特集

2022年6月19日放送「琉球王国のグスクと関連遺産群」

自然の姿を残す琉球独特の祈りの場

グスクの始まりは、祭祀の場でした。琉球古来の自然と先祖に対する祈りは現在の沖縄でも見ることができるのです。

──城というと本土では軍事的な拠点のイメージが強いですが、グスクは祭祀の場でもあったのですね。

天野:はい。もともとグスクは祈りの場から始まったのです。首里城の守礼門近くにある園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)もそうした祈りの場の1つで、国王が城から外出する際に無事を祈願したと言われています。首里城にはそのほかにも、京の内と呼ばれる聖地の森があります。今回、この森の中にある不思議な石灰岩の洞窟を撮影しました。普段は入れない場所ですのでご覧ください。

園比屋武御嶽石門の奥にある聖なる森。また首里城の京の内と呼ばれる森の下には、不思議な石灰岩の洞窟がありました。

──この洞窟はどういうものだったのでしょうか?

天野:沖縄では、こうした琉球石灰岩が侵食されてできた洞窟のことをガマと呼びます。ガマではいまでも先祖への祈りがささげられています。京の内の洞窟もやはり祈りを行う場所として使っていたと考えられています。また、沖縄でよく見られる様式の墓、亀甲墓はガマにつながったものもあります。古代の人々が洞窟で暮らした時代から続いてきたであろう、こうした自然と祖先への信仰が融合した沖縄特有の文化も番組では紹介しています。

沖縄のガマは、現代でも祖先への祈りが捧げられる場です。またガマにつなげられて作られた亀甲墓にも祖先が祀られています。

──沖縄古来の信仰がグスクと深く関わっているということなのですね。

天野:世界遺産の1つ、斎場御嶽(せーふぁうたき)も沖縄の古い信仰に関わる場所です。古来、琉球の人々は、水平線の彼方に楽土ニライカナイがあると信じてきました。ニライカナイから最初に神が降り立ったとされる聖なる島が久高島で、沖縄本島からその久高島を望む場所にあるのが斎場御嶽です。斎場御嶽は琉球王国最高の聖地とされ、かつては王族しか入ることが許されませんでした。ここも自然のままの、むき出しの岩や鬱蒼とした草木の中に祈りの場があります。

琉球王国最高の聖地とされる斎場御嶽。ここにもまた、自然のままの岩や草木が残されています。

──沖縄特有の文化を感じることができそうで、放送が楽しみです。最後に視聴者へのメッセージをお願いします。

天野:2020年から取材を開始し、コロナ禍の影響もあって長期にわたる取材となりました。最後は梅雨入りするギリギリのタイミングで、沖縄ならではの青い海を撮影することができました。ドローンを駆使したユニークなグスクの全容、琉球石灰岩が見守り続けてきた人々の祈りの場など、2年をかけた思いをぜひご覧ください。

長期にわたる取材で、さまざまな視点から捉えた、グスクとそれらに関連する遺産の数々をお届けします。

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