テレビ観察プロジェクト









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○子どもと創る! 
─ 高知市立 旭東小発→全国の先生方へ ─

1月17日
この日がプロジェクトのターニングポイント。 社会見学や調べ学習から「プロジェクト」へ転換した日。

いざ!テレビ高知へ
この日から3日間で リサーチ。
3日間のメインは何と言っても地元TV局(テレビ高知)の職場体験研修です。
 人数は毎回12,3人と少数精鋭。時間も2〜3時間を予定していたら、1日中または最低半日は必要と言われうしいやら、驚くやら。
 なぜなら、テレビ高知さんは通常の放送局見学とはまったく違って、疑問質問については各部署の責任者が対応し、報道部関係の研修では編集会議から、取材現場、VTR編集、原稿作成、キャスターの下読み、オンエアまで参加していないと意味がないとまで言ってくれたのですから。
 地方のTV局のよさと限界を子ども達に伝え、また報道面では本当のニュースの仕事現場にこの子ども達を受け入れて下さるためでした。 あんまりお邪魔しては迷惑…と思っていたのが大きな間違いでした。
「本気でやってくれる」その時感じました。

 この17日は13チームの中から特にTV局や番組、CMについてなどの疑問や質問をしに行く代表メンバーです。 リサーチは子ども達にとって大変ドキドキわくわくするもの。日ごろから、教室での勉強に慣らされている子どもはそれをすごく喜びます。
ましてTV局なんてワンダーランドです!!
 前日、代表の子ども達は仕事の分担を決めていました。あるチームは「私が質問係で、〇〇君がデジカメがかり、〇〇さんはメモをとってね。」などなど。

 17日午前いよいよリサーチ初日スタート。
校門前で子ども達と最後の打ち合わせ。6年生だ。しっかり、あいさつをして質問をして来よう!
すぐタクシーで移動。緊張のせいか車内は子ども達、静か。 局に着いて通されたのが立派な会議室。暖房が暖かいのに子ども達、オーバーを脱ぐことも忘れています。
 局の方々の自己紹介が始まりました。編成業務局長の笹岡さん、報道部長の近藤さん、などなど大人がズラリ。
引率の私たちも自己紹介を忘れるほど舞い上がりました。
「いかん、子ども達も自己紹介を忘れている!」
と 気づいたときは既に、局側のお話が始まっていました。
 アレ? 子ども達、メモをとっている子ととっていない子に分かれています。
「どうしてメモをしてないの?」
「だって私、質問係だから…」
「今は大事なお話だから記録しないといけないよ」
「先生、紙も無いんです。」
紙を渡す川崎ひろか先生
  ええっ!? すぐに紙を渡す。
もらった子どもも熱心に書き込みをはじめました。きっと自分の役割に一生懸命で全体のことを考える余裕が無かったのでしょう。 いよいよ質疑の時間になりました。
「何か質問は?」
「では、順に。」
しーーん。子ども達、どうしたんでしょう。
あんなに質問の練習もしていたのに。引率の足達先生に促されてようやく質問が開始。
「身体の不自由な方やお年寄りのために、文字スーパーをもっと入れることはできませんか?」
笹岡さんが確かめながら丁寧に答えて下さいます、
「この言葉、わかる?」
と。でも、子ども達、反応がありません。蚊のなくような返事です。
ああ、もう時間が残り少なくなってきました。
「CMをなくすことはできますか?」
など少し質疑に慣れてきたと思ったら、もう帰る時間になってしまったのです。 子ども達の手元にはチームから託された重要な質問が何枚も残っています。
 最後に、笹岡さんから次のような厳しいお話をいただきました。
「 君たちは、ここへ質問に来たのではないのか。 『はい、いいえ』をちゃんといえるようにしよう。 わからないことをそのままにしちゃ、だめなんだ。 わからないことを、『わからない』と言えることが何より大事なことなんだ! 君たちの目が輝いていないのが残念だ。」

 緊張の2時間、大人の社会で過ごした2時間はとても厳しいものでした。明日も明後日も後に続くチームがあるのに初日がこれでいいのだろうか、と子ども達に投げかけました。 帰りのタクシーに中で、一人ひとりがどうだったかを言いました。
「同じ質問を2回もしてしまった…」
「声がどうしてもでなかった…」
子ども達はうなだれています。
 「何のために」を完全に忘れていたのです。 子ども達の意識を変えなければまた、同じことを繰り返すかもしれない。
今はつらいことと思うかも知れないが、このことを他のみんなに知らせよう。 今日はリサーチの初日。つまづいたことを次へ活かすことができたらそれは成功なのだから。
そう考えて、緊急学年集会をとってもらうことにしました。 4階のホールでは他の場所へリサーチに行っていた子ども達が、わいわいガヤガヤとこの日のまとめの作業をしていました。
 約90人の前で初日のメンバーは伝えました。 自分達のできなかったところを。厳しくいわれた事を正直に伝えました。
「私たちは上手にできなかったけれど、明日行く人はわからない事をそのままにしないで下さい。わからないと言って下さい。お願いします。」
ある女の子は涙を流し伝えました。
  それはみんなから託された事をやり遂げる事ができなかったというくやし涙。 私は聞いている他の子ども達の姿を見てまた、感動しました。泣いているのです、一緒に。
  2日目午後1時〜7時まで。
メンバーの動きは目を見張るほど変わりました。真剣そのものです。カメラマンの方が「びっくりするほど質問をしてくる」といっていたほどです。
 「初日の人の分も、ぼくたちががんばる」といってくれた男子。 意気込みが違いました。チームに必要な情報をしっかりメモしていきます。 それからのリサーチの手本となるものでした。
  こんなに変わったのは、メンバーが変わったからでしょうか。いいえ。私はそこに「意志」が伝わったからだと思います。初日のメンバーが失敗の中で産み出した「意志」が。 この「意志」のリレーがTVプロジェクトに魂を吹き込んだのです。
 初日の子ども達はどうだったでしょうか。 こどものポートフォリオのメモを見てみると
「おとな社会のきびしさを知る」
「わからない事をそのままにしてはいけない。協力する事。明日はだいじょうぶ。」
「明日はきっと目を輝かして。」
とありました。
 自分達のことを振り返る事により、また立ち上がっています。なんて強い子ども達でしょう。 この出来事を思い出すたびに子ども達のけな気さ、一生懸命さ、真剣さに胸を熱くするのです。

1月17日 プロジェクトに「意志」がともった日です。
                         川崎 ひろか