特集

2024年2月25日放送「イビサの生物多様性と文化」

今も島に残る謎の海洋民族の痕跡

豊かな自然だけでなく、長い歴史を持つイビサ島。最も古い遺跡の時代は2700年前の古代まで遡ります。

──複合遺産「イビサの生物多様性と文化」の自然のお話を聞きましたが、一方の遺跡とはどのようなものなのでしょうか?

田口:およそ2700年前のフェニキア人の遺跡が世界遺産に登録されています。フェニキア人は東地中海沿岸部、今のレバノンの辺りを起源とする古代の海洋民族で、ローマ帝国より前に地中海交易を制していました。その彼らの拠点の1つがイビサ島でした。島にはフェニキア人の住居や埋葬地の跡が残されています。その墓からは、スペイン本土などで採掘された金の指輪や、アフリカ大陸から運ばれたダチョウの卵などの埋葬品が見つかっています。

フェニキア人の住居や墓所の遺跡が世界遺産に登録されています。埋葬品は海の向こうからもたらされたものも見つかっています。

──そんな昔に地中海を股にかけて交易していた人々がいたのですね。

田口:フェニキア人は記録が少なく謎に包まれていますが、彼らが拠点としていた町には塩田を作っていたことが知られています。イビサにも彼らがその手法を広めた塩田があるのです。ほかにも、石を切り出した跡や鉄を精錬した場所などが見つかっています。海洋民族だったため、そうした遺跡はいずれも海岸付近にあります。

イビサ島にある色鮮やかな塩田。フェニキア人は拠点の町に塩田を造りました。また島の海岸にはフェニキア人が石切場にしていた跡もあります。

──謎が多いフェニキア人の遺跡とは興味深いです。ほかにも見つかっている遺跡などはありますか?

田口:イビサ島の海岸は入り組んだ地形で入江が多いのですが、フェニキア人は入江を港として利用し、外敵から守りやすい高台に町を作りました。世界遺産に登録されている旧市街、ダルトヴィラも元々はフェニキア人が高台に作った町の1つです。後に古代ローマ人などがその場所を利用し、16世紀、スペイン帝国によって現在の形になりました。スペイン人が築いた城壁の足元に残っている、フェニキア人の住居の遺跡をご紹介します。

スペイン帝国の紋章が掲げられたダルトヴィラの城壁の門。城内にある城壁の足元にはフェニキア人の遺跡があります。

──古代からさまざまな人々が入れ替わりながら暮らし続けてきた島なのですね。

田口:そうですね。現在イビサ島には年間800万人の観光客が訪れるそうで、今も昔も人々が集まる島なのだなと思いました。今回、島のスタッフと協力して取材を行ったのですが、皆さん、のんびりした感じで、外国人を受け入れる開放的な部分があって過ごしやすく、本当に魅力的な島でした。

──リゾート気分が味わえそうなイビサの美しい映像、楽しみです。最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

田口:今回の取材では、地上はもちろん、水中撮影、ドローン空撮、ヘリや船からの撮影など、さまざまな場所と方法で8Kカメラを使用しました。近年、小型化と高性能化が著しいカメラによって、これまでは見たことなかったような8K映像を海外取材でも撮ることができるようになりました。そんな最新機材による、陸海空の特別な8K映像の数々をお楽しみください。

高精細8Kカメラを駆使して撮影されたイビサの絶景映像の数々をお楽しみください。

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