特集

2022年4月10日放送「ポン・デュ・ガール」

古代ローマがもたらした豊かな暮らしや文化

当時の先端技術によって古代ローマ人がもたらしたのは、水資源だけでなく現在の南仏の生活にもつながる豊かな暮らしでした。

──ポン・デュ・ガール自体は、いったいどのような方法で作られたのでしょうか?

松本:さまざまな技術が用いられていますが、その中でもローマ人が得意としたのがアーチ工法です。石自体の重みによって安定する工法で、最大6トンもある石灰岩を使ってポン・デュ・ガールは作られています。繰り返しになりますが、人力だけで作られた巨大な水道橋が2000年経っても崩れずに建っているのは本当に驚きです。ポン・デュ・ガールのアーチには、工事の際に刻まれたローマ数字などを見ることができます。番組でチェックしてみてください。

アーチ工法によって作られたポン・デュ・ガール。一部の石材にはアーチを組み上げる工事の際に刻まれたローマ数字が確認できます。

──当時のニームの街では水を使ってどのような暮らしをしていたのでしょうか?

松本:水路が出来上がったことで、ニームには1日平均2000万リットルもの水がもたらされました。住民一人当たり1日800リットルも使えるほどの豊富さです。現代人が使う水の量がおよそ1日200リットルと言われていますので、いかに潤沢だったかがわかると思います。街には水道が整備され、公衆浴場や噴水なども作られていました。

水路でニームに届けられた水は配水所で分岐し、当時すでに整備されていた水道管によって街の各所に供給されました。

──ニームは非常に進んだ都市だったのですね。

松本:はい。ローマ帝国は水道とともに、洗練された文化や生活様式ももたらしたのです。ニームや近隣の街からは、ローマ時代のコインや当時流行していた装飾が施された土器、邸宅を飾ったモザイクなどが出土しています。あと、ワインの大規模生産を南フランスに持ち込んだのもローマ人なのです。出土品の中には当時のワイングラスもあります。

ニームとその近隣の街からは、邸宅を飾ったモザイクや型押しで模様をつけた当時流行の土器など、ローマ時代の出土品が多く発見されています。

──単に水資源だけでなく、新しい生活文化ももたらしたとは興味深いです。最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

松本:コロナ禍で日本の取材チームが海外の世界遺産へなかなか行くことができない状況の中、今回は、在仏日本人ディレクターである私と現地のスタッフが一緒に番組を作るという新しい試みでした。フランスには、美味しいワインで人をもてなしたり宴会を催したりするオープンな地域文化がありますが、そうした文化のはじまりはローマ人がもたらしたものなのではないかと取材を通じて感じました。番組をご覧になって、古代ローマの歴史や建築技術のすごさに加えて、当時の人々の生活や文化にも興味を持っていただけたら嬉しいです。

ローマ帝国は当時最先端の水道技術だけなく、ワインの大量生産や洗練された生活様式など、さまざまな文化も南フランスにもたらしました。

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