が同じ時間をすごくことで、他では培えない強い一体感が生まれるという。今年のチームには、その一体感がまだ十分に生まれていなかった。
10月10日、仰星は強豪チームとの練習試合を迎えた。相手は全国2位の実績を持つ奈良県の御所実業。この日は練習試合のため、前後半分けず30分勝負。試合開始早々、仰星がピンチを招く。積極的に取りに行ったロングキックを落としてしまう。これを起点に御所実業に攻め込まれる。そしてあっけなく先制された。その後、ゴールも奪われ、7点のリードを許してしまう。キャプテン山田の支持のもと反撃に出る仰星。パスをつなぎ相手ゴールに迫る。しかし、ゴール前で手痛いミス。結局、試合は7-0のまま敗れた。チームが1つになりきれていない。キャプテン山田に、焦りが見え始めていた。
ある練習の日、キャプテン山田はチームをまとめようと事あるごとに声をかけ、部員たちも思いを1つにしようと懸命に練習に取り組んでいた。しかしOBであるコーチはそれでも足りないと指摘する。練習の合間、部室では疲れ果てて倒れ込んでしまう部員たち。新チームにとって試練の時が続いていた。練習が終わると、大阪地区予選に向けたミーティングが始まる。対戦相手の分析に始まり、様々な試合展開を予測したシミュレーション。3時間以上行うことも珍しくないという。体力だけでなく知力も振り絞り、高校生活の全てをラグビーにかける。
そして大阪地区予選が始まった。東海大仰星は、圧倒的な力で順当に勝ち上がり、全国大会出場まで、あと1勝と迫った。しかし、決勝の相手は今まで予選で戦ってきた相手とは別次元の強さ。全国制覇こそないものの、全国大会で多くの実績を挙げている大阪朝鮮高級学校。大阪朝鮮も、決勝までワンサイドゲームで勝ち上がってきている。どちらのチームも負ければ予選敗退という一発勝負。そして決勝当日。仰星のウォーミングアップが始まった。試合に出るレギュラーの相手をしているのは控え選手たち。日本一連覇という同じ目標に向かい、同じ時間を共に過ごした仲間。互いを思いやることで、信頼という大きな力を得た東海大仰星ラグビー部。登録を外れた部員、総勢77名の全ての思いが、試合に出るメンバーに託された。いざ戦いの舞台へ。試合序盤、そのプレッシャーが両チームを襲う。仰星はキャプテン山田が落ち着かせようとメンバーに声をかける。そして前半10分、仰星にチャンスが訪れたが、大阪朝鮮も必死の守りを見せ、得点を奪えない。その後も攻撃の手を緩めない仰星だったが、大阪朝鮮の厚い守りにことごとく防がれてしまう。すると、次第に流れは大阪朝鮮のペースに。前半終了間際、大阪朝鮮のチャンスから3点を奪われ、そのまま前半は終了した。続く後半戦、開始直後に再び大阪朝鮮に点を決められた仰星。10点をリードされた展開に、控え選手である仲間たちが必死に声援を送る。キャプテン山田も必死に指示を送る。そして後半残り15分。仰星にチャンスが訪れる。じわじわと攻め込み、相手の一瞬の隙を付きトライ。さらにゴールも決めて3点差。試合の流れは一気に仰星に傾く。そして後半18分。ついに仰星が逆転。しかし点差は2点。1トライで形成は逆転する。試合終盤、大阪朝鮮の怒涛の反撃が始まった。絶体絶命のピンチを執念で防ぐ仰星。東海大仰星が驚異の粘りを見せ、花園への切符、そして日本一連覇への挑戦権をその手にした。
東海大仰星ラグビー部。日本一連覇という野望に向けた今年1年の戦いがどんな結末を見せるのか?102人の思いが結実するその瞬間を期待したい。
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