インタビュー

大沢たかおさん[南方仁役]

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― 続編へのご出演を決断した「最大の要因」を教えてください。
この作品に限ったことではないと思うのですが、『続編を制作する』というのは、そう簡単なことではないと思うんです。前作を作ったとき以上の努力をしない限りは、お客さんも喜んではくれないと思うし、続編を制作したことで逆に“前作をダメにしてしまう”可能性もあると思うんですね。だから、そういった試練を「絶対に越えるんだ」という強い意思がない限りは、かなり大変な道のりになるだろうなと思っていたんですけど…今回の続編のプロットを読ませていただいたところ、これが前作にも増して、のめり込んでしまうほど面白くて(笑)。きっと、ここに描かれている物語を、またみんなで今まで以上にエネルギーをひとつにして完成させれば、「お客さんの求める“なにか”にお応えできるかもしれない」と感じたんです。正直なところ、それと同時に「これはすごく大変な仕事だな」とも思いましたが、困難な仕事だからこそ“トライしてみたい”と意欲もかき立てられましたし、いい意味で「前作を越えられるのではないか」という確信が持てたので、その気持ちが一番大きな決め手になったと思います。
― 続編の物語は、南方仁が江戸へタイムスリップして2年が経過しているところからスタートしますが、前作と比べて変化している点はありますか?
(写真)ありがちなことですが、「続編になったとたん、登場人物たちの性格が変わっている」というのはおかしな話で、この作品に関してはそういったことはないと思います(笑)。ただ、あの最終回からある程度の歳月が経過しているということを考えると、そういう意味ではあの頃と“なにか”が変わっていますよね。例えば…どんな犬でも、引っ越して2年も経てば、新しい『家』や『環境』に慣れるじゃないですか。ただ、かといって、犬の性格って引っ越しの前後でそうそう変わるものではないですよね(笑)。それと同じことで、タイムスリップして2年もの歳月を江戸の町で過ごした仁先生にも、ある種の“慣れ”や“馴染み”が生じていると思うんです。周囲の人たちともより絆が深まっているでしょうし、医者同士のチームワークも良くなっていると思いますし…。そういう雰囲気はどこかで感じていただけたらなと思うのですが、基本的に『南方仁』という人の持っている人間性とか、周りとの関わり合い方というのは大きく変わってはいないと思うので、違和感なくご覧いただけるのではないでしょうか。
― 今回は、大変気温も低く、肌寒い時期(2月初旬)にクランクインを迎えられましたね。
たしかに過酷な中でのスタートだったんですけれど、個人的にはこれが暖かい時期にスタートするよりもよかったなぁと思っているんです。つまりその…続編を制作するって、それぐらい厳しい道のりだと思うから。寒い時期に朝まで撮影をやっているのって、体力的にも辛いことなんですけれど、でも「まぁ、もともと作品自体が過酷なんだから」というふうに思えば、なんだかそれもいいのかなって(笑)。
ただ、エキストラのみなさんには、非常にかわいそうな思いをさせてしまいましたよね。霜が降りている中で、地面に寝そべっていただいたりするようなシーンも多々ありましたから…。でも、「前作を見て、今回どうしてもエキストラに参加したかったので」とおっしゃってくださる方もいて、本当にありがたいなと感じています。
― クランクイン後、すぐにこの作品のペース(感覚)を取り戻せましたか?
他の出演者の方もみなそうおっしゃっているんですけれど、前作の撮影終了から1年以上も空いていたにもかかわらず、衣装を着て、その日その場所に行ったら、不思議なことに「前作のクランクアップした日の翌日」みたいな感じだったんですよ(笑)。きっと、『JIN-仁-』という作品は、それぐらいみんなでのめり込んだ作品だったんでしょうね。なので、あまり違和感を覚えることなくスポンと入り込めたんじゃないかと思います。ただ…実際に演技をしはじめると、やっぱりいろいろなことを忘れたりもしていて。僕もずっと現場で台本を開いています。
― 改めて、演じていらっしゃる『南方仁』という人物についてお聞かせ願えますでしょうか?
(写真)あの人は、常に一生懸命なのに、医療以外には無頓着でどこか抜けているというか…。結構すっとこどっこいなところもあって、自分で演じていても「ちょっとおかしな人だな」と感じることがあるんですよ(苦笑)。
でも、そんなところが逆に、人間らしくていいんじゃないでしょうか。“完璧なヒーロー”なんて求めている時代でもないでしょうし…。人にはみな、欠点も悩みもある。そんな中で、誰よりも前を向いて一生懸命に生きようとしているのが、『南方仁』なんじゃないかと思います。人って自分の思ったとおりになんて生きられないし、願った境遇のようになんかなるわけないですよね。予期せぬ出来事の連続が、人生だったりすると思うんです。でも、そこで腐って「こんなのオレじゃない」といってイジけているのか、どうであれ自分の持っているものを最大限に使って生き抜くか…。彼は、先行きが真っ暗で、非常に孤独なのにもかかわらず、その日を懸命に生きようとするんです。僕自身、そんな仁先生の姿勢には励まされているし、演じていてすごく気持ちがいいというか…。
