特集

世界最古の砂漠が育む奇想天外な生物

─砂漠での撮影ということで苦労したところはありますか?


ナミブ砂海

小澤:ナミブ砂海の砂はたいへん細かく、パウダー状になっています。わずかなスキ間からでも砂が侵入してくるので、カメラの中に入ったりしないように撮影機材の砂対策には気を遣いました。それでも取材が終わった後は、機材の隙間に入った砂の掃除が大変でしたね。それに現地のガイドは慣れっこなので、車で移動するときもエアコンを付けずに窓を開け放しているのです。おかげで、一日取材をすると体中が砂埃まみれになりました。



―そのように細かい砂の上では、移動するだけでもたいへんそうですね。



小澤:特に砂丘では体力を使いましたね。ナミブ砂漠には様々な砂丘があり、最も大きなものは高さ340メートルの“ビッグダディ”と呼ばれる砂丘です。われわれも機材を担いで登ったのですが、これは思った以上の重労働でした。



―340メートルというと、登山で考えればそこまで大変ではないように思えますね。



小澤:問題は手をついてしまうほどの急な勾配と、細かな砂です。細い尾根伝いに登っていくのですが、左右は踏み外すと転がり落ちてしまうほどの急斜面です。また、砂が細かくて踏み出しても足元からどんどん崩れていくので、なかなか前に進めません。三歩進んで二歩下がる感覚です。1時間半ほどで登頂しましたが、ストレスがたまりました。その代わり、頂上からの景色は素晴らしかったですよ。はるか彼方まで赤い砂丘が続いている様は、まるで別の惑星に降り立ったような風景でした。



―では、番組を楽しみにしている視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。



ナミブ砂海

小澤:ナミブ砂海は、2000kmも離れた山脈の溶岩が砕かれ、その砂粒が川と海と風によって運ばれて形作られました。こんな壮大な成り立ちの砂漠は、世界でもここだけです。砂丘の上から撮影した景色のほか、小型無線ヘリで空撮した映像には、地球規模の長い歴史が創り出した奇跡の姿が映し出されています。そして、その砂漠で独特の進化を遂げた生物たちの、意外に愛らしい姿もぜひご覧ください。



世界遺産の歩き方

ナミブ砂海は観光開発も進んでおり、一般の観光客も立ち入ることが可能だ。南アフリカが近いこともあって、近隣の宿泊施設やレストランも充実している。現地では車で移動することになるが、レンタカーを利用することもできる。ただし、砂漠に慣れていないと車がスタックしてしまい身動きが取れなくなることがある。観光開発が進んでいるとはいえ砂漠は厳しい環境なので、ガイドが随行してくれるツアーなどの利用がおすすめだ。