2019年1月スタート毎週日曜よる9時

グッドジャッジ

vol.4弁護士の法廷デビュー戦!刑事と民事で全然違う?

第4話では朝飛弁護士 (北村匠海さん) がついに法廷デビューを飾りました。ずいぶん緊張していましたね (笑)。弁護士になってから人生で初めて経験することは何も法廷ばかりではありませんが,やはり 「初めて法廷に立つ」 というのは特別な瞬間です。

さて,そんな法廷デビュー戦ですが,刑事裁判民事裁判では,どちらかといえば刑事裁判の方がプレッシャーを感じる人が多いようです。もちろん,どちらも依頼者にとっては大事な裁判であることに変わりはありませんが,その違いは刑事裁判と民事裁判の仕組みの違いに由来するのではないかと思います。
日本の民事裁判は 「書面主義」 と呼ばれ,証人尋問などの手続き以外は,ほとんどが予め提出する書面のやり取りだけで進行していきます。法廷で主にやることといえば,予め提出済の自分たちの主張を記載した書面 (訴状や答弁書,準備書面という書類です) を,「この書面を陳述します」 と一言述べて全て読み上げたことにして (これを 「擬制陳述」 といいます),あとは次回期日のスケジュール合わせをするだけです。ものによっては5分とかからずに終わることもあり,私も初めて経験したときは 「あれ,もう終わり?」 と思ったことを覚えています。また,こういった手続きの際は依頼人が法廷に来ることもほとんどありません。双方の弁護士と裁判所だけで,事務的な作業を積み重ねていくイメージですね。

一方,刑事裁判はまさに皆さんが想像するような感じです。依頼人 (被告人) の主張は,弁護士が法廷で裁判官や裁判員に直接プレゼンテーションしなければいけません。民事裁判のように,「書面のとおりです」 といった形で省略することは認められていないんです。言ってみれば,刑事裁判は,法廷という 「現場主義」 ということですね。また民事とは違って,依頼人である被告人が常に法廷にいて,自分のプレゼンテーションから何から,全てを見ているということも緊張感を高めます。私も,初めての刑事裁判のときは,前日に進行を何度も確認し,法廷でうまく話せるよう繰り返し練習をしました。

朝飛は,民事ですら法廷に立ったことがないのに,法廷デビュー戦として刑事裁判 (しかも,少年事件・無罪主張・裁判員裁判というトリプルコンボ) を担当することになったわけですから,その緊張とプレッシャーはまさに 「ハンパない」 ものだったと思いますよ。いや本当にお疲れ様でした (笑)。

最後におまけで,ちょこっとだけ撮影裏話を。一部で話題にもなっているようですが,劇中で 「証人」 という言葉の発音が 「商人」 の言い方 (「しょう」 の方にアクセントがある) になっていることにお気づきでしょうか?もちろん,これはわざとそうしているんです。理由は不明ですが,法曹関係者の中には 「証人」 を 「商人」 のアクセントで発音する人が結構多く,よく裁判傍聴に行く常盤さんがそのことに気が付かれていたんですね。初顔合わせのときに,常盤さんから 「証人の発音はどうしましょう?」 といきなり聞かれたので驚きました (笑)。もちろん,法曹関係者全員が 「商人」 の発音で話すわけではないと思いますが,私もよく 「商人」 の方で話しますし,「せっかくだから杏子に関してはリアル志向で行こう!」 ということで,劇中の杏子のセリフは 「商人」 の発音で統一することになったんです。大半の弁護士がおそらく無意識に使用しているこの独特な発音に気が付かれた常盤さんの注意力,そして何より傍聴の回数… これもきっと 「ハンパない」 でしょうね (笑)。

弁護士:國松 崇

元 TBS 社員弁護士。現在は東京リベルテ法律事務所に所属し,主にエンターテインメント分野の取引法務や訴訟対応等を中心に,多くの企業・個人に対し,幅広くリーガルサービスを提供している。また,刑事弁護人としての活動も引き続き精力的に行っている。『 99.9-刑事専門弁護士- シリーズ 』 など,多くの TBS ドラマにおいて,脚本作りや法廷シーンの演出など全体の監修を担当。

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