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BACK NUMBER #534 2016.8.20 O.A.
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究極の肉体美を求めて…女性ボディビルダー
鍛え上げた肉体の美しさを競うボディビル。彫刻のごとく刻まれた筋肉はトレーニングの賜物だ。そんな過酷な競技でありながら、女子の平均年齢49歳。中には還暦を過ぎた現役最高齢の63歳の選手も。仕事や子育てが落ち着き、新たな人生の生きがいとしてボディビルを始める女性が増えているという。
<深作靖子>
埼玉県のスポーツジムで過酷なトレーニングに励む1人の女性。トレーナーに頭を押されながら重さ18kgのダンベルを片手で持ち上げる。昭和35年生まれの今年56歳。ボディビルを始めたのは8年前の48歳の時。平均年齢が高い女子ボディビルの世界でもかなり遅い。トレーニングを終え、帰宅するのは深夜12時を過ぎることも珍しくない。夫と2人の息子がいる主婦。すでに家族が寝ている中で家事をこなす。家族と顔を合わせるのは、朝の出勤前だけ。なぜごく普通の主婦が50歳を前に突然ボディビルに目覚め、のめり込んだのか?深作はテニス、バトントワリングなど、若い頃から体を動かすのが好きだったが、どれも趣味の範囲に留まっていた。そんな生活が一変したのは、息子たちが成人を過ぎた47歳の時。子育てを終え、若い頃のように体を動かそうとスポーツジムに入会。エアロビクスなどのレッスンに通った。すると、わずか半年で体脂肪率が18%から3%に激減。そんな彼女を見たインストラクターからボディビルをやってみないかと勧められたのだ。仕事も家事も子育ても全力で取り組んできた深作は、子育てを終え、その溢れるバイタリティをボディビルに注ぐと決めた。深作は、現在も仕事を続けている。不動産会社で朝9時から夕方6時まで週6日勤務。仕事の間もボディビルダーとして節制を怠らない。昼食は、自分で用意した鶏の胸肉70gと野菜のみ。練習は仕事を終えた夜8時から行う。筋肉は、強い負荷をかけ細胞を壊し、再生することで成長する。筋肉を破壊するまで追い込むトレーニングは過酷で、激しい痛みを伴う。その痛みに耐えながら、限界まで体をいじめ抜く。深作は、これまで東京都大会では実績をあげてきたが、全国の舞台ではまだ納得できる成績を残していない。ボディビルを初めて8年、56歳になって尚、更なる成長を目指している。
<久野礼子>
神奈川県藤沢市のトレーニングジムでは、ボディビルの大会で体を美しく見せるポージングのレッスンが行われていた。その中に唯一女性参加者がトレーナーから細かい指導を受けていた。久野礼子(49)。しかし、彼女のボディビルとの関わりは、他の選手とはかなり違っている。久野がボディビルを始めた12年前、娘はまだ小学生だった。しかも彼女はシングルマザー。女手一つで娘を育てながら、ボディビルの世界に飛び込んだ。26歳で結婚し、長女を出産。育児をしながらエアロビクスのインストラクターとして働き、充実した生活を送っていた。しかし33歳で夫と離婚。7歳だった娘は久野が引き取った。娘を守るためには、懸命に働くしかなかった。子育てと仕事。日増しにかかる重圧に体が悲鳴を上げ始めた。気がつけば体重は5kgも減り、極度の腰痛を患うようになった。そんな久野を救ったのが、腰痛改善のために始めた筋力トレーニングだった。取り組むうちに体重は9kg増え腰痛も回復。そしてそれは、体以上に追い詰められていた心まで回復させてくれた。そんな時、ジムの関係者からボディビルの大会を見に行こうと誘われた。それが運命の出会いだった。その時37歳。そしてこの12年の間に日本クラス別選手権で、3度準優勝に輝き、女子ボディビル界屈指の選手になった。娘は現在22歳。母がボディビルを始めた11歳の頃は、戸惑いを感じていたというが、今では頑張る母の最大の理解者として応援している。
8月7日、ボディビルの全国大会の1つ、ジャパンオープンにシングルマザー久野、そして56歳の主婦、深作も出場した。この大会は、過去の優勝経験者を除いて行われ、毎年新チャンピオンが誕生する、言わばボディビル界の登竜門とも言うべき大会だ。本番直前の選手たちは、パンプアップという筋肉に張りを持たせる準備運動に余念がない。参加者の最年少は27歳。現役最年長63歳の高松選手も参戦した。審査のポイントは、筋肉の厚み、溝の深さ、全体のバランス、そして女性らしい表現力。予選突破を目指す、56歳主婦の深作が持ち味のバランスのとれた筋肉をアピール。予選通過者の発表はステージを降りて行われる。ここで呼ばれなければ予選落ちだ。深作の番号は呼ばれなかった。一方、シングルマザーの久野は予選を通過。決勝ラウンドに勝負をかける。その雄姿を見届けようと娘が応援に駆け付けていた。まずは規定のポーズで自慢の背中、さらには二の腕の大きさをアピール。そして最大の見せ場、1人30秒のフリー演技。上半身を大きく使い、様々なポーズを織り交ぜる。全ての審査は終わった。久野は堂々の3位。優勝した中村静香選手は4つ上の53歳。久野はリベンジを誓う。
