バックナンバー:バース・デイ

BACK NUMBER #526 2016.6.18 O.A.

バックナンバー
体操・日本代表 白井健三 強さの秘密に迫る
日本体育大学・体操部専用の体育館。現在2年生の白井健三が、練習前のウォーミングアップを行うのは、片隅に設置されたトランポリン。仲間と談笑しながら、とんでもなく複雑な動きをさらりとやってのける。一体どうすればこんな動きが出来るようになるのか?実はこのトランポリン練習には、白井の才能を開花させた秘密が隠されていた。
2013年白井は、世界に衝撃を走らせた。難度の高い技を決め世界選手権種目別の床で、堂々の金メダル。17歳での獲得は史上初の快挙だった。更に2015年、白井が大会で見せた技は、国際体操連盟から新しい技だと認定され、その技の名前に「シライ」の名が入った。白井の新技は、なんとH難度。世界の誰も真似できないひねり。そんな白井に日本のエース・内村航平も驚きを隠せない。ついた愛称は「ひねり王子」。しなやかで軽やかな回転を信じられないスピードで、いとも簡単にやってのける。いったいなぜ10代で、世界を驚愕させる演技が出来るのか?その秘密は、ウォーミングアップで行っていたトランポリン練習と、白井が体操を始めた幼少期に深い関わりがある。
横浜にある白井の実家。玄関からリビングへ向かうと、驚くべき光景が出迎える。なんと部屋の四方を埋めつくすメダル。白井は3人兄弟の末っ子。2人の兄もトップクラスの体操選手だ。3兄弟で獲得したメダルは、ゆうに500を越えるという。両親は共に体育教師で、体操部の顧問を務めていた。そのため学校の許可を得て、部活の指導時間に幼い息子たちを、体育館の片隅でよく遊ばせていたという。その頃3歳だった健三は、体育館にあったトランポリンで、毎日疲れ果てるまで夢中になって遊んでいた。3兄弟で健三だけがはまったトランポリン。これが両親も想像しない能力を健三に身につけさせていた。小学校低学年の体操の大会。白井家では3年生だった次男・晃次郎がエントリーしていた。そこに、まだ幼稚園生の5歳の健三が、「自分も出たい」と主張。特別に参加が許された。幼稚園生の健三にとって体操は遊びの延長。誰にも教わったことなどなく、ただ兄の見よう見まねで演技していたに過ぎなかった。しかし、あまりの見事さに会場がどよめいた。結果は、なんと兄・晃次郎を敗り、幼稚園生の健三が2位になった。意識しないまま、類まれな能力を身につけた健三はメキメキと成長。父は体育教師を辞め、体操クラブを設立した。そこに健三を入会させ、健三のためにある物を特注で作った。長さ18m、縦長のトランポリン。特注したのはこの長さだけではない。バネを通常の半分に短くした。こうすることで、通常のトランポリンより反動が小さくなり、跳ね返りの度合いを抑えることに成功。体操で使う床の感覚に近づけた。そして、健三には難しい技をまずこの特注のトランポリンで練習させ、からだに覚え込ませた。そんな育成方針で、健三を育てていった。これが世界で誰も真似できないと言われる白井の原点だ。
白井には、練習前に絶対に欠かさないルーティーンがある。独特の柔軟体操だ。驚異的なからだの軟らかさも、白井の強さを支えている。次にトランポリンでのウォーミングアップ。幼い頃から続けてきたこの練習を19歳になった今も、一日も欠かさず続けている。オリンピックイヤーを迎え、白井はある課題に取り組んでいた。それは、1つ1つの技の完成度を高めること。2年前の世界選手権で金メダルを逃したとき、技の難度を示す点は優勝した選手を上回っていた。しかしその一方で完成度は下回り、優勝を逃す原因となっていた。白井の技はどれも難度が高く、その分、着地の失敗などリスクも大きい。完成度という目線では評価を下げてしまう不安が拭えない。
「10代で五輪の金メダルを掴み取る…」
そのために、白井が乗り越えなければならない大きな課題。技の完成度を高めるために、1日4時間、休むことなく練習に取り組んだ。
2016年6月5日、リオデジャネイロ五輪の日本代表が決まる体操の日本選手権に、19歳の白井健三が挑んだ。得意の床に注目が集まる。難度の高い連続ジャンプに成功。完成度を、大きく左右する着地も完璧に決めた。そして続くG難度の大技も見事に決めた。白井ならではの演技、完成度も高い。その後も、落ちついて高難度の技を次々と決めていく。そして迎えたフィニッシュ。最後は、白井の代名詞とも言える4回ひねり。着地も綺麗に決めた。どこをとっても文句のつけようのない見事な演技。そのスコアに会場がどよめいた。トータルの高さに加え、課題の完成度で自己最高をマーク。白井はリオへの切符を勝ち取った。戦後4人目の10代の金メダルに期待が高まる。
体操一家の3男に芽生えた類まれな才能が、ブラジルでどんな花を咲かせるのか。白井健三(19)。彼が迎えるであろう、もう1つのバース・デイに心が高ぶる。
[BACKNUMBER]
banner_AD
Loading…

SNS

TBSトップページサイトマップ Copyright© 1995-2024, Tokyo Broadcasting System Television, Inc. All Rights Reserved.