インタビュー

内野聖陽さん[坂本龍馬役]

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― 撮影も後半に差し掛かっていますが、どのようなお気持ちでいらっしゃいますか?
私の場合、どの作品に携わっている時でもそうなのですが、撮影の終わりが見えてくると、ちょっと嬉しくなってしまうんです(笑)。作品と離ればなれになってしまう寂しさよりも、連日の撮影から開放される喜びのほうが、どうしても勝ってしまうんですよね。
といいますのも、この『JIN−仁−』もまた内容が非常に濃い作品ですから、目の前に与えられたシーンに命を吹き込むだけで精一杯なのです。今は、「無事にすべてのシーンが撮り終わりますように」と願っています。
― 続編での野風を演じて、お感じになったことをお聞かせください。
(写真)野風という女性の“潔さ”や“献身的な生き方”に感嘆し、また敬服しました。彼女が抱く仁先生への想い、あるいは咲様への想いというのは、『無償の愛』であると思うんですね。そして、自分自身を犠牲にしてでも、自分の体を張ってでも「仁先生や咲さんが幸せになってくれればそれでいい」と願う彼女の姿には、演じ手としても非常に考えさせられるものがありましたし、共感を覚えれども「なかなか実行できることではないな」と感じました。
― 続編では『ルロン』という素敵な男性との出会いもありました。彼と知り合ったことで、野風にはどのような変化があったと思われますか?
ルロンさんと夫婦になった今も、やはり野風の“本当の想い”というのは、仁先生へと向かっていることに変わりはないのでしょう。でも、(仁との恋愛から)身を引き、自分自身を心の底から愛してくれるルロンさんと共に人生を歩みはじめたことで、彼女の心は楽になったのではないかと思うのです。幸いなことに、ルロンさんは裕福なだけでなく、大変お優しい方なので、野風もきっと大きな感謝の気持ちを胸に抱き、穏やかな日々を過ごしているのではないでしょうか。
― ルロン役のジャン・ルイ・バージュさんとのご共演の感想をお聞かせください。
(写真)あの温和な表情をご覧いただければおわかりになりますように(笑)、ルロンさんを演じていらっしゃるバージュさんも大変お人柄がよく柔和な方なので、今回は適役だったのではないかと思います。バージュさんは“日本語でのセリフ”をご負担に感じておられるので、本番前にはいつも緊張されるのですが…そんなお姿を拝見していると「極力リラックスしていただきたいな」と思いまして、撮影の合間にはくだらない話などをさせていただいておりました(笑)。
― 2クールに渡って演じてこられた中で、野風の「変化」を感じた点があれば教えてください。
前作の中で描かれていた『花魁時代』というのは、どんなときでも表情を変えなかったり、あるいは低い声で話したりと、人前で無愛想な態度をとることが多かったのですが、完結編での野風は“素直に感情を表現することが多くなった”ように感じています。それは、彼女が本当に愛する人と出会ったり、信じる者たちのために自らを犠牲にすることをも厭わぬ人生を選択する中で、自然と訪れた変化だったと思うのですが…本当は弱いのに強いフリをしていた野風は、自分の弱さを認めたことでむしろ“真の強さ”を手に入れることができたんじゃないかと思うのです。それは彼女の表情にもよく表れていて、以前はめったに笑うこともなかったですけれども、今では大変嬉しそうな笑顔を浮かべることも多くなりましたよね。
彼女自身がさまざまな経験を経て成長し、強がる必要もなくなった今だからこそ、素直に涙を流したり、笑ったりできるようになったのではないかと感じています。
― 続編の撮影を通して、特に印象に残っているシーンは?
(写真)やはり、第8話の出産シーンです。現代とは違って無麻酔での分娩、それも大変な痛みを伴う帝王切開での出産に臨む野風の姿を演じてみて、改めて彼女の『強さ』を感じましたし、自分以外の命を宿し、その命を守るためならば、女性はあのようにも強くなれるものなのかと思いました。
― 出産に伴う“痛み”の表現に関して、苦労された点などがあれば教えてください。
