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BACK NUMBER #542 2016.10.15 O.A.

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アマチュア界No.1投手・田中正義 ドラフトまでの1年に密着
投げては2ケタ、打っては22HR。二刀流という規格外のスーパースターになった北海道日本ハム・大谷翔平は、4年前のドラフト会議の目玉選手として1位指名を受け、高校生からプロ野球選手になった。その大谷と同学年で4年前にはドラフトにかかりもしなかった男が今年、アマチュア界No.1ピッチャーとして注目を浴びている。創価大学4年・田中正義(22)。その実力を知らしめたのは2015年6月、プロ野球2軍選抜とユニバーシアードを控える大学日本代表の壮行試合。そのマウンドに立った田中は、全ての野球関係者をどよめかす凄まじいピッチングを見せつけた。プロのバッターから最初の三振を奪うと、続くバッターにはキレのある変化球で連続三振。そして2014年の巨人ドラフト1位、岡本に対しては全球ストレート勝負。力でねじ伏せた。最速156キロと言われる速球にプロのバットが空を切り続ける。その秘密は、スピードだけではない。空振りしたバットがボール下を振っているのは、ボールに伸びがある証拠。どんな速球でもバットに当てる技術に長けたプロのバッターから、なんと7連続奪三振。1人のランナーも許さず、4回を完璧に抑えた田中のピッチングにプロ野球関係者も驚きを隠せなかった。この衝撃をマスコミはプロ全12球団が今年のドラフトで1位指名をすると予想した。以来、田中が投げる試合は、練習試合であろうと、ネット裏に国内外のスカウトがずらりと顔を揃えるようになった。同学年の大谷に匹敵する逸材。しかし、当の田中にはそう呼ばれても気負う様子は全く感じられない。それどころか口にするのは、180度違う言葉だった。あの凄まじいピッチングを見せながら謙虚すぎる発言。そこには、ここに至るまでに田中が味わってきた、野球人生の苦境が大きく関わっていた。
小学1年生から野球を始めた田中は、6年生でチームのエースになった。中学生になると身長180センチに。ストレートは140キロ近くを計測。そして、甲子園出場8回を誇る強豪、創価高校に進み、1年生からエースナンバーを付け、大きな期待が寄せられた。しかしその冬のこと、田中を突然悪夢が襲った。右肩痛。それは筋肉も骨もまだ成長段階にあった16歳が、投げ続けたことで起きた痛みだと考えられた。しかし、投げる度に痛みの度合いが増し、治療のため、いくつもの病院を回ったが原因も対処法もわからないままだった。そのため田中は思うようなピッチングが出来なくなった。そして2年生になると、当時の監督から思わぬことを指示された。それは外野手への転向だった。しかしそれは、背番号1にこだわり続けた田中にとって、納得しきれないことだった。そして卒業するまで4番センターとして試合に出続け、ピッチャーとして投げることはほとんどなく、結局、甲子園出場も叶わなかった。それは、思い描いた高校野球生活とは、ほど遠いものだった。しかし、外野手を続けた2年間で肩の痛みは消えていた。高校では出来なかったピッチャーとしての活躍を大学で実現する。田中はそう心に誓った。そして、創価大学1年生となった田中に、チャンスがやってきた。秋の新人戦で公式戦初登板。そこで驚異のピッチングを見せる。1番バッターを三振で切ってとると2番、3番も最速147キロの速球で三振。7回を投げ、11奪三振。そして、エースとなり、プロ注目の選手にまで成長した。
田中はケガによる挫折を味わったことで、体のケアへのこだわりは凄まじい。寮の部屋には鉄分やビタミンなど10種類以上のサプリメントの数。冷蔵庫を開けると、体の疲労を回復するといわれる酸素水がいっぱい。その日の体調にあわせて何を摂取するか、自分で考え、決めているという。さらに本棚には、食品成分表や筋肉の構造に関する本が並ぶ。全てプロを意識した体つくりのため、自主的に勉強している。そんな田中の食事面を支えているのが、冷凍パックされた料理。母親に頼み、栄養バランスを考えた何種類ものおかずを定期的に大学の寮まで送ってもらっているのだ。朝と夜の寮での食事。母からのおかずは昼食で食べる。コンビニやレストランで昼食を済ませる選手が多い中、1日の栄養摂取量を考え食べている。徹底した食生活の管理。田中がジュースや菓子類を口にすることはほとんどない。
今年(2016年)、4月23日に行われた大学リーグ戦。先発のマウンドに立った田中。2回、2アウト、ランナー1塁の場面。この投球の後、突然、田中が険しい表情を見せた。そしてコントロールが乱れた。何とか、この回を抑えたもののベンチ裏に下がった田中は、僅か2イニングで降板。後日、検査した結果、右肩痛が判明。田中は無期限での調整を余儀なくされた。田中は肩の可動域が広く、投球の時に肩周辺のたくさんの筋肉を使うのだが、その筋力不足のため炎症を起こしているという。ドラフトを半年後に控え、周囲から不安視する声も上がる。田中は大学でのリハビリに加え、ヤンキースの田中将大やドジャースの前田健太を診察している、理学療法士のもとに週2回通い、右肩の筋力強化を開始した。ここで行っているのは、肩の周りの様々な筋肉に、いろいろな動きで負荷をかけながら肩全体を鍛えていくというもの。リハビリには3か月を費やした。そして7月6日。田中がピッチングを再開した。リハビリで肩の筋力を強化したことで痛みは無くなっていた。
9月から始まった秋の大学リーグ戦。田中はチームの開幕戦に先発として140日ぶりの公式戦のマウンドに復帰。プロのスカウトたちが目を光らせる中、力強い速球を投げ込んだ。この日、計測した最速は152キロ。8回を投げて、2安打、1失点に抑えた。9月29日。田中はプロ志望届けに自らの名前を記した。10月20日、田中は運命のドラフトの日を迎える。
高校時代の挫折、その悔しさを胸にアマチュアNo.1のピッチャーになった田中正義。同い年のライバルたちが待つプロの世界へ。果たして、どのユニフォームを着るのか楽しみでならない。
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