もし、自分が江戸時代にタイムスリップしてしまったとしたら、もっとイジけてしまうと思うし、人のせいにしたり、「何でオレだけがこんな目に遭わなくちゃならないんだ」って愚痴をこぼしたりすることもあると思うんです。元の世界への戻り方もわからないし、親にも会えない。言うならば、ある日、突然『火星』に連れて行かれて、地球に帰れない状況に陥ったのと同じようなことですよ(笑)。そうなったら人間、誰しも悩むじゃないですか。それとほぼ同じ状況に置かれてもなお「前を向いて生きていく」という彼の姿勢は、すごく素晴らしいなと思います。
― 続編のテーマは、『歴史の修正力への挑戦』ですよね。
今回は、『歴史との対峙』、『歴史との戦い』というのがひとつのテーマとなっています。前作では、南方仁がタイムスリップして、幕末という時代に違和感を覚えながらも、そこで生きる人々と触れ合う中でいろいろ見つけたり、気付いたり、助けたり助けられたりしていく…という物語の流れがあったと思うのですが、今回はそんな彼がますます歴史と深く関わっていってしまうんですね。そもそも『南方仁』という人物が幕末に存在すること自体が矛盾であり、彼が 所詮“異物”であることに変わりはないのですが、続編では江戸の町だけにとどまらず、京都へ行ったり、新撰組と遭遇したり…。仁先生が、これまで以上に次々と、本来であれば出会うはずのなかった患者たちと向き合って、どんどん治療行為を行っていくんです。そんな仁に対して「歴史がどう対峙するのか」というのは非常に気になるところですし、どのように物語が進んでいくのか…僕自身も楽しみにしています。
― 続編には、新たな偉人もたくさん登場しますが、新キャストとの共演はいかがですか?
毎回、西郷隆盛をはじめとするさまざまな偉人が登場するので、撮影しながら僕もすごく楽しませてもらっています。それぞれの役を演じる役者さんたちが、“なるべくその人物に近づけるように”と努力・研究を重ねて演じていらっしゃるので、こちらもなんだかホンモノと対峙しているかのような感覚に陥って、ついつい興奮してしまうんですよ(笑)。新撰組と町で出会えば、「わぁ、これが新撰組か!」と妙に緊張したりもしますし、「役者さんが衣装を着て演じている」なんてほぼ思っていないですから(笑)。視聴者のみなさんにも、僕とどこか同じ目線で偉人たちと触れ合って、幕末を体験してもらえたら嬉しいなと思っています。
― では、気になる“仁を取り巻く恋愛模様”についてお伺いします。こちらも今後、なにか進展がありそうですか?
野風との関係については、前作である“方向性”が見えてきましたよね。ただ、咲に関しては、仁はまだなにもリアクションを起こさぬままなので、そこにはたぶん、これから大きな変化が起こるのではないかと思います。ただ、問題は、仁先生がいつか“現代へ戻ってしまう”可能性をはらんでいるということなんです。それでも仁は、アクションを起こすのか、起こさないのか…。そして、それに対して咲はどう応えるのか…。だって、どんなに好きで結ばれたとしても、その翌日に未来へ帰ってしまったとしたら、それほど悲惨で切ないことはないですからね。だから、結末は“見てのお楽しみ”。でも、その恋愛はとっても大きく動くと思います。
― 大沢さんが思う、日曜劇場『JIN -仁-』の魅力とは!?
(写真)僕は分析する職業ではないので、よくわからないです(笑)。ただ、「間違いないな」と思うのは、スタッフとキャストが誰一人”嘘をついていない”というか、作品に対して本気で取り組んでいるということ。各部署が、それぞれ120%の力をもって徹底して取り組んでいるということだけは、堂々と胸を張って言えます。
どんなドラマでも、映画でもそうなのかもしれないけれど…この作品に携わる人たちの気持ちはとても深いというか、とりわけ強い感じがするんですよね。そういったみんなの想いが、お客さんから支持されるひとつの要素になっているのは間違いないと思います。美術にしても演出にしても、細かいところまで気を抜かないし、ごまかしが一切ないのがこの『JIN―』の現場。もちろん、僕ら俳優陣も“なんとなく”の芝居は許されないですし、感情でもなんでも本物を求められるので、どうしても撮影が押してしまって、朝まで時間がかかってしまうということがたびたび起こるんですね。でも、僕らが苦しまない限り、お客さんには喜んでもらえないと思うし、それが『JIN-仁-』という作品にかかわるということなのだと理解しています。
― 最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。
なかなか言葉にするのが難しいのですが…ひとりでも多くの人に見ていただきたいし、「見てよかったな」と思って欲しいですし…前作と同じように、また新たに始まる月曜日からの一週間、「今よりもなにか頑張ってみようかな」って思えるような、そして今まで以上にみなさんから応援される作品になってほしいなと思いますね。そのために、当たり前のことではあるけれど、日々全員で切磋琢磨しながら壁にぶつかりつつも頑張っているので…(笑)。
僕が『3年B組金八先生』を初めて見たとき、「歴史に残るような作品だな」と感じたように、この作品もずっと、多くの方の記憶に残るような作品になればいいなと思って取り組んでいますので、ぜひ楽しみにしていてください。

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