バックナンバー:バース・デイ

BACK NUMBER #533 2016.8.13 O.A.

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戦力外から異例の挑戦 中後悠平 アメリカでの挑戦
2016年4月、1人の男が家族に見送られアメリカに渡ろうとしていた。中後悠平(26)。妻と生まれたばかりの長男を日本に残し、単身アメリカに渡る。長ければ半年以上、会うことはできない。出発の時、涙がこみ上げた。それは、プロ野球をクビになった男のまれにみる異例の挑戦だった。2015年、千葉ロッテマリーンズから戦力外通告を受けた中後は、現役続行を目指し、12球団合同トライアウトを受験。しかしアピールできず、プロ野球界復帰は叶わなかった。それでも野球を諦め切れず、年収150万円と言われる独立リーグに入団。プロ野球界復帰を目指し1年間頑張ると決めた。ところが、その矢先の2016年1月、思わぬ展開が訪れた。テレビ番組で中後が見せたブルペンでのキレの良いピッチングを日本在住のメジャーリーグ関係者が注目。すると、メジャーリーグの球団、ダイヤモンドバックスが中後に入団テストをしたいと連絡してきたのだ。そして、入団テストの末、合格した。それは思いもよらないビッグチャンスだった。メジャーリーガーになることが出来れば、最低年俸5200万円が保証される。突然、目の前に開いたアメリカンドリームに、中後は全てを懸けて挑もうと家族を日本に残し、単身アメリカに渡ることを決めた。
アメリカに到着すると、まずは球団の日本担当スカウトから施設の案内を受ける。しかし、そこで突き付けられたのは予想もしない現実だった。実は中後が所属するのは、いわば8軍のチーム。最低でも2Aからスタートできると思っていた中後にとって、最下層からのスタートは想像していないことだった。ルーキーリーグと呼ばれるそのチームにいるのは、20代前半の若い選手ばかり。その中で、26歳の日本人がチャンスを勝ち取らなければならい。それは、想像以上に過酷な競争社会だった。それでも、一歩ずつ上に上がろうとトレーニングを積んだ。しかし、中後の状況は一向に変わらず、すでにアメリカに来て2か月、その間ずっとルーキーリーグのキャンプで過ごしていた。それは、家族のいる中後にとって死活問題だった。実は、マイナーリーグはキャンプ中の給料が出ない。日当として1日約3000円が出るだけ。宿泊費は球団持ちだが、食事と生活費は、日当でまかなわなければならず、切り詰めた暮らしを強いられる。当然、日本で待つ家族に仕送りなど出来るはずもない。夢を追ってアメリカに来たことが家族を守るべき夫として、正しい選択だったのか?中後は心苦しい気持ちにさいなまれていた。家族との連絡では、妻に心配をかけないよう気丈に振る舞った。この一年、目まぐるしい程、環境が変わり家族も巻き込んでしまった。戦力外通告を受けた時、妻は妊娠8か月。そんな状況にもかかわらず、現役続行を後押しし、必死に支えてくれたのが妻だった。年収150万円と言われる、独立リーグに入団すると決めた時も、妻は迷いない言葉で自分の迷いを断ち切ってくれた。そして今も妻は日本で1人、子育てをしながら待っていてくれている。アメリカに来てから妻への感謝の思いが一層強くなっていた。
6月、ルーキーリーグのキャンプが終わり、試合が始まった。中後は気迫のピッチングを見せた。何としても這い上がってみせる。その一球に込めた思いが伝わった。そして6月23日、ようやく最下層を抜け出しローA、さらに7月1日にハイAに昇格。中後は、そこでリリーフとして2日に1度のペースで投げ、好投を続けた。中でも、首脳陣にアピールしたのは左バッターをほぼ完璧に封じ込めたこと。左バッターには、どんなピンチでも失点0で切り抜けた。そして、アメリカに来て4か月、事態が大きく動いた。なんと、3Aに昇格が決まった。そこは、メジャーのすぐ下のカテゴリー。日本でクビになり、最下層から挑戦してきた男が、ついにメジャーリーグが見える所まで這い上がった。翌朝、中後は急遽、滞在していたからカリフォルニア州から3Aのチームが試合をしているユタ州に向かった。合流したのは、ダイヤモンドバックス傘下のリノ・エーシーズというチーム。そのレベルは、これまでとは段違い。目の前で投げ込んでいたのは、この日、調整登板に来ていた、メジャー史上最高年俸35億円のグリンキーだ。投手陣は、中後を除いて14人で、そのうちの半分がメジャー経験者。この舞台で、アピールしなければメジャーはない。本当の戦いがここから始まる。そんな中、妻と息子が日本から応援に駆けつけた。顔をあわせるのは4か月ぶり。そして、妻と息子が見守る前で3A初登板。勝負のマウンドが始まった。中後は4回裏に中継ぎで登板。相手打線は4番から4人連続で左バッターが続く。左キラーとして期待されている中後の真価が問われる。最初のバッターには、うまく合わされ、ヒットを浴びてしまう。ここで崩れるわけにはいかない。次のバッターは、キレの良いスライダーで、見事、空振り三振。その後、中後のピッチングは冴え渡った。1回と1/3イニングを投げ、3三振を奪い、失点0。3A初登板で見事なピッチングを見せ、アピールした。現在、中後が昇格を目指すダイヤモンドバックスは、投手陣が崩壊し低迷。特に左のリリーフが手薄だ。チャンスは確実にある。中後は今3Aで4試合に登板。クローザーに抜擢されるなど、好投を続けている。
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