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2015年8月9日放送 「幻のサル発見!地底の川をゆく」 チャンアンの景観(ベトナム)

2階建ての洞窟に暮らした人々

チャンアンは、立ち並ぶ奇岩や地下を流れる川のほかに、多くの洞窟があります。中には海の浸食によって削り出されたものもある。洞窟からは、古くは3万年前の人間が生活した跡が発見されている。東南アジア最古級の遺跡は、今も発掘が進められている。

─ここまで、自然の不思議や素晴らしさについて紹介していただきましたが、チャンアンはまだまだ奥深い場所のようですね。

石渡ディレクター(以下、石渡):チャンアンには、実は文化的に重要な遺跡があるのです。この地域には、浸食で造られた数多くの洞窟があり、その中には人間が暮らしていた痕跡が残されているものがあります。古いものは約3万年前のもので、東南アジアの中では最も古い時代の遺跡です。そこには世にも珍しい2階建ての洞窟の住居跡がありました。

チャンアンには、浸食でできた洞窟に人が暮らしていた遺跡が残されています。

─洞窟が2階建てになってるというのは、面白いですね。高さが異なる場所で人々が暮らしていたのはなぜなのでしょうか?。

石渡:この地域にはさまざまな標高の洞窟に居住していた痕跡があるのですが、その時代もバラバラなのです。上下に洞窟が並んでいる遺跡を調べると、それぞれ海水面の位置が異なった時代に使われていたものだということが分かりました。

2階建ての洞窟は、上下の部屋で人が住んでいた時代が異なります。

─つまりこの地域は、かつては海だったということなのですね

石渡:そうです。遺跡からは牡蠣などの海洋生物の化石が大量に見つかっています。洞窟や岩の浸食も、波によって削られた跡であることも分かっています。同じ洞窟の中に時代の異なる痕跡が混ざっていたりと、海水面の高さに合わせて頻繁に移動していたようです。今も調査中で、今後も新しい発見があると思います。

チャンアンの岩には、海の波によって削られた跡が残されています。

─今も研究中の遺跡なのですね。

石渡:はい。今回は特別に許可をもらって取材をしています。貴重な遺跡なので、ぜひ見ていただきたいです。

チャンアンの遺跡には各国から研究グループが訪れており、今も研究が進められています。

世界遺産の旅のお役立ち情報

チャンアンの旅は、どこへ行くにも手こぎの船が必要です。そこで活躍しているのは、地元の人が足でこぐ竹船! エンジンのない竹船での移動は静かで、のどかな雰囲気を満喫できます。しかし簡易な船なので座り心地はそれなり……。板の上に直接座ることになるので、長時間乗っているとお尻が痛くなってしまうことがあります。座布団などを持っていくと重宝します。また屋根もないので、日傘などの日焼け対策も忘れずに。