特集

2020年12月23日放送「グレーター・ブルーマウンテンズ地域」

3億年の時が生んだ大峡谷の絶景

オーストラリアの「グレーター・ブルーマウンテンズ地域」は、広大な岩山と大峡谷、そこに広がるユーカリの森で知られる自然遺産です。長い時間をかけて出来上がった雄大な自然や、名前の由来となった不思議な現象などについて、現地の撮影スタッフと連携して番組を作り上げた奥村ディレクターに聞きました。

大峡谷を青く染めるユーカリの葉の秘密

「大いなる青い山並み」と名付けられたこの一帯は、太陽が上ると、青色の霞がかかるのです。この神秘の山々に迫ります。

──今回の「グレーター・ブルーマウンテンズ地域」とは、どんな世界遺産なのでしょうか?

奥村ディレクター(以下、奥村):オーストラリア南東、シドニーから車で2時間ほどの場所にある自然遺産です。8つの国立公園とその周辺の公園の総称で、標高1000mを超える高原に深い谷が切れ込んでいる風景が広がっています。地形が似ていることから「オーストラリアのグランドキャニオン」と呼ばれることもあります。

標高1000mを超える高原のあちらこちらに切り立った断崖と、大峡谷が広がっている「グレーター・ブルーマウンテンズ地域」

──グランドキャニオンというと、文字通り絶壁の大峡谷が有名ですが、グレーター・ブルーマウンテンズ地域でもそのような景色が見られるのですか?

奥村:はい、岩山と大峡谷は、やはりこの場所の特徴の1つです。有名なのは「スリーシスターズ」で、3人の美しい姉妹が魔法によって岩にされたという、先住民アボリジニの伝説に由来する岩山です。そのほかにも、現地ではイノシシ岩と呼ばれる、文字通りイノシシの頭の形をした岩があります。今回の番組では、こうした岩にドローンの空撮による迫力の映像をお見せします。

スリーシスターズ(三姉妹)やイノシシ岩といった、ユニークな形をした岩山があちこちにあります。

──想像力をかきたてられる岩の映像、楽しみです。岩のほかにはどんな特徴があるのでしょうか?

奥村:最大の特徴は、ユーカリの森です。ユーカリの固有種が生息していることが、ここが世界遺産に登録された理由にもなっています。ユーカリは、グレーター・ブルーマウンテンズ地域のような岩の多いやせた土壌に適応した植物です。水分の蒸発を防ぐために、葉の表面が油分で覆われています。その油分が強い日差しで気化すると、光の反射に影響を与えて、峡谷が薄青く輝くのです。これが「ブルーマウンテンズ」という名前の由来です。

大峡谷に生い茂っているのはコアラの餌としてお馴染みのユーカリ。乾燥した気候に適応するために葉の表面が油分に覆われています。

膨大なユーカリの葉の油分が揮発したガスによって、大峡谷が青く霞んで見えます。これが「ブルーマウンテンズ」の名の由来です。

──青く輝く峡谷とは、すごい絶景ですね!

奥村:番組では、そのほかにも大峡谷が生み出す絶景をお見せします。その1つが、「ファントム・フォールズ」です。スリーシスターズがあるジャミソン・ヴァレーのもう1つの名所に「ナローネック」という場所があります。大きな峡谷を東西に分断する細い断崖なのですが、年に数度だけ条件が整った日に雲海が断崖の西側から東側へ流れ落ちる「幻の滝」が発生するのです。今回、その貴重な映像の撮影に成功しましたので、ぜひご覧ください。

細い断崖の向こう側から手前に流れ落ちる雲海。「ファントム・フォールズ(幻の滝)」と呼ばれる、年に数度しか現れない珍しい現象です。

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