特集

2021年5月16日「日光の社寺」

1200年以上も続く聖地 日光の秘密に迫る

栃木県日光市にある世界遺産「日光の社寺」。なぜ、この土地が徳川家の権威を支える重要な場所となったのか。その背景には、自然への信仰がありました。東照宮をはじめとする二社一寺と日光連山の美しい自然を長期にわたって取材した杉井ディレクターに話を聞きました。

山岳信仰からはじまり聖地として栄えた日光

徳川家によって作られた東照宮が有名な日光ですが、信仰の聖地としては1200年以上の長い歴史を持つ土地なのです。

──今回の世界遺産は「日光の社寺」ですね。日光で神社、お寺といえば、東照宮がまず思い浮かびます。

杉井ディレクター(以下、杉井):そういう人も多いかと思います。世界遺産「日光の社寺」には、栃木県日光市にある東照宮、二荒山神社、輪王寺の二社一寺が登録されています。

東照宮、二荒山神社、輪王寺の二社一寺が世界遺産「日光の社寺」として登録されています。

──番組としては「日光の社寺」を取り上げるのは3度目と聞いています。過去の放送との違いはどんなところでしょうか?

杉井:今回の番組では、「日光の社寺」の四季の絶景をお見せしたいというテーマがあり、夏から春までオールシーズンの取材となりました。一年にわたる取材のおかげで、本当に素晴らしい景色の数々をカメラに収めることができました。

──具体的にはどんな景色を撮影されたのでしょうか?

杉井:中禅寺湖にある岬、八丁出島の紅葉は、まるでパッチワークのように色とりどりの絶景です。また冬になると日光では雪が積もり、雪化粧をまといます。雪や氷が岩肌についた華厳の滝をご覧ください。春の景色で注目いただきたいのが、輪王寺三仏堂の前にある「金剛桜」です。突然変異した珍しい山桜で、普通の山桜はピンク色を咲かせますが金剛桜の花は真っ白なのです。夏の日光としては、日光連山の1つである男体山山頂から臨んだ中禅寺湖の大パノラマをお見せします。

長期取材で収めた、四季折々の日光の絶景を番組ではお届けします。

──四季折々のさまざまな絶景が見られるのは楽しみです。

杉井:季節を変えての映像をお届けする以外に、今回のもうひとつのテーマとして、日光がなぜ聖地として栄えたのか、そしてなぜ徳川家康は日光に自分の墓所を作らせたのか、という秘密にも迫ります。

──日光がなぜ聖地であるかとは興味深いです。どんな理由があるのでしょうか?

杉井:日光が聖地となったのには、実は先ほどお話しした男体山からの景色が関係しています。男体山は噴火によってできた山で「日光富士」とも呼ばれ、2万年前に男体山が噴火してできたのが今の中禅寺湖です。標高は2500メートル近くあり、古くから信仰の対象でした。

──もともと山岳信仰があったのですね。

杉井:はい。そして1200年以上前、ある徳の高い僧侶が男体山の登頂に成功しました。奈良時代の末のことです。そのとき、山頂から広がる中禅寺湖の絶景を目にし、ここを観音菩薩が住む浄土「補陀落山(ふだらくさん)」とその僧侶は呼びました。それが後に転じて男体山の別名「二荒山(ふたらさん)」となったのです。その僧侶が見たという景色を求めて、私も昨年夏に実際に男体山を登ってみることにしました。

──山頂からの景色はどうでしたか?

杉井:私は登山があまり得意でなく、苦労して山頂に着いたところ、急に雲がかかってしまいました。なかなか晴れずに気を揉みましたが、一瞬晴れ間が広がり、無事に撮影できました。本当に浄土と表現するのにふさわしい素晴らしい景色でした。

──古くから信仰の場であったことがよくわかりますね。男体山からの絶景、放送が楽しみです。

男体山山頂から眼下に広がる中禅寺湖。この景色を目にした奈良時代の僧侶が、ここを「補陀落山」と呼びました

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