バックナンバー:バース・デイ

BACK NUMBER #545 2016.11.5 O.A.

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名門復活へ…熱血女性監督・吉原知子の挑戦
今、日本の女子バレー界に大きなうねりが起きている。それは女性監督の活躍。現在、Vリーグで指揮をとる、女性監督は4人。その中で、今年注目を集めたのが、就任わずか1年で、驚くべき実績をあげたJTマーヴェラス監督・吉原知子(46)。かつて全日本のキャプテンとして、闘志を剥き出しに世界と渡り合い日本を2大会ぶりの五輪へと導いたあの闘将・吉原だ。その吉原がJTの監督に就任したのは、2015年6月。しかし就任当時のJTは、プレミアリーグより格下のチャレンジリーグに在籍。勝てない日々にもがき苦しんでいた。しかし、そんなチームを吉原が劇的に変えた。2年もの間、格下のリーグに甘んじていたJTをわずか1年で、格上のリーグに押し上げると、さらには国内のトップチームが集う最高峰の大会でも並み居る強豪を撃破し、なんと日本一に導いた。この目覚ましい実績は、協会関係者にも衝撃を与え、吉原はなんと中田監督とともに、全日本の監督有力候補に挙げられたほど。そんな監督・吉原知子はいかにしてチームを劇的に飛躍させたのか。その驚きの手腕に迫る。
10月8日、JTの監督になり2年目を迎えた吉原。毎朝、自宅から車で練習場へと向かう。東京から単身、練習場のある西宮にやってきて1年4か月。チームを強くするには、どうすればいいのか。その事ばかりを吉原は考え続けてきた。吉原が監督に就任する以前、JTは、竹下、大友などの全日本メンバーを擁し、数々のタイトルを獲得した女子バレー界屈指の強豪チームだった。しかし2012年以降、チームを支えて来た主力やベテラン選手などが相次いで引退。そして2014年、JTは入れ替え戦に敗れプレミアリーグより格下の、チャレンジリーグに降格。1年後の2015年3月、JTは再び入れ替え戦に挑んだが、ここでも勝つ事ができず、2年連続格下のリーグに甘んじる事となった。そんなチームの再建へ白羽の矢が立ったのが吉原だった。しかし、初めて監督になった吉原に与えられた期間は、次の入れ替え戦までの、わずか9か月。しかも若手が中心のJTには五輪代表メンバーなど1人もいない。そこで吉原は、まず若い彼女たちに戦いへ向かう姿勢を何度も説き続けた。
吉原が監督になる2か月前、当時のJTが一番の弱点を露呈した試合があった。この試合、JTはリードを奪われると相手に一気にペースを握られ、連続失点を喫する場面が何度も見受けられた。劣勢になると全員が弱気になり、悪い流れを断ち切る事ができない。この精神面の弱さこそ改善すべき一番の問題だった。絶対に強くなれる。吉原は毎日、前向きな言葉をかけ続けた。こうして言葉で選手を鼓舞し続ける一方、戦術面でも吉原は、新たなテーマを掲げた。それが全員バレー。JTには、木村沙織のような絶対的エースはいない。そんな中、連続失点という悪い流れを断ち切るには、アタッカー陣全員で常に一斉に攻撃を仕掛ける事が必要不可欠。そのため、吉原が選手に課したのが、ハードワークだった。ボールを拾ってから素早く攻撃へ移るため、俊敏さとスタミナをつけなければならない。吉原が課す練習に選手たちも必死に食らいついてきた。限界ギリギリまで追い込む過酷な練習。しかしその一方で吉原は、選手の体調面を人一倍気に掛けていた。毎朝、選手1人1人に直接、怪我の状態や体調を確認する。そして、その受け答えの仕方や、動きの違いにも鋭く目を光らせる。監督として、自分に出来る事や伝えられるもの、その全てを吉原は選手たちにぶつけ続けた。
監督就任から5か月、迎えたチャレンジリーグ開幕戦。選手達は吉原の掲げた全員バレーを見事に実践。相手に全く付け入る隙を与えない。その後も、怒涛の快進撃を続けたJTは、なんとチャレンジリーグ21戦全勝。圧倒的な強さで入れ替え戦に進んだ。そして3月、ついに迎えたプレミアリーグ昇格を懸けた入れ替え戦。相手は、全日本の荒木絵里香擁する上尾メディックス。第1セット、序盤から互いに譲らず11-10とJTが1点リード。そしてここからJTの全員バレーがついに牙をむく。的を絞らせない抜群のコンビネーションで相手を突き放し、第1セットは25-18でJTが奪う。しかし続く第2セット。相手のブロックとサービスエースなどで連続失点を喫し、15-18と3点のリードを許してしまう。だが選手たちに動揺の色は全く感じられない。すると、すぐに得点を奪い返し悪い流れを断ち切ると4連続ポイントを奪い逆転。結局このセットもJTが25-23で奪い2セットを連取。そして第3セット。ここで、ついに2年間、格下のリーグで悔しさを味わい続けたJTの思いが爆発した。強烈なスパイクを次々に相手コートに叩き込んでいく。そしてついにJTのマッチポイント。JTは見事、3シーズンぶりのV・プレミアリーグ昇格を決めた。そして真っ先に選手が向かったのは吉原のもとだった。
それから7か月後の10月30日、迎えたVプレミアリーグ開幕戦。JTは、昨シーズン5位のトヨタ車体相手に臆することなく攻め続け、見事3-0のストレート勝ち。開幕戦、白星スタートを切った。
闘将・吉原のもと、大舞台に復活したJTマーヴェラス。しかし、その真価が問われるのはここから。日本の女子バレー界の頂点を目指す彼女たちのもう1つのバース・デイを楽しみにしよう。
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