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Alps Special -2週連続!アルプス・スペシャル-

「アルプスにそびえる奇岩の絶景」

2015年9月20日放送 ドロミーティ (イタリア)2015年9月27日放送 ザルツカンマーグート地方の文化的景観 (オーストリア)

ドロミーティはイタリア北部にある山岳地帯で、ドロマイトと呼ばれる白っぽい岩肌が特徴。森と湖、そして白い岩が織りなす美しい風景は、観光地としても有名だ。そんな美しい景色に深く感動したという古賀ディレクターだが、取材の道のりは険しいものだったようだ。

──これまでにもさまざまな自然遺産を取材された古賀ディレクターですが、ドロミーティの美しさはひときわ心に残ったそうですね。

古賀ディレクター(以下、古賀):はい。最初に訪れたのは、ドロミーティの入口となるコルティーナ・ダンペッツォという街でした。街に入った途端に、その風景の雄大さに圧倒されました。壁のように迫るアルプスの迫力は圧巻です。

古賀ディレクターがその美しさに感動したというドロミーティの景観は、山と森と湖が主役です。

──ドロミーティはどのような場所なのか、教えてください。

古賀:東西に100km、南北に90kmと広い範囲の山地です。3000m級の山が18もあり、切り立った白い奇岩が林立しています。この白い岩肌はドロマイトと呼ばれる特殊な石で、アルプスらしい風景を作っています。ドロマイトは、ここがかつて海であったことを示す証拠でもあります。今回の取材では、この山のひとつに登りました。

白く見えるのは雪ではなく、ドロマイト。アルプスらしい景色を生み出しています。

──険しい岩壁を登っていくのは大変そうですね。

古賀:実は、途中まではチェアリフトやゴンドラを使って簡単に登ることができます。ただし、そこから先は厳しい登山道が待っていました。ドロミーティにはヴィア・フェラータと呼ばれる登山ルートが用意されているのですが、これがなかなかハードなものなのです。

登山客は、リフトやゴンドラで空中散歩を楽しめます。

──ヴィア・フェラータでは、どのような方法で山を登るのですか?

古賀:絶壁の岩肌にアンカーが打ち込んであって、そこに太いワイヤーが通してあるだけなのです。登山者はそのワイヤーにつかまり、命綱を掛け替えながら岩壁を登っていきます。命綱はあるものの足場は特に作られていないので、自分の腕力が頼りです。たくさんあるルートのうち、私は初心者向けのコースを上ったのですが、ほぼ垂直の壁もあってたいへんでした。でも、登ったところからの景色はまさに絶景でした。

ドロマイトの影響で湖はエメラルドグリーンに輝き、美しい景色を生み出しています。

──古賀ディレクターの頑張りと、山からの絶景を楽しみにしたいと思います。ドロミーティの特徴は、他にもありますか?

古賀:森と湖が、特徴として挙げられます。ドロミーティは麓に森が広がっているのですが、単なる森林ではありません。広大な森には専門の森林警察がいて、どこにどんな木が何本生えているかがすべて分かるように管理しているのです。

ワイヤーを頼りに登っていく、ヴィア・フェラータ。第一次大戦時の兵士の移動手段がルーツです。

──ドロミーティの森は、なぜそのように厳密に管理されているのでしょうか?

古賀:ここで育っている樹木は、非常に品質の高い木材となるのです。気温が低く、山々に囲まれているせいで日照時間が短いため、ここでは木がなかなか育ちません。その結果、木の年輪の幅が均一で硬くなるので、高級材として利用されているのです。例えば、一丁が数億円の値を付けることもあるバイオリンの名器ストラディバリウスは、ドロミーティの木を使用しています。

ドロミーティの森では、木が1本1本管理されています。ストラディバリウスにも使用された高級木材です。

──まさに最高級の木が育つ森なのですね。一方のドロミーティの湖はどんなところなのですか?

古賀:山腹には氷河でできた湖が数多くあるのです。ドロマイトに含まれる石灰質の成分の影響でエメラルドグリーンに輝く湖は必見です。白くそびえる奇岩と森、そして美しい湖がある風景は本当に印象的です。取材でこれまでさまざまな場所を訪れましたが、個人的な旅行をするのであればドロミーティですね。この美しさと感動をぜひ、番組でみなさんにお伝えしたいと思います。