特集

2020年7月26日放送「バイカル湖」

氷の下に隠された澄んだ水の秘密

美しい氷の世界を見せるバイカル湖。一見、生命が感じられない場所ですが、実はここでしか見られない生き物が暮らしているのです。

──世界一透明度が高いというお話がありました。分厚い氷も奥まで見通せて非常に美しいのですが、どうしてバイカル湖の水はそんなに澄んでいるのでしょうか?

石渡:その秘密はバイカル湖の湖底にあります。湖の底の岩に群生している「カイメン」です。

世界一透明度が高いことで知られるバイカル湖。凍っても澄んだ氷になります。

──カイメンというと、スポンジに使われている、あの海綿ですか?

石渡:はい、カイメンは海藻のように見えますが、原始的な動物で、汚れた水を浄化する作用を持っているのです。番組では、現地の専門家に協力してもらい、氷の下に潜って水中撮影をしました。カイメンがどのように水をきれいにするのかも紹介します。

一見すると海藻のようなカイメンがバイカル湖の高い透明度の秘密。水を浄化しれてくれる原始的な動物で、湖底の岩に群生しています。

──凍り付いた湖の下で、そんな生物が水を浄化してくれているとは驚きです。

石渡:さまざまな珍しい生物が生息していることは、バイカル湖が世界遺産に登録された理由の1つです。番組では、ほかにも固有種のバイカルアザラシを紹介します。世界で唯一の淡水で暮らすアザラシです。

ヨコエビという、文字通り横向きになって泳ぐ甲殻類も番組ではお見せします。

──海にいるアザラシが、どうしてこの湖にはいるのでしょうか?

石渡:40万年前、今よりも海面が高く、バイカル湖と海の距離がいまより短かったのです。そのため、北極海にいたアザラシが川を伝ってバイカル湖にたどり着き、暮らすようになったのです。バイカルアザラシはとても警戒心が強い動物で、水音などのちょっとした刺激でも敏感に反応して、水中に姿を隠してしまいます。番組では、冬に子育てをするバイカルアザラシの赤ちゃんが氷の上に現れた映像もお届けします。

氷の上に姿を見せたバイカルアザラシの赤ちゃん。臆病な動物な上に、冬は氷の中で過ごすため、貴重な映像です。

──貴重な映像が盛り沢山ですね。最後に視聴者にメッセージをお願いします。

石渡:バイカル湖は夏も素晴らしいのですが、冬のほうがよりすごい景色を見ることができます。今回はドローンを使った空撮による全面凍結のダイナミックな景色や、氷が作った見事な自然の造形の映像をふんだんに盛り込んでいます。番組が放送されるころ、日本はかなり暑くなってきているかと思いますので、見渡す限り氷だらけの映像をご覧になって涼を感じていただけたらと思います。

番組では、空から見た全面凍結の湖面の様子や、風で打ち寄せられた波が凍りついた氷の柱など、観ているだけで涼しくなれそうな絶景の数々をお届けします。

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