私自身、経産婦ではありませんので、やはり出産に伴う痛みというのは計り知れないものがありましたが、こればかりは頭で考えても仕方がないといいますか、どれだけ想像して感じることができるかということが重要だと思いましたので、台本を読んでイメージしてイメージして、産みの苦しみというものを表現できたらいいなと思いながら演じました。
造形も非常によくできていて、まるで本物であるかのような胎盤や、へその緒のついた赤子…。近くで見ても、ちょっと気持ちが悪くなるぐらいリアルな作り物ばかりで、びっくりしてしまいました(笑)。
― 野風といえば、結婚式のシーンも印象的でした。あの美しいドレスの着心地はいかがでしたか?
(写真)純白のウエディングドレスも、しばらくぶりに『仁友堂』へ姿を現した際に着用していたワインレッドのドレスも…。どちらも細部に至るまで大切に制作されたドレスでしたので、その着心地はため息が出るほど素晴らしかったです。何ミリかの差にまで厳密にこだわって、ぴたりと私の体に寄り添うものを作っていただきましたので、動きやすさはもちろんのこと、見た目の美しさも格段に優れていて、「やはり洋服は既製品よりも、作っていただいた物のほうが、身体のラインを美しくみせてくれるのだな」と改めて感じました。
前から見て美しいのは当然ですけれども、あのようにオートクチュールで作りますと、横や後ろから見たラインが非常に美しいんですね。それは、とりわけ今回のドレスを着てみて感じたことです。既製品では絶対に表現できないような美しさが顕著に現れていたドレスでしたので、衣装デザインを手がけてくださった半田(悦子)さんには、大変感謝をしています。
『花魁時代』には身につけるもので自分自身の格を示し、他の花魁たちと競ってきたであろう野風は、女性ならではの“美しいものを身につけることに対する喜び・憧れ”をよく知っているはずなので、こういった西洋のドレスを着ることができ、非常に嬉しかったではないでしょうか。
― 身体のサイズにぴたりと合ったドレスを着るために、体型維持などにも気を使われたのではないでしょうか?
これがまた難しいところなのですが、お着物を着るにはどちらかというとふくよかな方がいいんですよね。でも、洋服を着るのにはあまりふくよかすぎてもよくありませんので、そのバランスを考えつつ、撮影中にも微妙な体重の調整をしながら臨んでいます。しばらく『JIN -仁-』の撮影がなく、他のお仕事をさせていただくときはちょっと痩せて体重を落とし、またこちらの作品の撮影に戻るときにはちょっと食べて膨らませて…と、だいたい2kg程度の範囲での調節を行うように心がけています。
― 大沢たかおさんをはじめ、共演者のみなさんとのお芝居はいかがですか?
大沢さんの演じておられる仁先生とのお芝居といいますと、やはりあの出産シーンが思い起こされるのですが、大沢さんは本物さながらのお医者様のように手際がよく、ずいぶんと手慣れたご様子で取り組んでいらっしゃる姿が印象的で、もうあのまま江戸時代へ行ってしまわれたとしても、本当に手術ができるのではないでしょうか(笑)。また、内野聖陽さん演じる龍馬さんとは、3話以降、ほとんど劇中でお目にかかることがありませんでしたので、一視聴者としてご活躍ぶりを拝見しているところです。
個人的に撮影が楽しみだったのは、綾瀬はるかさん演じる咲様とのシーンです。綾瀬さんが現場にいるとその場が華やぎますし、空き時間にはいろいろとお話をさせていただいたりもして、本当に楽しいですね。
― では最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。
この『JIN -仁-』という作品は、壮大なスケールのファンタジーですけれども、妙にリアルなファンタジーなので(笑)、みなさんも一緒に夢を見ていただけたのではないかと思います。ですが、残念なことに、その夢の終わりが近づいてきています。毎週ご覧下さっているみなさんのご期待に添えるよう、全ての瞬間を大切に演じておりますので、最後までお付き合いくださいませ。

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