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BACK NUMBER #506 2016.1.23 O.A.

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栗原健太 34歳の男が選んだ道
栗原健太。その名前が1軍から消えてから、決して短いとは言えない時間が過ぎた。かつてカープ不動の4番として活躍。チャンスに強いパワフルなバッティングは、見る者を魅了した。2009年には、第2回WBC日本代表に選ばれ、決勝戦でスタメン出場。世界一の称号をその手にした。しかし、ケガに苦しみ居場所を失った彼は、チームに別れを告げ、自由契約という茨の道をあえて選んだ。背中を押したのは守るべき家族だった。引退覚悟で挑むギリギリの戦い。果して、道は開いたのか?
1999年、日大山形高校からドラフト3位で広島に入団。3年目で1軍デビュー。初ヒットを打った相手は、当時、阪神の絶対的守護神だった藤川球児。抑えの切り札から、一発を放つという大器の片鱗を見せつけた。プロ9年目、26歳で4番に抜擢されると、持ち前の長打力を発揮。Bクラスに低迷するチームで、孤軍奮闘の活躍を見せる。年俸は、最高1億6000万円にまで上昇。日本球界を背負って立つ右の長距離砲として、その地位を磐石なものにしたと思えた。しかし、その歯車が狂ったのは4年前の2012年。慢性的に抱えていた右ひじの痛みが悪化。バットを振ると激痛が走るようになった。すぐに手術を決断し、無事成功。しかし、利き腕のひじという野球選手として、重要度の高い場所だったため、気がつくとリハビリは1年にも及んでいた。栗原が1軍に復帰したのは、翌年(2013年)の開幕直後のことだった。しかし、力強い栗原のバッティングは消えていた。復帰からひと月余りで登録を抹消された栗原は、このあと1軍に上がることは2度となかった。そんな栗原と、まるで入れ代わるかの様に、1軍では丸や菊地といった栗原とは全く違うタイプのニュースターが台頭。チームの空気が180度変わった。カープ女子と呼ばれる、女性ファンが急増し、大ブームが巻き起こる。そんな上昇気流を背に、広島は2年連続クライマックスシリーズに進出。敵地・甲子園を真っ赤な応援団が埋めつくした。そんなチームの躍進を、栗原は2年連続2軍から見つめていた。そして2015年9月、新聞が「栗原、来季構想外」と報じた。実はその頃栗原は、球団に呼び出され去就について話し合っていた。「残留」「引退」「自由契約」。それは、球団の最大限の譲歩の姿勢だった。チームを支えてきた功労者、栗原に、決断を委ねたのだ。34歳、まだできる。栗原はそう信じていた。しかし、残留したところで、自分は本当に必要とされるのか…。疑問が拭えなかった。栗原が選んだのは自由契約。広島退団を決めた。他球団からのオファーがなければ引退。積み上げたものを全て失うかもしれない道を、34歳の男はあえて選択した。
2015年11月10日。静岡でトライアウトが行われたこの日、栗原は広島にいた。トライアウトには参加せず、その終了後から解禁となるオファーを待っていた。しかし、トライアウトが終わっても、栗原の電話は一向に鳴らなかった。現実は甘くなかった。果して、自由契約は本当に正しい選択だったのか?家族の姿を目にすると、そんな思いが胸をよぎる。夕方5時半を過ぎた。今日の連絡はもうない。諦めかけたその時、電話が鳴った。その相手は東北楽天。梨田新監督を迎え巻き返しを狙う楽天は、長打を打てる主軸候補として栗原をテストしたいとの申し出だった。連絡が来たことに肩の荷が下りた。しかし、あくまでまだテスト、復活をかけた本当の戦いはここから始まる。広島を退団して1か月。栗原は楽天の秋季キャンプへと向かった。テストの場所は広島の隣、岡山県倉敷市。栗原の現役続行をかけた戦いが始まった。他にも戦力外通告を受けた3人の選手がテストに呼ばれていた。誰が採用されるか全くわからない。新監督が見守る紅白戦で、栗原は3番ファーストで出場。打席に立つと、球場に異様な空気が立ち込めた。名前がコールされた瞬間、大歓声。栗原を応援するファンが広島から詰めかけていた。大声援を背に、最初に対戦するのは、甲子園で活躍し、最速157キロを誇る剛速球投手、19歳の安楽。栗原は、全盛期を彷彿とさせるパワフルなバッティングを見せた。梨田監督にも笑顔がこぼれる。続く2打席目はテスト参加の元中日、山内。見事、芯でとらえたセンター前ヒット。火の出る様な栗原の当たりに観客も梨田監督も興奮していた。3打席目はセンターフライに倒れたものの、栗原は今の持てる力を十分に発揮した。そして栗原は、見事合格。東北楽天の一員となった。年俸は2000万円(推定)。新たな背番号0と共に栗原のゼロからの再出発が始まる。
広島の若き4番として強烈な光を放った栗原健太が、苦しみを乗り越え、仙台で第2の野球人生をスタートさせる。34歳。その力強い逆襲に期待する。
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