ミコトは、気持ちを無理に上げたりせずに自然体でいられるキャラクターです。撮影中、監督からはよく「お芝居をしないでください」っておっしゃるんです。これまでの作品と大きく違うところですね。
私がミコトから特に感じるのが、人としての強さ。それは、勢いに任せて怒ったり、何かをむやみに主張したりする押しの強さではなくて、時には相手の言うことを受け流すこともできるやわらかな強さ。きっと彼女には悲しい過去があって、その悲しみを知っているぶん人にも優しくなれるんでしょうね。私自身、そういうやわらかで強い人に憧れますし、ミコトを演じるうえで大切にしています。
解剖医の役は経験があるので、この世界はわずかながら知識はありました。今回驚いたのは、全く架空の設定だと思っていたドラマの舞台の「UDIラボ」が、現実に日本に存在したかもしれない組織だということ。「UDIラボ」は不自然死の死因を究明する公的な研究所ですが、2〜3年前にそういうものを作る構想が実際にあったそうです。実現はされませんでしたが、もしも設立されていたら、その調査結果が事故対策や病気予防に生かされているかも……。そんなことを考えました。このドラマを通して、不自然死のことをちょっと考えたり、ほんの少しでも社会が良くなる方向に進んだらいいなと思います。
それと、台本を読んで思ったのが、「死」を扱っていながら、とても「生」を感じること。ミコト自身が今をちゃんと生きているんですよね。彼女の生きる逞しさやしぶとさに、私自身いい影響を受けています。何より野木亜紀子さんの脚本は難しさとか暗さはなくて、一度読んだだけでスッと頭に入ってきます。テンポのいい会話劇なので、人間ドラマが魅力的な明るい法医学ミステリーだと思います。
現場はすごく明るいですね。みなさん自然体で、時にはセリフがかぶることもありますし、相手のセリフの途中でつい相槌を打つこともありますがそれも全てOK。
ロケのエキストラさんも、会社のシーンではその会社の社員さんが出てくださったり、居酒屋さんでは実際のお客さんがそばで盛り上がっていたりして、これまでの作品にはない経験がいろいろあります。
休憩時間もよくみんなでおしゃべりしています。ムードメーカーは実日子さん。実日子さんがボケて、窪田さんがのっかって、私が突っ込むパターンが多いかな。新さんと松重さんがそれを優しく見守って。そんな明るさやチームワークががそのまま映像にも表れているのではないかと思います。ご期待ください!