特集

放送20年スペシャル 〜あの世界遺産は今

映像が語る 世界遺産20年の変化

自然が変えた世界遺産

世界遺産の中には、地球が生きていることを実感する場所が数多くあります。
日々変化する地球環境は、世界遺産に様々な影響を与えています。
前編では、そんなダイナミックな変化を紹介します。

キリマンジャロ国立公園

(タンザニア/自然遺産)

放送年:1998/2004年/2012年

キリマンジャロ 消えゆく氷河

番組20年の中で3回登頂したアフリカ最高峰のキリマンジャロ。過去の映像を見比べると、あることに気がつきます。昔は山の斜面にまで広がっていた氷河が、今では山頂付近でしか見られないほど減っているのです。キリマンジャロの氷河は、2020年ごろには消えてしまうと言われています。そんな最後の氷河を、今年6600mの上空から撮影しました。そこには、消えゆくキリマンジャロの氷河の現実が、ハッキリと映し出されていました。

アフリカの最高峰キリマンジャロは、今も昔も変わらず動物たちを見守っています。

過去の山頂の様子。氷河が広がっている様子がわかります。今は大きく変わってしまいました。

モン・サン・ミシェルとその湾

(フランス/文化遺産)

放送年:1996年/2004年/2008年

復活!海に浮かぶ修道院

モン・サン・ミシェルは、「海に浮かぶ修道院」として有名な場所です。本来は孤立した島でしたが、19世紀半ば、いつでも渡れるようにと土を盛った堤防のような道が通されたのです。その結果、潮の流れが変わって土砂が堆積し、やがて島が陸に取り込まれてしまう恐れがありました。そこで、昔の姿に戻すために、堤防のような道を撤去して新しい橋がかけられたのです。今回訪れたのは、秋の大潮。何と2014年に完成したばかりの橋は水没していました。それこそが海に浮かぶモン・サン・ミシェルの本来の姿を復活させる仕掛けだったのです。

19世紀半ばに作られた堤防のような道路の影響で、島の周囲に土砂が堆積し始めました。

昔の景観を取り戻した今のモン・サン・ミシェル。大潮になると橋が沈み、海に浮かぶ修道院が姿を現します。

カトマンズ盆地

(ネパール/文化遺産)

放送年:1997年/2004年

地震で倒壊した世界遺産の今

カトマンズ盆地には、15世紀以降に建てられた寺院や王宮などの歴史的建造物が約900も残されています。しかし、2015年5月に起きたネパール大地震で多くが崩れてしまいました。世界遺産の建造物はレンガ造りだったため、地震に弱かったのです。震災から7カ月のカトマンズ盆地を訪れてみましたが、まだガレキを撤去している最中でした。これから再建への長い道のりが始まります。

ネパール大地震により、ダルバール広場の古い寺院は土台を残して完全に崩れてしまいました。

ドニャーナ国立公園

(スペイン/自然遺産)

放送年:2004年/2014年

人の手で復活したオオヤマネコ

ドニャーナ国立公園は、絶滅寸前のスペインオオヤマネコに残された最後の楽園です。2004年に取材した時には、たった30頭しかいませんでした。10年後に再び訪ねると、オオヤマネコの繁殖施設が完成していました。施設ではオオヤマネコの赤ちゃんも誕生し、その数は3倍の90頭にまで増えていました。人々の努力によって種が保たれようとしています。

ドニャーナ国立公園のみに生息するスペインオオヤマネコ。10年前の取材時には30頭しかいませんでした。

現在は24時間体制で監視する繁殖施設が作られています。今では90頭にまで増えました。

ンゴロンゴロ自然保護区

(タンザニア/自然遺産)

放送年:1996年/2002年/2009年/2015年

巨大火口を生んだ大噴火

ンゴロンゴロ自然保護区は、火山の噴火で誕生した巨大なクレーターです。火山灰が降り積もった肥沃な土壌には豊富な草が生い茂り、クレーターの底には2万5000頭もの野生動物が暮らしています。この一帯は世界有数の火山地帯。ンゴロンゴロのそばにあるレンガイ山を訪れると、そこには驚くべき変化が待ち受けていました。過去に撮影したときには平らだった山頂に、ポッカリと穴が空いていたのです。2007年の大噴火で生まれた巨大噴火口は、ンゴロンゴロ誕生時の様子をしのばせます。

活発な火山地帯であるンゴロンゴロ近郊のレンガイ山。2007年の大噴火で、山頂には大きな穴が空いていました。

マチュ・ピチュの歴史保護区

(ペルー/文化遺産)

放送年:1996年/1999年/2006年

第1回の放送で出会った少年は今

前編の最後は、記念すべき1回目の取材地であるマチュ・ピチュです。1996年4月に放送した番組を振り返り、テーマ曲「ソング・オブ・ライフ」とオープニングの「世界遺産 それは かけがえのない 地球の記憶」、緒形直人さんのナレーションが久しぶりに登場します。今回マチュ・ピチュを訪ねた目的は、第1回放送のエンディングを飾った少年を探すこと。彼は「グッバイ・ボーイ」と呼ばれ、つづら折りの坂を降りるバスを先回りして、何度も目の前に現れ「グッバーイ!」と叫んで観光客を見送っていたマチュ・ピチュ名物の少年でした。当時9歳だった少年は今どうしているのか? 20年後のグッバイ・ボーイを探しました。

記念すべき第1回の放送で紹介したのはマチュ・ピチュでした。

今では行われなくなった「グッバイ・ボーイ」。20年前に番組に登場したこの少年に会いに行きます。