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BACK NUMBER #509 2016.2.13 O.A.

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戦力外通告を受けた男たちの第2の人生
<元千葉ロッテマリーンズ・矢地健人(28)>
愛知県東海市。この町で、2016年1月から第2の人生をスタートさせた1人の元プロ野球選手。プロ野球に別れを告げ、歩み出した矢地。6年間のプロ野球人生は、過酷な戦いの連続だった。
2009年、大学を卒業し、育成選手として中日に入団。その後、支配下選手に昇格したものの、5年間ほとんど2軍暮らしが続き、2014年戦力外通告。それでも矢地は野球にこだわり、トライアウトでロッテに拾われ、2015年5月、1軍のマウンドに中継ぎとして上がった。ソフトバンクの強力クリーンナップを見事三者凡退におさえ、翌日にはプロ初ホールドも記録した。しかしその後は、思うような結果を残せず、2015年10月、2年連続となる戦力外通告で再び職を失った。それは、矢地とその家族にとってあまりにも過酷なタイミングだった。3つ年上の妻と生後11か月の長男、3人で暮らしていた矢地。このとき夫婦は、まだ結婚式を挙げておらず、シーズン終了後、12月に挙式を予定していた。披露宴会場に飾る、ウエルカムボードも作っていた。家族のユニフォームを特注でオーダー、親戚や友人たちに、プロ野球の世界での更なる活躍を約束するつもりだった。現役を続けたい。諦めるわけにはいかない。矢地は2度目の12球団合同トライアウトを受験。その戦いを家族もスタンドで見守っていた。親子3人で臨んだ運命のマウンド。しかし、思いは届かなかった。プロ野球からのオファーはなく、矢地は6年間のプロ野球人生を終えた。年が明け(2016年)、矢地は第2の人生を歩き始めていた。彼は今、ある企業で働いている。実はプロからの声がかからなかったものの、社会人野球チーム、東海REXからオファーがあり、入団テストに合格。その後、念願の結婚式を挙げた。矢地が就職したのは、その東海REXの母体である新日鐵住金。鉄鋼業界、世界第2位のこの会社に、矢地は正社員として採用され、現在は品質管理の部署で働いている。28歳で初めて体験するサラリーマン生活。聞きなれない専門用語を、1日でも早く覚えようと必死だ。勤務を終えると、社会人チームでの練習。新たな道を開いてくれたチームのために夏の都市対抗野球出場を目指している。
<元千葉ロッテマリーンズ・中後悠平(26)>
埼玉県の公園で1人、黙々と走り込みを続ける男。2015年10月、4年間在籍したロッテから戦力外通告を受けた。それでも野球を諦められず、独立リーグからプロ野球を目指すと決めた。ところが、独立リーグ入団からわずか1か月後の2016年1月、予想だにしないビッグオファーが飛び込んだ。日本のプロ野球をクビになった男に何が起きたのか?
大学時代、将来を嘱望された逸材だった中後。独特の変則フォームを武器に、数々のタイトルを獲得。3年生のときには、大学日本代表にも選出された。そして2011年、ドラフト2位でロッテに入団。ルーキーイヤーから一軍で活躍。中継ぎとして、勝利の方程式を担った。しかし、その輝きは長くは続かなかった。肩を故障して以降、思うようなピッチングが出来なくなり、プロ4年目の2015年、球団から戦力外通告を受けた。それは中後にとって、あまりにも受け入れ難い悲劇的なタイミングだった。中後は半年前に結婚したばかり。しかも妻は1か月後に出産を控えていた。自分はもっとやれる。そう信じて12球団合同トライアウトに挑んだ。しかし、アピールすることが全く出来ず、プロ野球からのオファーは1つもなかった。それでも、野球を諦めきれなかった中後は、誘いがあった独立リーグのチーム、武蔵ヒートベアーズに入団。平均年収150万円と言われる厳しい環境から、プロ野球復帰を目指すと覚悟を決めた。そんな中後に2016年1月、想像もしない相手から連絡が入った。それはなんと、アメリカ・メジャーリーグのスカウトから。内容は、3球団が中後の投球を生で視察したいということだった。しかも、スプリングキャンプに参加させるかを見定めるという。中後にとって思ってもみなかったチャンスが舞い込んだ。日本のプロ野球をクビになった自分が、メジャーリーガーになれるかもしれない。心が沸き立った。2月2日、練習を行っている中後のもとにスカウトが視察に訪れた。視察はブルペンで行われ、スカウトはネット裏から投球をチェック。同行者がビデオを撮影しながら、スピードガンですべての投球を計測する。戦力外から一転、突然舞い込んだメジャー挑戦のチャンス。中後は、持てる力の全てを出し切った。各球団とも、アメリカに戻り検討、後日、連絡が来ることになった。しかし、例えキャンプに参加できたとしても、手放しで喜べるわけではない。天と地ほど違う2つの可能性があった。もし、メジャーのキャンプに参加出来れば、その先にメジャーリーガーになる道を見据える事ができる。しかし、マイナーからのキャンプ参加だった場合、メジャー契約までの道のりは遠く険しい。生まれたばかりの子どもを抱える中後は、簡単にアメリカ行きを決めるわけにはいかなかった。
視察から数日後。練習を終えた中後に連絡が入った。なんと、視察に来た球団の1つが、まだ非公式ながら、メジャーのキャンプに参加して欲しいと言ってきた。メジャーリーガーとなれば、年俸は最低保障額でも約5700万円。夢舞台への道が、突然開かれた。それは、日本で戦力外通告を受けた選手にとって、通常ではありえない、破格のビッグチャンスだった。

野球の神様は、戦力外通告の後にも、更なる波瀾のドラマを用意していた。男たちの人生の第2章は、まだ始まったばかりだ。
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