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BACK NUMBER #539 2016.9.24 O.A.

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広島東洋カープ25年ぶりの優勝を支えた3人の男たち
実に25年という長い月日が経った。12球団で最もリーグ優勝から遠ざかっていた広島東洋カープがセ・リーグを制覇。その歓喜の裏に3人の打撃コーチの功績があったことをご存じだろうか?去年リーグ5位だった広島打線を3人は、いかにリーグトップの打線に変えたのか?その知られざる真実に迫る。
広島東洋カープ優勝の瞬間、地元・広島での視聴率は驚異の71%(ビデオリサーチ調べ)。待ち続けた25年分の思いが一気に爆発した。何と言ってもその原動力は、打率、打点、ホームラン、その全てで12球団トップに君臨し、相手投手を震え上がらせた圧倒的な打撃力にある。特に、40試合以上もの逆転勝利を呼び込んだ粘り強い攻撃は、去年までと大きく違ったものだった。そんな強力打線をわずか1年で作り上げた3人の男たちがいる。石井琢朗、東出輝裕、迎祐一郎という3人の1軍打撃コーチだ。彼らは、一体何をどう変えたのか?優勝の翌日、都内で食事に出かけた3人に話を聞くことができた。3人の口から出たのは、以外な言葉の連続だった。2015年の広島は、わずか0.5ゲーム差でクライマックスシリーズ出場を逃した。その原因は、リーグ5位に甘んじたチーム打率。チャンスを逃し、勝負所で得点出来ないままゲームを落とすことが幾度となくあった。得点力アップが最大の急務。そこで白羽の矢がたったのは守備走塁コーチだった石井琢朗(46)。その石井のサポートとして2015年まで選手兼任で2軍野手コーチ補佐を務めていた東出輝裕が1軍の打撃コーチに昇格。さらに1軍打撃コーチ補佐だった迎祐一郎を留任させ、広島史上初、他球団でもあまり例のない打撃コーチ3人体制がスタートした。石井は練習メニューや育成方針を決めるリーダーとして、東出と迎は、その方針のもとに、より選手に密着し技術面での向上を任された。石井が就任早々行ったのは選手1人1人の意識改革だった。2015年の秋季キャンプから石井は選手とのミーティングを重ねた。1点をとる攻撃。そのために何をしなければならないのか。それはチーム全体で相手投手を崩すこと。昨シーズン、広島の得点圏打率はリーグワーストの2割3分5厘。チャンスでの三振、併殺打が目立った。点をとるのは必ずしもヒットを打つだけではない。それ以上に相手投手にどれだけプレッシャーを感じさせるか。そのために7割の打てない打席をどう積み上げるかが重要になる。こうしたミーティングを秋季キャンプ3週間、徹底した結果、選手の意識が変わった。打席で最も重要なのは、相手が嫌がることをすること。決め球をファールで逃れ、球数を投げさせ、その上でヒットが出れば相手投手のショックはより大きくなる。40試合以上もの逆転勝利は、凡打した打席の中で相手にダメージを与え続けたことが1つの要因なのだ。
石井は秋季キャンプで選手に2万スイングというノルマを課した。それは伝統的に猛練習で知られる広島の選手たちが、地獄と呼んだほど過酷なものだった。そこには、狙いがあった。2015年終盤、広島打線は失速。9月には3試合連続完封負けを含む4連敗。シーズンを勝ち抜く力強さに欠けていた。これでは、相手にプレッシャーをかけるどころではない。粘り強い攻撃のためには、バットをしっかり振り抜くことが必要不可欠。石井はそう考えた。この徹底したスイング練習は今年の春季キャンプ、さらには開幕後、遠征先の駐車場でも続けられた。その成果は如実に現れた。2016年の広島は6月に首位に立つと、1度も陥落することなく、それどころか2位との差を大きく広げ独走した。今年「神っている男」として大ブレイクしたプロ4年目22歳の鈴木誠也も、そして堅実な守備と勝負強いバッティングで1軍定着を果たした27歳の安倍友裕も、次々と若手選手の活躍が優勝に邁進する広島に勢いづけた。そんな彼らの才能を開花させたのが、石井のもとで指導する東出と迎。選手たちと年齢が近い2人はいわば兄貴的存在だ。彼らは、早出から試合後の居残り練習まで常に選手たちに寄り添う。選手たちも2人に絶大な信頼を寄せる。優勝を決めた東京ドームでの巨人戦でも2人が育てた若手が強烈な輝きを放った。この大事な一戦で鈴木誠也はなんと2打席連続ホームラン。その後も3人のコーチが育てた広島打線は打ちまくった。そして25年ぶりの優勝。その瞬間、46歳で打撃コーチという初の大役を果たした石井琢朗は込み上げる思いを抑えきれず涙と共に叫んでいた。
相手投手陣を震え上がらせた強力打線を作り上げた3人の男たちは、25年ぶりのリーグ制覇の向こうに日本一を見据えている。
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