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Alps Special -2週連続!アルプス・スペシャル-

「アルプスの塩の町 ハルシュタット」

2015年9月20日放送 ドロミーティ (イタリア)2015年9月27日放送 ザルツカンマーグート地方の文化的景観 (オーストリア)

オーストリアのザルツカンマーグート地方は、アルプスがかつては海であったことを色濃く示す場所だ。その証拠は、ここで採掘される岩塩。3000年以上も前から人々はここで岩塩を掘り出し、この一帯に文明を築いてきた。中世には、華やかなハプスブルグ家の栄華も支えたという。15年ぶりにこの地を訪れたという日下ディレクターに話を聞いた。

──今回紹介するハルシュタットは、どのような場所なのですか?

日下ディレクター(以下、日下):湖とアルプスの山々の間の狭い土地に、しがみつくようにできた小さな街です。このような場所に街ができたのは、ここに岩塩があったからです。3000年も前から岩塩が採掘されていて、その塩は湖と河を使って運ばれていました。ハルシュタットは、アルプスの塩で発展してきた街なのです。今は観光地として有名な場所です。

湖と山の間の狭小な場所にたたずむハルシュタットの街。まるで湖に浮かんでいるように見えます。

──古い歴史がある街なのですね。3000年も前のことが、どのようにして判明したのでしょうか?

日下:過去の岩塩坑から、当時の坑夫たちが使っていた階段や、ロープや岩塩を運ぶためのリュックなどの道具が発見されたのです。塩漬けになっていたおかげで、3000年も前のリュックがとてもよい状態で保存されていました。番組でも紹介していますが、意外にデザインがオシャレなんですよ。

ハルシュタットは岩塩坑で栄えた街。見学ツアーのスタートは長い滑り台で地下まで滑り降ります!

──3000年前のリュックというのは、興味深いですね。ハルシュタットでは、現在も岩塩が採掘されているのですか?

日下:はい。岩塩は今も掘られていて、岩塩坑を見学することもできます。この見学ツアーがちょっと変わっているんですよ。採掘現場は地下深くにあるのですが、そこまで行くのに、何とものすごく長い滑り台で滑って下りるのです。

ハルシュタットのあるザルツカンマーグート地方を訪れたら必ず乗りたいシャーフベルク登山鉄道。大人気なので予約がオススメです。

──それは迫力のある滑り台ですね。子どもたちも喜びそうです。そんな塩の採掘で発展してきたハルシュタットですが、観光地としての特徴を教えてください。

日下:何と言っても風光明媚なロケーションが魅力です。ハルシュタットは、ぜひ鉄道で訪れてほしいと思います。鉄道で行けるのはハルシュタット湖まで。駅を下りると、美しい湖の対岸に小さくハルシュタットの街が見えます。そして船で湖を渡って街に近づいていくと、アルプスの山々が目の前に迫ってくるのです。

世界最大級の氷の洞窟。アルプスの雪解け水が氷点下の洞窟に流れ込んで生まれる自然の芸術です。

──街を訪れるだけでもアトラクションのようですね。その他にどんな見どころがありますか?

日下:オススメはミニSLで登るシャーフベルク登山鉄道です。麓から登っていくと、景色がどんどん変わっていって、徐々に周囲が見えていく様子が楽しいです。美しいアルプスの山と湖が織りなす景観は、一見の価値があります。また、山の中腹には、世界最大級の氷の洞窟があります。春になると雪解け水が洞窟に流れ込んでくるのですが、洞窟内の温度は氷点下で安定しているので中で凍りつくのです。自然が作り上げた氷の芸術を、番組でご覧ください。

世界遺産のネコの道

ハルシュタットの街を注意深く見ていると、あちこちに板を渡した通路がありました。窓から窓をつないだり、地面から窓へのスロープになっていたり……。これは実はネコのための道。街の中を自由に移動できるように、街の人たちが用意したものです。ネコ好きの日下ディレクターが毎日見張って、その決定的瞬間を撮影しました。