まずはスペインの文化遺産「メノルカ島のタライオティック文化の先史時代遺跡」。メノルカ島は地中海西部に位置し、古くは3600年前に遡る巨石遺跡が残っています。入り江、渓谷、砂丘など多様な地形のある島で、田園風景の中に遺跡が点在しているところも映像的に良いのではと思いました。
特集
サウジアラビア・リヤド第45回世界遺産委員会リポート


9月18日(月) サウジアラビア・リヤド世界遺産委員会リポート 第五回
・連日の怒濤の新登録ラッシュ!12の新しい世界遺産が誕生
サウジアラビアの首都リヤドで行われている第45回世界遺産委員会。昨日につづき、各国が推薦した世界遺産候補の審議が行われ、次々と新しい世界遺産が生まれました。この日、新登録された12の中から、「すぐに撮影に行きたい」と思ったものをピックアップしていきます。

9月18日の世界遺産委員会(サウジアラビア・リヤド)

メノルカ島のタライオティック文化の先史時代遺跡(スペイン)1

メノルカ島のタライオティック文化の先史時代遺跡(スペイン)2

メノルカ島のタライオティック文化の先史時代遺跡(スペイン)3
メノルカ島以外に、2022年分の推薦から、他に4つの世界遺産が新たに決まりました。
リトアニアの「モダニズム建築の都市カウナス :オプティミズムの建築、1919年-1939年」。
トルコの古代遺跡「ゴルディオン」。アレキサンダー大王の伝説「ゴルディアスの結び目」(絶対ほどけないという結び目を、大王が剣で切ってほどいてしまう・・・という伝説)の舞台となったとされる都市ゴルディオンの遺跡です。
チェコの「ジャテツとザーツホップの景観」。ビール造りの原料ホップの産地で、ここのホップは世界中で使われているそうです。
グアテマラの「タカリク・アバフ国立考古公園」。オルメカ文明からマヤ文明にかけての、交易都市の遺跡群が残る公園です。

モダニズム建築の都市カウナス(リトアニア)

ゴルディオン(トルコ)

ジャテツとザーツホップの景観(チェコ)

タカリク・アバフ国立考古公園(グアテマラ)
・2023年分の審議がスタート
2022年分の審議が終わり、2023年分の審議が始まりました。
新登録で気になったのは、エチオピアの自然遺産「パレ山地国立公園」。標高4000メートル級の山々を含むエチオピア高地の国立公園で、「幻のオオカミ」といわれるエチオピアンオオカミなど貴重な動物たちが生息しています。絶景と絶滅危惧種の生息地としての価値が認められて、世界遺産になりました。

バレ山地国立公園(エチオピア)1

バレ山地国立公園(エチオピア)2

バレ山地国立公園(エチオピア)3
もうひとつ映像向きと感じたのが、アゼルバイジャンの「キナルグ人の文化的景観と移牧の道」。アゼルバイジャン北部の高山に、キナリグ人という半遊牧民が住んでいます。彼らは夏はコーカサス山脈の高地へ、冬はアゼルバイジャン中央部の低地平原へと移動する生活を古代から送っていて、その200キロにおよぶ移動ルートも世界遺産になりました。季節ごとに変わる暮らしぶりと、雄大な山脈を家畜と共に移動していく様子、撮影してみたいと思いました。

キナルグ人の文化的景観と移牧の道(アゼルバイジャン)1

キナルグ人の文化的景観と移牧の道(アゼルバイジャン)2

キナルグ人の文化的景観と移牧の道(アゼルバイジャン)3
・感涙の世界遺産登録!フランスの古代遺跡
この日、フランスの「ニームのメゾン・カレ」も世界遺産に決まりました。ニームは南フランスの街で、古代ローマの時代から栄えた所です。メゾン・カレはローマ時代に建てられた神殿で、2000年前の建築物としてはとても保存状態の良いものです。実は2018年の世界遺産委員会のとき、他にも街に残っている遺跡と一緒に「ニームの歴史都市建造物群」としてフランスが推薦したのですが、このときは世界遺産として認められませんでした。

2022年4月10日放送「ポン・デュ・ガール」
今回、メゾン・カレ一本にしぼって再挑戦し、5年越しで雪辱を果たしたのです。世界遺産への登録が決まって、フランス代表団のおじさんが謝辞を述べたのですが、途中で感極まって泣き出してしまいました。こちらも、フランス人も嬉し涙を流すのだと、感じ入りました。

嬉し泣きして励まされるフランスの代表
この日、2023年分として推薦された中から、他にも4つの世界遺産が新たに決まりました。
チュニジアの「ジェルバ島:島嶼域での入植様式の証拠」。

ジェルバ島:島嶼域での入植様式の証拠(チュニジア)
インドの「ホイサラ朝の宗教建造物群」。

ホイサラ朝の宗教建造物群(インド)
インドネシアの「ジョグジャカルタの宇宙観に基づく歴史的建造物群」。

ジョグジャカルタの宇宙観に基づく歴史的建造物群(インドネシア)
ロシアの「カザン連邦大学の天文台」。

カザン連邦大学の天文台(ロシア)
明日も2023年分の新登録候補の審議がつづきます。
「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太