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BACK NUMBER #516 2016.4.2 O.A.

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巨人三軍 生き残りを懸けた壮絶な戦い
競争に敗れた男たちに突きつけられる戦力外通告。そんな厳しい現実と常に向き合い、戦っている男たちがいる。巨人三軍の選手たち。戦力外を受けトライアウトで拾われた選手。そして、育成の最低年俸240万円の選手など、ここにいる三軍全員がプロ野球選手としての生き残りを懸けた戦いを強いられている。12球団で一番競争が激しいと言われる巨人が、今年新たに新設した三軍。そこには一体どんな狙いが隠されているのか?シーズンの開幕前から熾烈なサバイバルに挑む、知られざる若者たちに密着した。
神奈川県・川崎市にあるジャイアンツ球場。練習を行っているのは、巨人の二軍選手たち。かつてゴールデングラブ賞を獲得した松本哲也や2011年の盗塁王・藤村大介など、錚々たる顔ぶれが揃っている。しかし、この時点でここにいる37人は、開幕一軍を勝ち取ることが出来なかった男たち。選手層の厚い巨人において、一軍に名を連ねることが如何に難しいかがわかる。しかし、今年の巨人は、もう1つの過酷な戦いが繰り広げられている。それが、今年から新設された三軍。そこには24人が在籍し、全員が背番号3ケタの育成選手。彼らには一軍の試合に出場する資格はなく、平均年俸300万円前後の若者たちだ。野球エリートとは違う道を歩んで来た選手達が多い。
三軍には専用施設などがなく、グラウンドは二軍が練習を終えるまで使えない。空いているスペースを探し、基礎トレーニングをする。さらに試合は主にアマチュアチームと対戦、着替えは仮設テントで行う。競争社会の厳しさを否応なく感じる。そんな彼らを指導するのは、昨年(2015年)まで一軍のヘッドコーチを務めていた川相昌弘(51)。かつて二軍監督を務めていた事もあり、若手の育成には定評のある人物だ。
2月の春季キャンプ。三軍選手たちの過酷な戦いはここから始まっていた。宿舎は、一軍、二軍とは全く別。部屋の清掃も自分たちで行い、4人部屋というケースもあった。食堂には「野望」というスローガンが掲げられている。彼らが、まず目指すべき場所は二軍に上がること。朝6時過ぎ。選手は宿舎から球場までバスを使わず3キロの距離を歩いて向かう。そして7時には練習を開始。8時になると、一軍や二軍の早出練習組が球場を使用するため、それまでに撤収しなければならないからだ。無駄にできる時間など1秒もない。監督、コーチからの指導を吸収しながら、時間いっぱいまで、出来ることに熱心に取り組む。そして8時直前、急いで撤収。その後三軍選手は、一、二軍が使用していない場所を探し、基本練習を何度も繰り返す。練習時間は1日12時間以上。「野望」というスローガンのもと、まず二軍へ這い上がらなければ、その先の道は見えて来ない。三軍選手の中で、その思いを強く抱いていたのが投手・長谷川潤(24)。ハングリー精神が人一倍強く、毎日持ち歩いているというノートにもこんな事を書き込んでいる。
「目標は一軍。二軍の選手を追い抜く!!」
長谷川は、高校・大学と全くの無名選手。卒業後は独立リーグに入団し、2年間投球技術を磨いた。すると、ようやくプロのスカウトの目にとまり、2015年のドラフトで116人中116番目の指名を受け、執念のプロ入りを果たした。
2月。そんな長谷川に、首脳陣へアピールする絶好の舞台が用意された。キャンプ中盤に行われた三軍vs二軍の直接対決。二軍のメンバーには、藤村大介や寺内崇幸、堂上剛裕など、一軍での実績豊富な選手が名を連ねている。長谷川がマウンドに上がったのは、1-0と二軍にリードされた3回。中継ぎとしての登板だった。3番寺内、4番堂上を共に打ち取り、二軍のクリーンナップを2者連続で抑えた。5番・北篤に対しては、甘いスライダーをスタンドへ運ばれてしまったものの、その後は落ち着いたピッチングでしっかりと抑え、2イニングを投げ切った。長谷川の投球内容を三軍のピッチングコーチ阿波野秀幸は高く評価。長谷川に対し、更にフォームが固まるよう、個別でシャドーピッチングをするよう指示を与えた。そしてキャンプも終盤に差し掛かったある日、長谷川は三軍選手ながら二軍選手に混ざって試合することが許された。この日はソフトバンク二軍とのオープン戦。1-0とリードを許している4回裏、長谷川に登板の機会がやってきた。しかし、最初の対戦相手は2015年トリプルスリーを達成した柳田悠岐。故障明けで調整中とはいえ、あまりに厄介なバッターだ。それでも、長谷川は全く怯むことなく柳田をサードフライに打ち取った。結局、このイニングを打者3人で完璧に抑え、二軍の首脳陣に猛烈にアピールすることができた。その夜、長谷川は二軍昇格が決定。その後も二軍戦で結果を残し続けた長谷川は、3月28日に一軍への試合にも出場出来る支配下登録を勝ち取った。背番号は2ケタの96。年俸も240万から420万円に上がった。
巨人三軍。そこは、いつ戦力外通告を突きつけられるかわからない舞台で、懸命に前を向く若者たちの戦いの場所。ここから新たなスターが誕生することを期待する。
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