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BACK NUMBER #510 2016.2.20 O.A.

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大学絶対王者 帝京大学ラグビー部
この強さは、いったいどこまで続くのか?今年(2016年)1月に行なわれた大学選手権、史上初の7連覇を達成した帝京大学ラグビー部。伝統校の壁に跳ね返され続けたこのチームを最強王者に導いたのは、監督・岩出雅之(57)。今や彼は日本一の指導者として大きな注目を浴びている。しかし、この栄光の裏にあった大きな挫折。勝つために行なったのは、常識破りの3つの改革。それは、学生スポーツの当たり前を180度覆す、あまりに意外なものだった。
一瞬で相手を置き去りにするスピード。相手フォワードを一瞬で仕留めるタックル。そして自在なパスワーク。「紅い旋風」と称され、大学ラグビー界の王者に君臨し続ける彼ら。卒業生には、2015年のW杯で全試合に出場、日本の大躍進を支えた堀江翔太を始め、なんと145名ものOBが社会人チームに所属。日本ラグビー界の屋台骨になっているのだ。驚くことにその強さは、高校ラグビーのスター選手ばかりを集めるスカウティングによるものではない。初めて大学日本一を勝ち取ったとき、部員の多くが、高校時代に花園にも出場していない選手だった。そんな無名の選手たちを最強軍団へと育てた岩出の指導力だ。
1試合平均78.1得点。他チームの倍以上もの得点力を誇る帝京大学。その源と言えるのが、華麗なパスワーク。見事なまでにパスを繋ぎ、得点を奪う。それが帝京の強さ。一体どんな練習をしているのか?グラウンドを訪ねた。まず驚かされたのは部員数。総勢142名。スタッフ、コーチを合わせ200人近い大所帯が心を1つに練習する。しかし、全体練習の時間は、1日2時間程度。この短さこそ、監督・岩出の改革の1つだった。
<岩出の改革①>
20年前、38歳で監督に就任した岩出は、強豪校の牙城を破るべく、長時間のハードワークを選手たちに行なわせていた。平日は4時間以上。朝練はもちろん、土日は1日フルで練習を続けた。しかし、監督就任から10年間、どれだけ厳しい長時間練習を重ねても、伝統校に勝つことは出来なかった。その要因の1つがハードワークだった。厳しい練習に選手たちは疲弊し、試合の肝心なところで手痛いミス。また、疲労によるケガで試合に出場できない選手がいた。そこで岩出は決断。4時間以上行なっていた平日の練習を2時間にし、土日の練習も大幅に減らした。さらにこれまで、1日に多くの内容を詰め込んでいたものを、日によってテーマを絞り、パスやサインプレーの反復練習に時間を割いた。そして、練習の合間に必ず話し合いの時間を持たせ、意識確認を徹底。こうした1つ1つのプレーをしっかりと理解した上で次の練習に進むと、技術の習得が格段に上がった。さらに疲労によるケガ人も大幅に減少。最強軍団へと生まれ変わる大きな一歩になった。
<岩出の改革②>
帝京大学ラグビー部は、142人全員が寮生活を送っている。ラグビーはフィジカルが勝負。食事は岩出が自ら招いた栄養士によって、徹底管理され、1食3000kcal以上。一般男性に必要な量の1.5倍だが、栄養バランスは考え抜かれている。こうして得た栄養でトレーニングに臨み、体作りを行なう。そして、毎月1度の採血検査。科学的な根拠を持たせるため、帝京大学医学部の全面サポートで行なわれ、たんぱく質の摂取状態、脂肪の代謝や疲労度合いまで34項目に渡りチェックされる。さらに、医療現場でも使われる機器で、身長・体重・体脂肪率、筋肉量・水分量など体内のあらゆる成分を詳細にチェック。疲労度もわかるため、練習量の調整に大きく役立っている。また、このデータを基に1人1人に合ったトレーニングメニューが詳細に作られ、選手は合理的に効率良くトレーニングに励むことが出来る。岩出が導入した科学の力は、選手たちの意識を確実に変えた。
<岩出の改革③>
練習直後の何気ない光景。荷物を運んでいるのはなんと4年生。一方その頃、下級生は食事を摂っていた。上下関係が厳しいと言われる大学の体育会でなぜこんなことが?それは、岩出が取り入れた3つ目の改革、上下関係の撤廃だった。寮生活や大学生活で心に余裕のない下級生。そんな彼らの心理的負担を上級生が減らすことで、チーム力の底上げに繋がると考えた。互いに尊重し、学年に関係なく助け合うこの空気が、若い才能を萎縮させることなく引き出し、チーム力、アップに大きく繋がった。そしてチーム改革から3年後の2010年、大学選手権でついに悲願の日本一に輝き、前人未到の7連覇の歴史が始まった。
大学ラグビーに革命を起こした帝京大学。そこには、当たり前をそのままにせず、自らの頭で問い直す1人の革命的な男がいる。その快進撃から目が離せない。
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