特集
2015年7月19日放送 「地中海の島に ナゾの巨石文明」 バルーミニのヌラーゲ遺跡(イタリア)
ヌラーゲ秘話“石との対話”
放送20年目にして、初取材となるサルデーニャ島。これまでも数多くの石造りの遺跡を見てきた天野ディレクターは、ヌラーゲを始めとする謎の建造物を取材して何を感じたのか? 番組の見どころを含めて紹介してもらった。

─今回、ヌラーゲを中心としたサルデーニャの遺跡は初めての取材ですが、取材を終えて、どのような感想を持ちましたか?
天野:実際に取材してみると、本当に謎だらけの遺跡でした。ヨーロッパにこれだけ謎の多い巨石文明の跡があること自体が非常に興味深く、ぜひ紹介したいと思いました。
ドローンを使って上空から撮影すると、ヌラーゲ遺跡の構造がよくわかります。

─ヌラーゲの取材で工夫したポイントなどを教えてください。
天野:ヌラーゲを撮影するうえで一番大切だと考えたのは、どのように遺跡全体を見渡すかでした。当然空撮が必要になるのですが、ヘリコプターでは遺跡を近くから撮影することができないのです。今回の撮影にはドローンが活躍しました。これにより適度な高さからの安定した撮影が可能になったので、ヌラーゲを始めとする遺跡たちをわかりやすく紹介できたと思います。面白い映像が撮影できたので、番組でその効果のほどを確認してください。
ドローンを飛ばして自由な高さから空撮することによって、謎の階段ピラミッドのたたずまいもわかりやすく伝えることができます。

─天野ディレクターは“無類の石好きだ”という話を聞きましたが、この取材ではその嗜好が活かされたのではないですか?
天野:私はこれまでに世界中でさまざまな石造りの遺跡を取材してきました。石を見ると、時間を忘れて夢中になってしまうことが多く、よくスタッフに呆れられます。サルデーニャの取材でも様々な石との出会いがありました。今回は直接遺跡の石に触れることができたので、そこから伝わってくる感触や手がかりを細かくレポートすることができました。
とにかく遺跡の奥まで入っていく天野ディレクター。直接触れることで感じたことを、視聴者に伝えます。

─ヌラーゲの取材で石から伝わってきたことは何だったのでしょうか?
天野:実は、中央アジアや西アジアなど、サルデーニャと同じ羊飼いが暮らしていた地域の中には、ヌラーゲとよく似た建造物が残されているところがあります。外見だけでなく、石に直接触れてみると、施された細工ひとつひとつにも共通したものを感じました。すると、そこには民族の移動や交流があったのかもしれないと、想像が広がります。このような文化のつながりを想像するのも、世界遺産を見ていく楽しみのひとつだと思います。
至近距離から遺跡の石を見てみると、石の加工方法や作業の工夫などが見えてくるといいます。



サルデーニャの羊飼いの間に伝わるカント・ア・テノーレという歌があります。カント・ア・テノーレにはヌラーゲを模した形に陣取って歌うという風習があり、発声方法が独特です。天野ディレクターによれば、カント・ア・テノーレはロシアのトゥバ共和国で聴いたフーメイという喉歌とそっくりとのこと。フーメイは、モンゴル独特の歌であるホーミーとも共通点があります。響き渡るハーモニーを番組内でご覧ください。