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BACK NUMBER #505 2016.1.16 O.A.

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井岡一翔 2015年大晦日激闘の舞台裏
それは井岡一翔にとって、ただ勝つだけでは許されない試合だった。2015年大晦日、世界フライ級タイトルマッチ。「絶対にKOする」。その相手は、8か月前に戦った因縁の挑戦者。やるか、やられるか。真っ向勝負の殴り合い。ボクシング史に新たな伝説を刻んだ激闘の舞台裏を一部始終公開する。 
大晦日決戦11時間前。井岡は、胸に秘めた思いを我々のカメラの前で打ち明けた。
「どちらが強いか証明する」
さらに試合前には、あまり口にしない“KO”という言葉も飛び出すなど、井岡の並々ならぬ決意が感じられた。そして、ついに迎えた決戦、世界フライ級タイトルマッチ。井岡がチャンピオンとして上がった。井岡に挑むのは、ファン・カルロス・レベコ(32)。レベコはこの階級でかつて7年間無敗を誇り、8度もの防衛を果たした元世界王者。得意のインファイトを武器に、38戦19KOを誇る、南米・アルゼンチンの英雄だ。2度目の戦いとなる2人。このとき彼らの間には凄まじい思いが渦巻いていた。因縁の始まりは、井岡が三階級制覇を成し遂げた2015年4月。当時、挑戦者だった井岡が、ベルトを奪った相手こそ、レベコだった。試合は、終始、有効打を確実にヒットさせた井岡が2-0の判定勝利。しかし、12Rをフルに戦い、手数で上回ったと自負するレベコは、試合後、この判定を猛烈に批判した。勝ったのは自分。そう信じて疑わなかった。怒りはアルゼンチンに帰っても収まらず、レベコは、多くのメディアで判定の不服と再戦要求し続けた。そして、同じ年の大晦日、2人は再び拳を交えることになった。しかし、8か月ぶりに顔を合わせた試合前日の調印式で、レベコはまたも井岡にかみついた。レベコが、クレームをつけたのはグローブ。事前の取り決めで、井岡が黒、レベコは青と決まっていたにも関わらず、突然、レベコは井岡と同じ、黒を使わせろと主張。井岡への挑発とも、試合前の揺さぶりとも取れる行動に、両陣営入り乱れ一触即発の事態となった。結局、この騒動の影響で予定されていた会見や写真撮影が、全て中止に追い込まれるなど更に遺恨を深めた2人。相手に何の文句を言わせないKO勝利で、この因縁に終止符を打ってやる。打倒レベコに燃える井岡は、大晦日、まるで別人のような動きを見せる。1R早々、井岡は積極的に間合いを詰め、接近戦に挑んでいく。8か月前のレベコ戦、井岡はフットワークを使って距離を取り、レベコが打ちこんできた所に的確にパンチを合わせ、着実にポイントを重ねてきた。しかしKO勝利を狙う今回、井岡はあえて間合いを詰め、レベコの得意なインファイトにもちこみ、打ち合いを仕掛けていく。前回と違う井岡の動きに、レベコ陣営も警戒を強める。1Rは、3人のジャッジ全員が10-9で井岡有利の判定を下した。すると井岡陣営は、さらなる作戦に打って出る。
「ボディを狙え」
実はこれこそ打倒レベコの為に磨いてきた井岡陣営の戦略だった。プロ38戦で一度もKO負けがなく、驚異の打たれ強さを誇るレベコ。しかし、着実に相手のスタミナ奪う事が出来るボディブローを当て続ければ、どれだけタフなレベコであろうと、必ずチャンスが訪れる。そこにKO勝利への活路を見出した父・一法は、ボディを中心にしたコンビネーションを徹底的に練習させた。その順調な仕上がりぶりに、父・一法も、強い自信を覗かせていた。2R・3R、井岡は徹底的にレベコのボディを狙う。迎えた4R。強烈な左ボディがヒット、レベコの動きが止まった。ダウンこそ奪えなかったものの、着実にレベコにダメージを与えた井岡。4R終了時点でもポイントは井岡が有利。レベコをあと一歩まで追い詰めた井岡にKO勝利への期待が膨らんだ。しかし中盤、過去8度もの防衛を果たした元世界王者レベコも黙っていなかった。ボディを警戒しながら、鋭いパンチをヒットさせる。結局、試合を優位に進めたレベコがポイントを奪い返した。10R。残りは、あと3R。ここで、レベコの動きに、変化が。足の踏ん張りが利かなくなりスリップ。確実にダメージが蓄積しているのは、目に見えて明らかだった。迎えた11R。井岡の強烈なボディへの3連打。ついにレベコがダウン。因縁のレベコをマットに沈め、見事TKO勝利を収めた。
ボクシング史に刻まれる激闘を制した井岡一翔。三階級王者の圧倒的な強さで因縁をねじ伏せた彼にどんな2016年が待っているのか。これからも見守りたい。
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