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絶海に秘められた海洋生物の宝庫

7月20日の放送は、フィリピンのトゥバタハ海洋公園です。3つの環礁で構成されるこの遺産は、周囲に陸地がなく、外洋にポツンと浮かんだサンゴ礁で、海洋生物の宝庫となっています。その生命力にあふれた海に実際に潜ってきた愛場雅人ディレクターに、そこに住む奇妙な生き物と、今回撮影に成功した“光るサンゴ”について語ってもらいました。



─今回取材した世界遺産の特徴を教えてください。


トゥバタハ海洋公園

愛場ディレクター(以下、愛場):今回訪れたトゥバタハ海洋公園は、フィリピン沖180キロにある自然遺産です。3つのサンゴ礁で構成されていて、大小3つの環礁が登録されています。周囲には陸地がなく、360度を水平線に囲まれた絶海にあるため、ほとんど人の手が加わっていません。最も大きな北環礁で南北に17キロほどのだ円形です。


―一般の人が訪れることはできるのですか?


愛場:ダイビングスポットとして世界的に有名な場所で、ダイビング船で訪れるツアーがパラワン島から出ています。ただし、訪れることができるのは、波の穏やかな3月中旬から6月中旬の約3カ月間に限られます。その間、海上はずっと凪。波がほとんど立たない穏やかな状態が続きます。



─陸地から遠く離れた場所にあるということですが、どうして環礁がそこにできたのでしょうか?


トゥバタハ海洋公園

愛場:元々は海底火山の噴火でできた火山島があり、その周囲にサンゴ礁が形作られていました。その後に火山島が徐々に沈降していき、それと相反する形でサンゴ礁が成長し続けて残ったのが環礁です。そのため、上から見るとサンゴ礁が“輪”のようになっています。また地形的な特徴として、外洋に面する急激に落ち込んでおり、海底の落差が100メートルもあります。


─周囲が急に深くなっているということは、まるで崖のようになっているのですね。


愛場:まさに海中の断崖絶壁です。私も実際に潜ってみましたが、その光景は圧巻です。壁はサンゴが積み重なったものなので、海中に100メートルのサンゴの城壁が建っているような状態ですね。この絶壁は多様な海洋生物たちの住み処になっていました。特に、巨大なカイメンやソフトコーラル(柔らかいサンゴ)が印象的でした。