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BACK NUMBER #479 2015.7.11 O.A.

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内村航平が憧れた男 鉄棒のスペシャリスト植松鉱治
現在、個人総合33連勝史上最強の体操選手・内村航平。かつてそんな内村に最後に勝った男がいる。体操ニッポンが誇る鉄棒のスペシャリスト、植松鉱治(28)。しかし、彼はいつも夢の五輪直前に不運に見舞われ、悔し涙を流し続けてきた。悲願達成なるか…体操に人生を懸ける男の激闘を追った。
植松は、地元大阪の体操クラブで6歳から体操を始めた。すると才能は瞬く間に開花し、中学3年の時には、全国優勝。高校は、あの池谷幸雄ら数多くのメダリストを輩出した名門・清風高校に進学。ここでも個人総合で全国優勝を達成。夢だった五輪が、明確な目標に変わっていった。そして2007年。大学3年になった植松は、
初めて、北京五輪の代表選考会に出場。ここで上位に食い込めば、五輪も夢ではない。しかし、最後の床の演技で着地に失敗。後頭部をまともに打ちつけた植松は、この瞬間、脳震とうを起こした。結局、このミスが響き、代表争いから脱落した。この無念は、次のロンドン五輪で必ず晴らす。植松は、死にもの狂いで練習をした。すると2008年9月。植松は、学生日本一を決める大会で、当時北京五輪で銀メダルを獲得したばかりの内村航平を下し、優勝。あの内村を破った男として、大きな話題を呼んだ。そしてロンドン五輪代表を目指し、大学卒業後、植松は、名門・コナミスポーツクラブに入部。ここで植松は、強力な武器を手に入れる。それが鉄棒。中でも得意技の1つが、最高G難度の手放し技、カッシーナ。鉄棒から手を離し、バーを越えながら、身体を伸ばしたまま2回転し、さらにひねりを加える。この間、わずか1秒間。さらに、難易度の高い手放し技を連続でやってのける豪快な演技、これが植松の最大の武器。鉄棒といえば植松。体操関係者の誰もが口を揃える、鉄棒のスペシャリストとなった。そして2010年、植松は、内村航平らと共に世界選手権代表メンバーに初選出。得意の鉄棒で、高得点を叩き出し、日本の銀メダル獲得に大きく貢献。しかし、またも悲劇が植松を襲う。ロンドン五輪の1年前、鉄棒の練習中、着地に失敗。右膝前十字靭帯断裂、全治6か月の大けがを負った。結局、この怪我の影響で、またしても五輪代表に落選。かつて内村を破った、日本屈指の鉄棒のスペシャリストが1度ならず2度も五輪代表に落選。しかし、当時まだ24歳。2016年のリオ・デ・ジャネイロ五輪への情熱を再び奮い立たせ、必死に練習を続けた。そのただならぬ雰囲気を、後輩の内村も敏感に感じ取っていた。そしてリオ・デ・ジャネイロ五輪を1年後に控えた今年、植松は、10月にイギリスで開催される世界選手権に照準を合わせていた。植松が目指す五輪の代表メンバーには、その前年の世界選手権代表が選ばれるケースが多い。実際、前回のロンドン大会の代表5人中4人が、前年の世界選手権代表だ。植松にとっては、来年のオリンピックを狙えるかどうか、その実力を推し量る意味でも、非常に重要な大会だ。今年5月に行われたNHK杯では、世界選手権代表6名の内、3人が決定。チームメイトの内村航平、田中佑典、順天堂大学の加藤凌平が、一足先に切符を掴み取った。残りは3つ。代表選出方法は、先に決まっている3人とのバランスを考え、選ばれる。先に決まった3人は、オールラウンダーのため、鉄棒のスペシャリストである植松には有利な状況だ。15.850点以上の得点を獲得すれば、代表入りが見えてくる。そのため植松は、難易度の高い手離し技4つを冒頭部分にまとめて持ってくるという演技構成を用意。成功すれば、参加選手中、最も高得点が出せる、まさに勝負の構成だ。大会まではあと2週間、さっそく練習に取り掛かる。しかし、技の順番を1つでも入れ替えるだけで、演技のバランスは格段に難しくなり、落下のリスクは一気に高くなる。完成度を高めるためには、とにかくこの構成を身体に染み込ませるより他はない。
そして迎えた、オリンピックの前哨戦ともいうべき今年の世界選手権の代表選考会。残り3つの代表の座を懸け、各種目のスペシャリストが一堂に集結。熾烈な争いが繰り広げられていた。そして、ついに植松の出番がやってきた。この日の決勝に残ったのは、8人。その中でも最も高得点を狙える構成で勝負に挑む。最初の難関、カッシーナを見事に決めた。しかしその後、バーの上で、腕を持ち替えた際、バランスを崩し、回転の軸が大きくぶれてしまった。何とか持ちこたえ、落下は免れた。4つの手放し技と、着地は決めた。代表入りに必要なポイントは15.850以上。その得点は、スコアは15.350。結局、0.5ポイント届かず、植松は来年に迫った五輪の前哨戦となる世界選手権への出場は叶わなかった。
どれだけ悔し涙を流しても、必ず立ち上がり、挑戦を続ける植松鉱治。今年9月から始まるリオ・デ・ジャネイロ五輪の予選にむけ彼はもう動き始めている。
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