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2015年7月19日放送 「地中海の島に ナゾの巨石文明」 バルーミニのヌラーゲ遺跡(イタリア)

バルーミニのヌラーゲ遺跡

地中海でシチリア島に次ぐ二番目に大きな島、サルデーニャ。ここは、ヨーロッパを代表する高級ビーチリゾートとして知られているが、その一方で謎に包まれた巨石文明の遺跡が多数残されている場所でもある。特に、ヌラーゲと呼ばれる建造物はこの島独特のもので、実に7000ものヌラーゲが各所に残されている。巨石が積み上げられた不思議な造りの建造物は、いまだにその目的や役割がはっきりと解明されていない。

謎の城砦、ヌラーゲ遺跡

世界遺産であるバルーミニ村のヌラーゲ遺跡は、サルデーニャに数多くあるヌラーゲの代表的な存在だ。一見すると乱雑に巨石を積み上げた古い建造物だが、実は緻密に計算された仕掛けがあり、その構造は謎に満ちている。そこから何が読み取れるのか、世界中の石造りの遺跡と“対話”してきた経歴を持ち、石にこだわる天野ディレクターが、その謎に迫った。

─今回はイタリアのサルデーニャ島にある世界遺産ですね。まずはどういう場所なのか教えてください。

天野ディレクター(以下、天野):サルデーニャ島は、イタリア半島の西側にある大きな島で、ヨーロッパでは別荘が立ち並ぶ高級ビーチリゾートとして知られています。しかし島の奥に入っていくと、謎に満ちた巨石文明の遺跡がそこかしこに点在している島でもあります。

サルデーニャ島は、美しいビーチが広がる有名なリゾート地ですが、ここに謎の遺跡があることは、あまり知られていません。

──サルデーニャ島に残された遺跡はどのようなものなのでしょうか?

天野:まず紹介するのは、ヌラーゲと呼ばれる石造りの建物です。時代は古く、紀元前1500年頃から造られてきたものですが、島の全域に7000ものヌラーゲが残されています。石を積み上げられて造られたもので、サルデーニャ独特の建造物です。

この島に7000余りも残されているヌラーゲ。必ず丘の上などの高い場所に造られています。

─ヌラーゲはどういった目的で建てられたものなのですか?

天野:それがまだ謎が多いのです。例えば、城壁のようなところには、所々に穴が開いています。矢を射るための矢狭間に見えますですが、その割には射角が狭すぎます。では、明かり取りの穴だったのだろうか──などと、想像できることはたくさんあるのですが、確固たる証拠が見つかっていないのです。すべて小高い丘の上に建てられているので、見張り塔や神殿だった可能性もあります。でも、偶像のような神事に関係したものは一切見つかっていません。

ヌラーゲの中でも最大級のバルーミニ村の遺跡。複数の塔を中心にして、集落のように建物が周囲に集まっています。

─数多くのヌラーゲが残されているのに、謎が解明されていないのですね。

天野:はい。一方で、その造りの精巧さにも数多くの謎があります。今回の主役となるのはバルーミニ村にあるヌラーゲ遺跡(スー・ヌラージ)で、このヌラーゲは文化遺産に登録されています。中央に三層の塔がある要塞のような建物で、何度も増改築が施されたらしく複雑な造りになっています。しかし構造を丹念に調べると、建物の歪みを逃がすための小部屋が造られていたりと、綿密な計算がされていることもわかりました。

ヌラーゲの中に直接入っていきます。塔の中にもさまざまな謎が残されていました。

─当時のサルデーニャ島には、高度な建築技術があったのでしょうか?

天野:このヌラーゲが建設された3500年前の建築では考えられないような高い技術なので、謎は深まるばかりです。番組でその謎に迫ります。

壁面に空いている複数の穴。この穴の目的についても諸説あり、はっきりとした目的はわかっていません。