年齢を重ねても究極の肉体を追い求める女性ボディビルダーたち。過酷な鍛錬の末に得た肉体の進化は、これからも新たな人生の輝きを彼女たちにもたらすだろう。
<深作靖子>
埼玉県のスポーツジムで過酷なトレーニングに励む1人の女性。トレーナーに頭を押されながら重さ18kgのダンベルを片手で持ち上げる。昭和35年生まれの今年56歳。ボディビルを始めたのは8年前の48歳の時。平均年齢が高い女子ボディビルの世界でもかなり遅い。トレーニングを終え、帰宅するのは深夜12時を過ぎることも珍しくない。夫と2人の息子がいる主婦。すでに家族が寝ている中で家事をこなす。家族と顔を合わせるのは、朝の出勤前だけ。なぜごく普通の主婦が50歳を前に突然ボディビルに目覚め、のめり込んだのか?深作はテニス、バトントワリングなど、若い頃から体を動かすのが好きだったが、どれも趣味の範囲に留まっていた。そんな生活が一変したのは、息子たちが成人を過ぎた47歳の時。子育てを終え、若い頃のように体を動かそうとスポーツジムに入会。エアロビクスなどのレッスンに通った。すると、わずか半年で体脂肪率が18%から3%に激減。そんな彼女を見たインストラクターからボディビルをやってみないかと勧められたのだ。仕事も家事も子育ても全力で取り組んできた深作は、子育てを終え、その溢れるバイタリティをボディビルに注ぐと決めた。深作は、現在も仕事を続けている。不動産会社で朝9時から夕方6時まで週6日勤務。仕事の間もボディビルダーとして節制を怠らない。昼食は、自分で用意した鶏の胸肉70gと野菜のみ。練習は仕事を終えた夜8時から行う。筋肉は、強い負荷をかけ細胞を壊し、再生することで成長する。筋肉を破壊するまで追い込むトレーニングは過酷で、激しい痛みを伴う。その痛みに耐えながら、限界まで体をいじめ抜く。深作は、これまで東京都大会では実績をあげてきたが、全国の舞台ではまだ納得できる成績を残していない。ボディビルを初めて8年、56歳になって尚、更なる成長を目指している。
<久野礼子>
神奈川県藤沢市のトレーニングジムでは、ボディビルの大会で体を美しく見せるポージングのレッスンが行われていた。その中に唯一女性参加者がトレーナーから細かい指導を受けていた。久野礼子(49)。しかし、彼女のボディビルとの関わりは、他の選手とはかなり違っている。久野がボディビルを始めた12年前、娘はまだ小学生だった。しかも彼女はシングルマザー。女手一つで娘を育てながら、ボディビルの世界に飛び込んだ。26歳で結婚し、長女を出産。育児をしながらエアロビクスのインストラクターとして働き、充実した生活を送っていた。しかし33歳で夫と離婚。7歳だった娘は久野が引き取った。娘を守るためには、懸命に働くしかなかった。子育てと仕事。日増しにかかる重圧に体が悲鳴を上げ始めた。気がつけば体重は5kgも減り、極度の腰痛を患うようになった。そんな久野を救ったのが、腰痛改善のために始めた筋力トレーニングだった。取り組むうちに体重は9kg増え腰痛も回復。そしてそれは、体以上に追い詰められていた心まで回復させてくれた。そんな時、ジムの関係者からボディビルの大会を見に行こうと誘われた。それが運命の出会いだった。その時37歳。そしてこの12年の間に日本クラス別選手権で、3度準優勝に輝き、女子ボディビル界屈指の選手になった。娘は現在22歳。母がボディビルを始めた11歳の頃は、戸惑いを感じていたというが、今では頑張る母の最大の理解者として応援している。
8月7日、ボディビルの全国大会の1つ、ジャパンオープンにシングルマザー久野、そして56歳の主婦、深作も出場した。この大会は、過去の優勝経験者を除いて行われ、毎年新チャンピオンが誕生する、言わばボディビル界の登竜門とも言うべき大会だ。本番直前の選手たちは、パンプアップという筋肉に張りを持たせる準備運動に余念がない。参加者の最年少は27歳。現役最年長63歳の高松選手も参戦した。審査のポイントは、筋肉の厚み、溝の深さ、全体のバランス、そして女性らしい表現力。予選突破を目指す、56歳主婦の深作が持ち味のバランスのとれた筋肉をアピール。予選通過者の発表はステージを降りて行われる。ここで呼ばれなければ予選落ちだ。深作の番号は呼ばれなかった。一方、シングルマザーの久野は予選を通過。決勝ラウンドに勝負をかける。その雄姿を見届けようと娘が応援に駆け付けていた。まずは規定のポーズで自慢の背中、さらには二の腕の大きさをアピール。そして最大の見せ場、1人30秒のフリー演技。上半身を大きく使い、様々なポーズを織り交ぜる。全ての審査は終わった。久野は堂々の3位。優勝した中村静香選手は4つ上の53歳。久野はリベンジを誓う。
年齢を重ねても究極の肉体を追い求める女性ボディビルダーたち。過酷な鍛錬の末に得た肉体の進化は、これからも新たな人生の輝きを彼女たちにもたらすだろう。