特集

2022年2月27日放送「ケープ植物区保護地域群」

共に進化した不思議な虫と花

厳しい環境を生き抜く多様な植物。ケープ植物区には、さまざまな適応と進化の物語がありました。

──ほかにはどんな植物が見られるのでしょうか?

小澤:ケープ植物区に暮らす動物や昆虫と共に進化することで固有種になった植物も番組では紹介します。

──植物と共に進化する動物や昆虫とは、いったいどんなものなのでしょうか?

小澤:その代表的な例としてお見せするのが、ロングタンフライというアブです。ロングタンフライは、体よりも長い6cmにもなる口先を持っています。彼らが蜜を吸うのはある特定の花です。花の軸の部分がちょうど6cmあり、底に蜜があります。ロングタンフライも花も共に進化し同じ長さになったんです。そして蜜を吸うときにロングタンフライの頭に花粉が付き、受粉を助けているのです。

──そんなアブが蜜を吸う様子はぜひ見てみたいです。実際の撮影はどうでしたか?

小澤:このアブと花の撮影には苦労しました。3台のカメラをそれぞれ花に向けて準備し、アブが飛んでくるのを何時間も待ったのです。おかげで、アブの口先が花に差し込まれる様子をしっかり撮影できました。

6㎝ある軸の底にある蜜を吸うために、口が同じ長さになったアブ。植物と昆虫は共に進化した。

──花と昆虫が力を合わせて厳しい環境の中に生き残っているとは面白いですね。

小澤:番組では、過酷な環境に適応したユニークな植物をほかにもご紹介します。その環境とは、山火事です。夏場は乾燥するため、落雷によって山火事が起こることがあります。ある植物はその火事にさえも適応しているのです。

──火事に適応するとはいったいどんな植物なのでしょうか?

小澤:白とピンクの可憐な花を咲かせる低い木なのですが、この花は受粉してタネができると固い殻を閉じます。そのあと、普通の植物の種のように自然に落ちるのではなく、種は固い殻に守られたまま、山火事を何年も待っているのです。そして山火事が起きると熱や煙に刺激されて殻が開き、種が現れます。種には毛が生えていて、風で飛んで地面に落ち、次の世代が芽吹くのです。

固い殻が山火事によって開き、中のタネが風に飛ばされます。

──いったいなぜそんなふうに進化したのでしょうか?

小澤:山火事で葉や枝が焼けた結果、灰が肥料となり、太陽の光がふんだんに差し込むようになり、植物の生育に最適な環境となるのです。一見、植物にとっては種の保存を脅かされるような山火事を、この植物は逆に利用して次の世代を残すために進化したのではないでしょうか。

──植物のたくましい生命力に驚かされます。最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

小澤:絨毯を敷き詰めたように広がる花園の映像は、本当に素晴らしいので必見です。また地味な草や花、木に目を向けてみると、厳しい環境で生き抜く植物の面白さが感じられます。番組をご覧の皆様も、さまざまな植物に隠されたストーリーを楽しんでいただけたらと思います。

自然が生み出したさまざまな絶景と厳しい環境を生き抜くユニークな植物の姿をお楽しみください!

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