特集

2021年10月3日 放送25周年スペシャル 4K8K特別編「高野山の四季」

頼朝を供養する秘仏を史上初の8K撮影

高野山への参詣道が行き着く先の終点は、奥之院でした。長年にわたって数多くの死者を供養してきた聖地の姿をお届けします。

──夏はどんな高野山を撮影したのでしょうか?

田口:夏には、麓にある慈尊院という寺院から高野山へと通じるおよそ26㎞の参詣道を辿ってみました。この慈尊院も参詣道も世界遺産の一部として登録されています。その道には一町、およそ109mごとに石でできた町石と呼ばれる道しるべが建っています。これを辿って上り詰めた先には壇上伽藍があり、さらにその先には奥之院という高野山のもう1つの聖域があります。この奥之院が参詣道の終点になります。

──終点の奥之院には何があるのでしょうか?

田口:まず進んでいくと杉の大木が並ぶ森の間に参道があり、その両脇にはさまざまな大きさの石の塔が20万基も立ち並んでいます。一見すると墓のようですが、多くは遺骨などを収めたものではなく、死者や祖先の供養のために建てられた塔ということです。中には、織田信長や武田信玄・勝頼親子、伊達政宗などの供養塔も残されています。

参詣道の終点である奥之院の森には、歴史上の人物をはじめ、20万基もの供養塔が立ち並んでいます。

──名だたる武将が一堂に会しているかのようですね。どうしてそこに供養塔が数多く建てられるようになったのでしょうか?

田口:それには弘法大師空海の存在があります。空海は、奥之院の聖域で永遠の瞑想に入っていて今も生きていると信仰されているのです。高野山の僧侶は、空海のための食事をお櫃に入れて1日2回運ぶ「生身供(しょうじんぐ)」という儀式を1200年間毎日続けています。ここで空海は人々を救済する弥勒菩薩が現れるのを待っていて、その近くに供養されることが極楽浄土への近道とされているのです。

今も生きていると信じられている空海に食事を運ぶ僧侶。高野山で1200年間毎日行われてきた「生身供」という儀式です。

──1200年間毎日続く儀式とは、高野山の歴史の重みが感じられます。ところで今回の番組のテーマの1つでもある8Kカメラを用いた撮影ですが、どのようなところを撮ることができたのでしょうか?

田口:さまざまな場所を8Kで撮影しました。中でも特に注目していただきたいのが、普段は拝観が許されていない仏像、秘仏です。今回の取材では特別な許可を得て、金剛三昧院多宝塔の秘仏を史上初めて8Kカメラで撮影しました。金剛三昧院多宝塔は、高野山に現存する最も古い建築物で、北条政子が源頼朝を供養するために1223年に建造したものなのです。その中の5体の秘仏も同じ時代のものとされています。クレーンなどを駆使してアングルなどにも拘った映像をご覧ください。

金剛三昧院多宝塔に収められた仏像。通常は公開されていない秘仏を、特別に許可を得て撮影することができました。

──滅多に見られない仏像の映像とは見逃せませんね。

田口:金剛三昧院多宝塔のほかにも、壇上伽藍の中の重要な建物の1つ、西塔の中も特別に許可を得て撮影しました。塔の内側は華やかに彩られ、黄金の秘仏が5体安置されています。この西塔の格子組みの天井には草花模様が描かれているのですが、撮影した映像を見るとその鮮やかさや繊細さがよくわかります。

壇上伽藍西塔の内部も特別に撮影することができました。黄金の秘仏と、草花の描かれた天井に注目です。

──高精細撮影ならではの映像が楽しめそうですね。最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

田口:コロナ禍で取材にも制約がかかる中、約1年に渡って慎重に時間をかけて取材することで、素晴らしい映像を収めることができました。特に見ていただきたいのは、金堂と金剛三昧院多宝塔の外観のシーンです。季節を変えて、モーションコントロールによって同じ位置と角度から撮影したものをつなぎ合わせた特別な映像です。そのほかにもさまざまな試みで、荘厳かつ美しい高野山を存分に高精細カメラに収めました。1年分の気合を込めた番組になっていますので、ぜひご覧ください。

すべての季節を通じて行った撮影によって、高野山のさまざまなシーンの数多くをカメラに収めることができました。スペシャルな映像をお楽しみください。

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