特集

2022年3月13日放送「16~17世紀のヴェネツィアの防衛施設群」

星形の要塞に守られたルネサンスの理想都市

海に加えて陸の要所にもつくられたヴェネツィアの防衛施設。その1つであるパルマノーヴァは、不思議な星形をした要塞で守られた都市です。

──残りの3つ、陸の要塞はどんな特徴があるのでしょうか?

田口:陸の要塞は、パルマノーヴァ、ベルガモ、ペスキエーラ・デル・ガルダの3つです。その中でも特にユニークなのが、パルマノーヴァです。ヴェネツィア共和国の領土であった穀倉地帯の平原にある都市で、特徴はなんといってもその形です。空から見ると、円状の街の周りに9つの砦が星形に配置されているのがわかります。

──どうしてそのような形になっているのでしょうか?

田口:パルマノーヴァの放射状に広がる街は、ルネサンスの理想都市の考えに基づいたものです。その街の周囲に張り出した三角形の砦は、大砲を据えた際に死角が生まれないように考案された当時最先端の防衛システムなのです。つくられた時代は違いますが、函館にある五稜郭も同じような考えで築かれた城塞になります。

星形に並んだ9つの砦に守られた街、パルマノーヴァはルネサンスの理想都市の考えに基づいてつくられました。

──日本の史跡にもつながってくる技術とは驚きました。パルマノーヴァの空撮映像が楽しみです。

田口:この街を空から撮影するのは、ドローンでは高度が足りず、ヘリコプターを使っての撮影でやっと全体が見渡せました。それほどスケールが大きな要塞都市なのです。この要塞を作った時代の人は見ることができなかった、空からの巨大で不思議な星形に注目してください。

──ほかの陸の要塞の見どころを教えてください。

田口:アルプス越えの交易ルートを守るため、アルプスの南の麓につくられた要塞がベルガモです。この要塞の特徴は、岩山の上に築かれているところですが、やはり城壁で守られていて、小さな城門から街に入るのはほかの城塞都市と共通しています。もう1つは、アルプスを望む湖につくられたペスキエーラ・デル・ガルダです。ここは、ガルダ湖という湖から川が南へ流れ出す場所で、やはり水運の要所でした。城壁に囲まれた湖畔の要塞には運河が通され、まさに「湖のヴェネツィア」といった街並みです。

アルプス越えの交易ルートを守ったベルガモ。ヴェネツィア共和国の西の玄関口といえる城塞都市です。

ペスキエーラ・デル・ガルダは、アルプスを望むガルダ湖から川に水が流れ出す水運の要所に築かれた要塞です。

──ヴェネツィアが単なる都市でなく、かつて南ヨーロッパに広がる強大な貿易国家であったことがうかがえる世界遺産ですね。最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

田口:「ヴェネツィアの防衛施設群」は、番組として取り上げるのは今回が初めてになります。コロナ禍で制約がある中、しかも6カ所で3カ国にまたがる世界遺産を、2チーム体制で、それぞれの要塞の特徴をお伝えできるように工夫して撮影しました。青いアドリア海や雄大なアルプスを臨む湖など、美しい景色もたっぷりお届けしますので、ぜひご覧ください。

それぞれに特徴的な要塞の姿に加えて、アドリア海やイタリア本土の美しい景色もぜひお楽しみください!

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