特集

2020年10月4日放送「古都京都の文化財 ~比叡山延暦寺~」

焼き討ちを逃れた貴重な宝を8Kで高精細撮影

比叡山延暦寺の最大の危機、織田信長の焼き討ち。それを免れて現存する奇跡のお堂を8Kカメラで映像に収めました。

──さきほどお堂の跡の話がありましたが、お堂がなくなってしまったのにはどういう理由があったのでしょうか?

日下:時代の流れで朽ち果てたり、失火に遭ったり、また戦で破壊されることもありました。有名なのは、織田信長の焼き討ちです。比叡山の麓と山頂をつなぐケーブルカーが建設されたとき、その焼き討ちの痕跡が見つかりました。大量の地蔵が地中から出てきたのです。信長の焼き討ちで犠牲になった人々の霊を慰めるため、土地の人々が山麓一帯に建てたと考えられています。

麓と山頂を結ぶケーブルカーが上る途中にある洞に置かれた地蔵群。信長の焼き討ちの犠牲者慰霊に作られた地蔵と言われています。

──それほどに信長の焼き討ちが凄まじかったのですね。

日下:信長軍は琵琶湖側の麓から山を登り、堂や塔にことごとく火を放ち、焼け残ったものにも再び火をつけるなど徹底して破壊していったそうです。その焼き討ちから今年で450回忌になるのですが、今回の取材では、焼き討ちを逃れた宝を撮影することができました。

──徹底的な焼き討ちを免れたものとは貴重ですね。それは、どんな宝なのでしょうか?

日下:比叡山の京都側の斜面に、「瑠璃堂」というお堂があります。焼き討ちを唯一免れて現存しているお堂なのです。室町時代末期の建立と推定されています。宝とは、もともとはこのお堂にあった本尊の薬師瑠璃光如来像です。普段は、比叡山の国宝殿に安置されているのですが、今回は番組のために瑠璃堂へ移していただき、本来の姿で撮影することができました。

焼き討ちを唯一免れ現存するお堂「瑠璃堂」。通常は非公開ですが特別に撮影させていただきました。

──それは非常に特別な映像ですね。

日下:はい。さらに特別な点として、その撮影に8Kカメラを使用したことです。番組では、フルHDに変換しての放送となりますが、8K撮影による映像の精密さや立体感を感じていただけると思います。

瑠璃堂の本尊「薬師瑠璃光如来」。通常は、比叡山の国宝殿に安置されていますが、今回の番組のために特別に瑠璃堂に移して8Kカメラで撮影しました。

撮影に使用した8Kカメラ機材。瑠璃堂と薬師瑠璃光如来のディテールを余すところなく捉えました。

──いにしえのお堂が最新技術の高精細撮影でカメラに収められるのはすごいですね。番組が楽しみです。最後にお二人から視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

宮口:長期の取材の中で最も大変だったのは、雪の比叡山の撮影でした。暖冬だったため、「果たして撮れるのか?」と毎日のように天気予報を注視して、やっと出た雪の予報をもとに取材に向かいました。しかし、手前の京都や滋賀の大津あたりでは、まったく雪が降っておらず……。不安だったのですが、麓から山に上がっていくと、その世界は、次第に雪に包まれていきました。紅葉の時期とは異なる、静寂に包まれた雪の比叡山、ぜひお楽しみいただければと思います。

日下:今回の取材では、さまざまな空撮を駆使しました。ヘリに装着した安定装置と8Kカメラを組み合わせて、京都、比叡山、琵琶湖を一望する滑らかな映像を収めることができました。木々の間や、修復作業の足場の間をすり抜けるような迫力の映像をふんだんに使用しています。見たことのないような比叡山延暦寺をお届けしますので、ぜひご覧ください。

ヘリからも高精細8K撮影を行い、京都と比叡山、琵琶湖を俯瞰。また、通常では難しい視点の映像の数々もお届けします。

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