特集
ゴンドワナ雨林
─ゴンドワナ雨林の面積は広大だということですが、今回はどの地域を取材されたのでしょうか?

石渡:主に北部のメイン山地とシールド火山群、ツイード楯状火山の周辺を取材しました。巨大なカルデラで、外輪山との高低差は1000メートルほど。風雨による侵食で山が削られてできた、垂直の断崖が特徴的です。落差のある断崖から滝が流れ落ちていくという、ダイナミックな景観が見られます。雨が多く常にもやが出ているような気候で、この辺りの森は「レインフォレスト」と呼ばれています。
―やはりここにもゴンドワナ大陸に由来する植物は生えているのですか?
石渡:中腹には亜熱帯雨林が広がっていますが、標高が上がるに従って冷温帯雨林に変わります。冷温帯雨林にナンキョクブナが群生しているほか、種子を持たない原始的な木生シダやナンヨウスギが自生しています。この3種が同じ場所で見られる森林は世界でも少ないそうです。またレインフォレストの周辺には、オーストラリアでよく目にするユーカリの森が広がっています。
―ユーカリと言えばコアラの食べ物として有名ですが、この地域にもコアラは住んでいるのでしょうか?
石渡:ユーカリには亜種を含めると1000種類ほどがあり、コアラが食べるのはそのうちの100種に満たないのです。この地域には巨大なユーカリの森があり、その一部にはコアラが生息しています。
―実際に野生のコアラは見つかりましたか?

石渡:はい。道路からすぐ脇の森で、偶然に一匹だけ発見しました。それ以外には、街の中で野生のコアラに出会いました。東海岸にあるレッドランド市では、住人と野生のコアラが共生しているのです。私が数えてみただけでも7頭ほど見つけましたよ。コアラを守りながら生活している街の人々の姿も取材しました。